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冒険は推奨レベルを超えてから~ビビりだけど幸せ求めてがんばります!~  作者: 爆微風


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27/50

ビビりの村の新婚さん

先生のターン☆

新しい立場は中々に不安定ですが、視点のみではなく続けていた仕事のやり方さえ変えてしまいます。

それはそれとして。

後押しされるのは心地好く、急かされるのは気分が悪いのは何故でしょう。



 ☆




 結婚式がやっと終わった。

この村の…… いや、彼女の家に伝わる習わしだが、新しい家を持ち暮らすには、花嫁に誓いの品を贈らなくてはならないのだとか。

誓いの品は二人が納得しているモノならば何でもいいらしく、過去には大槌(ハンマー)を送った人も居たそうだ。


俺は、我が家から持ってきた短剣を誓いの品として、彼女に贈る。


……賑やかなのも、一段落か。

後は挨拶回り。

商いで顔を出していたのは人間の街ばかりだったから、そちらに行かなくて済むのは、まあ有難い。

引き継いだ事から頭を切り替え、休憩室のソファーに凭(もた)れて深呼吸。

開け放たれた入り口から近付く気配に顔を上げると、見知った顔だった。


「まさかお前が結婚とはな、くふぅー」

「抜かせ」


昔の旅仲間、商売姉妹である海精霊(ネレイス)のニハ。

ホントの名前は長ったらしいから覚えていない。


「王妃の名代だろ? あまり砕け過ぎるなよ」

「くふふ、任しとけー」


人魚女王…… 王妃(クィーン)の方が呼び慣れているが。

王妃の勅命は、この村に居る少年の助けとなれ。

神の愛し子、なのだから。

海の民の指導者たり得る見聞(ちせい)と、肉体(からだ)を健やかに保つべし。


……我が王妃は「健やか」である事に情熱を注ぎ過ぎるがな。

ニハは向かいのソファーに腰掛け、水差しから勝手に水を汲んで飲み干すと喋りかけてきた。


「……んでー? コレは海とこの村に結び付きを高める為?」


商人ギルドの支給ポンチョ(ポケットだらけ)の長い袖を振りながら、ニハがゲスい質問をしてくる。

大体、こいつが俺に揺さぶりをかけるのは、他に何か言いたい事がある時だ。


「……お前は変わんねえな、ニハ。これは全くの私情」

「からかうのが正解(アタリ)だったか、くふぅー」

「他に何か言いたい案件でも?」

「王妃様が、お前に勲章をやりたいと」

「いらん」

「だろうね」

「……他には?」

「任してた真珠の件」

「全部弟に任せた…… 引き継ぎも、終わってる」

「さっすが、手早い」

「俺は、この村に住む。スライの手伝いをする為じゃなく、妻の為にな」

「ひゅーひゅー。熱うぃ」

「抜かせっての」

「一番の質問。この後、何を生業にして生きる?」


俺の緑がかった黒髪が、一瞬ザワついた。

いきなり殺気を出すな。

スキルが発動したらとか考えろよな。


「海商人ギルド、抜ける事になったしな……」


正確に言うなら「海民商業通運会」。

身の在処、住まいを地上にした事で、俺は参加資格を失った。

ニハとは海商人ギルド地上派遣の仲間。

陸上商業網を俺達の代で築き上げようと二人で嘯いていたんだ。


「すまん」

「答えになってない」

「俺は…… それでも海の民だ」

「だから?」

「海商人ギルドとしてではなく、一商人として生きる」

「この村で?」

「場所は中々良い立地さ」


北側に海。

南は山脈。

東には砂漠が有るが、西側には他にも亜人の村がある。

人とはもう商売出来ないと思うが、それ程悲観的にはなっていない。


「くふぅー、早くそう言えって。ホラ」


ニハが差し出したそれは、勲章?


「いやだからいらねえって」

「ダメダメ、ソレ、商業保証徽章(しょうぎょうほしょうきしょう)」

「……っはっ!?」


王妃様、どれだけ入れ込んでんだ!?

これは、団体である海商人ギルドに貸与しているモノと、同じ。

人と海の民が商いをする為の法整備の結晶。

一人に対して出して良いモノでは無い。


「……お前も軽々しく素手で扱うな」

「くふふ、その反応が見たかったのさ」


そう言うと、黒い絹張りの小箱を差し出した。

徽章の箱か。

これがあれば、一人でも商人として活動できる。

海の民の後ろ楯を失わずに、まだ商いを続けられる。


「妻には少し不自由させるかもと言ってしまったが」

「おっ何だい惚気るのかい」

「これなら、そんな事にはならんな」

「……散々、旅に付き合って来たが……」

「……?」

「お前には最後まで振り回されて終わりかあ、つまらん」

「何だよ」

「ナンでもねーよー。くふっ」


そう言って、勢い良く立ち上がり駆けていく。

相変わらず、訳が分からんヤツ。

やれやれ。

入り口から入れ違いに、大きな人影が現れる。


「あなた」


サクラ。

今日、俺が妻とした女。

一目惚れ、するなんて思ってもみなかった。


今でこそ俺は人型にしているが、本来は馬体に近い。

サクラは人馬族(ケンタウロス)。

……とても美しい。


「……改めて言われると、こそばゆいわ」


いかん口に出ていたか。


「今の方は?」

「昔馴染みだ。本来は共和国方面で貴金属や宝石の商いを任されてる大物さ」

「まあ…… でも、良かったんですか」

「……なにがだ?」

「男女関係ではないのですか」

「ぶっ? ち、違う違う、そんな付き合いは一切無い」


事実、そんな時間も無ければそういう見られ方をされた憶えは……。

俺が思っていないだけ……?

……そんなまさか。


「商いは口先でする戦いだと仰いましたが…… それに隠された女心は、見分けられなかったのですね」

「……そうだとしても、付き合えん」

「何故です?」

「俺が純血に近しい水棲馬(ケルピー)だというのもあるが、うーん、あのな」


一呼吸置く。

大事な事だ。


「俺は、小さい女に興味が無い」


ニハは、どう着飾っても20台には見えない。

外見は子供だ。

実際は90過ぎだと言う。

精霊の年齢なんて皆分からんが、小さいