ビビリが調停者に泣かされる
良かれと思っていても、人にとって大変な痛手になってしまうことがあります。
相手が好意的にしていたなら、尚更。
残念賞は、誰のもの。
ビビりではありますが、主人公は男女問わずスゴイと感じたら好きになる惚れっぽさをもっていますね。
……BL……☆
☆
南の山から森まで白一色。
雄大だと思っていた冬景色にも馴れつつある。
東の山裾から昇った陽も、西の海へと沈んでゆく。
今日も一日が終わろうとしていた。
はー、寒かった……。
巡回はしなくても良いように警備体制を無人化しなくては。
ぶるぶるっ。
夕日が山を橙に染めて、見た目だけ暖かそう。
「スライ~、いるか~」
家の扉が叩かれる。
柱の近くをノックしているあの声はブルク兄さん。
「はいっ、何ですか」
窓から顔を出す。
姉ちゃん達の告白イベントの時にお助けしてもらって、お世話になってから、ブルク兄さんの顔が恐くなくなった。
我ながら現金なものだ。
[マジ兄貴ですね?]
うん、マジ兄貴。
アニキってあんな風に気に懸けてくれる存在だろうなって思う。
「すまん、地下で怪我人が出た。大怪我じゃねえが、治してやって欲しい」
「はい、直ぐ行きましょう。何があったんです?」
「崩落だ」
「……大事じゃないですか!?」
「ノームが騒ぎ過ぎてなァ、部屋の床が2階層分落ちただけだ」
「怪我人は誰ですか」
「いつもの双子だ、ゆっくり行こう」
あぁ、成る程ゆっくり行きましょう。
そうしましょう。
[またですか……]
そうらしいね、やれやれ。
「じゃあ、行きますか」
母に声をかけてから、現場へと向かう。
地下ではノームさん達の住居が着々と作られています。
今回落ちたという部屋は居住区中央部分。
……真ん中に吹き抜けを作りたかったんだね。
ノームが住居として見定めた場所は、地下駐車場らしき場所の中。
ミニチュアハウスが敷き詰められている殺風景な駐車場、という。
建物群こまかぁ。
拓けているけど、これジオラマ……。
サイズ違うからなぁ。
一番上の、崩落したという階から下り、現場到着。
崩れた部屋以外は物置になっていた。
最下層の下にあった屑ガラスや資材になりそうな機材の塊を持ってきてもらった場所だ。
妖精や精霊は大体、鉄が嫌いらしいよ。
下にあった空間は、地下水溜まりや海水の流入部分があり、危険なので全部塞いだ。
ノームさんが。
別の縦穴(実験室?)から神魔石の鉱脈へと降りられる様にもして貰った。
ありがとうノームさん。
地下ではノームさん達の無双っぷりが凄い。
何せ建築士が500人位居るらしい。
全部で千人位だと言う大集団。
[精霊は柱と数えますよ]
あっ、すみません、神様と一緒なんですね。
[神に連なり端に伸びる細柱、見くびるが痛手……という警句があります]
?
[コチラは自尊心の有る相手を悪意無く傷付けるという意味合いですが、精霊を「匹」と数えて酷い目にあった事からの戒め、です]
ははあ、ためになります。
「ところで、何故吹き抜けを作りたかったんでしょう?」
「詳しく分からねえが、ロロハニを呼ぶため? とか言ってた」
「……ロロハニ…… 何でしょね?」
ノームさんは偶に意味が伝わらない。
『死告梟』と僕を呼んだ時はまだ分かったけれど、嫌だったけれど、今回は意味不明だな。
[ロロハニとは、月の東・陽の西]
……つまり何でしょう?
[精霊の土地として機能させる為の儀式と予想しますが…… 詳細は分かりません]
うーん、結局謎。
「崩落でノームさん達は無事でしたか」
「ああ、建物は一つも壊れて無かった。どういう造りだ、あのおもちゃ箱みてえな家屋は」
あっ、ブルク兄さん楽しそう。
大工になるって決めたんだよね。
金庫の時に来てくれた大蛸人の大工さんに弟子入りするって言ってた。
五年くらいは帰れないとも言ってて、寂しい……。
来年から、かぁ。
[皆、成長していきますね]
小さい頃からの夢らしいから、頑張ってね。
テウ兄ちゃんセス兄ちゃんはピヨッていたけれど、骨折もなく打ち身だけでした。
頑丈だなあ。
良かったよ。
簡単に回復できるとは言え、あんまり無茶はして欲しくないなぁ、分かってなさそうだけど……。
夜。
御飯を美味しくいただきました。
母さんの手料理が一番美味しいと思う。
ホントだよ?
日が落ち父さんと風呂に入ってノームさんの話をすると、意外な反応がありました。
「ぉお、そうかぁ、もう決めてくれたのか」
「ロロハニって何か知ってるの?」
「新たな永住先と認めて、先祖や始祖に此処に住むよと伝える事、先祖や始祖を呼ぶ事だと聞いた」
「凄い、父さん博識っ」
「ふふふ、いやあ、それ程でもないさ」
でも良く知っていたね。
神学知識なのかな。
[精霊との対話が出来るのは思い掛けない知識の発掘になると]
言っていたね、父さん。
「昔から、精霊の土地や魔法を行使する行程の事とか、色々に興味があってな。調べたんだ」
賢者のスキルだけじゃなく、知識欲が凄いんだなー。
[貴方ほどではないでしょう]
?
そんな事ないよ。
[……ありますよ?]
ないないー。
さて。
風呂に浸かりながら縁に頬杖を突く。
父さんと並んで。
背中に羽根があるからこの姿勢が一番楽ー。
ちょっとステータスを確認したい。
……チートスキルだよなあ。
構成編集を再度検証。
1.ステータスを任意に表示させる。
2.自分及び協力者のスキルを編集可能にする。
3.パラメータ配分値を編集可能にする。
……つまり、仲間のステータスを見れてしまう。
職業固有スキルを他職種にも付与出来る。
自分のスキルをコピーして人に貼り付けも出来る。
これは発動後に単発で消えるけど。
本人が獲得した増加成長パラメータを別の枠へと移動できる。
(力→早さや、精神→体力など)
……成長している人(レベルの高い人)に特に有効性が高いよね、このスキル。
何気なく、上から下まで見回して……。
あれ?
ステータス表示に、次のページ?
[……あっ]
え、え、ナニコレ。
見たことのないスキルと、調整ログ…… 予約アクセサリ?
全種族魅了って何だ~っ!?
[……私が、一番最初に差し上げたスキルです。ご免なさい。きっと役に立つと思って隠していました]
……初対面時、種族を問わずに魅了を発動する。
獣種、昆虫種、精霊、神族には無効。
発動後、魅了は固定化。
主従関係への変移は容易となる。
これは…… これが……。
っ…… はぁ。
色々な人達に好かれている理由はコレか。
父や母も、かな。
皆…… 皆……。
[泣かないでください]
慰めなくても良いよぅ、ぐすっ。
僕は、っそう、特に魅力の無いヤツだもの…… ね。
卑怯だ。
人の気持ちを操作するなんて。
やっぱり卑怯スキルは嫌いだ。
カレンさん。
貴女は好意で付けたモノだろうけど、これはあんまりだ……。
[貴方は勘違いしています。発動条件、基準をもう一度ちゃんと見てください]
……発動条件、初対面時?
獣種、昆虫種、精霊、神族には無効。
[この村の住人は、粗…… 魚人以外は、当て嵌まりませんから]
なら、魅了した人は居ないの?
[……魚人達は貴方が無意識に解除しましたし…… 村長のドライアドは半分程度…… 彼女は魔物化を経験しているので、掛かった様です]
他には?
[人魚王妃は微妙に]
人魚さんと村長だけ?
ホント?
カレンさんには効果無い?
[はい…… はい?]
カレンさんは、操られたり、義務感だったりで居てくれるワケじゃないよね?
[くっ、ナチュラルキラージゴロ……]
違うよね……?
[貴方には必要ないかも知れません]
うん?
まぁ、構成編集で封印しとく……。
使う事が無いといいな。
こんな気持ち、嫌だもの。
スライ・オーニス Level=10
状態=健康(鍛錬中)
職業=司祭見習い 称号=誠実な徒弟(神の愛し子)
ギフト=「壁無き友垣」対話、心理学、人類学、生物学、多言語の優良性
「狙い違わぬ指」目星、回避、隠密、追跡、投擲、技能数値への補助
スキル=「構成編集」
「全種族魅了」封印中
精神力向上(大)
集中力向上(大)
身体強化(小)
学習指導(中)
悪戯耐性(中)
身体俊敏化level.6/10
片手剣術level.7/10
盾・両手操作level.7/10
演算強化level.5/10
説法技術level.3/10
魔法=無属性魔術(上級)
空間魔術(中級)
黒魔術(上級)
白魔術(上級)
精霊魔法(中級)
ブルク・アーモウ Level=19
状態=健康
職業=大工の弟子 称号=マジ兄貴
ギフト=「刻む足跡」聞き耳、跳躍、回避
スキル=農作業(中)
道具整備(中)
体力向上(中)
武具自在(中)
木工制作Level.1/10
空間把握Level.1/10
土木技術Level.1/10
魔法=無属性魔術(中級)
黒魔術(初級)
バァン・オーニス Level=78
状態=溺愛(永続化)
職業=魔術学校長 称号=賢者
ギフト=「遠き呼び声」気配察知、聞き耳、神学
スキル=黒、白、空間、精神魔術強化
常時異常回復
常時魔力微量回復
調理師Level.5/10
狩猟採集level.7/10
経営学(大)
鳥目(夜間視力低下)
魔法=黒魔術
白魔術
空間魔術
精神魔術
召喚魔術




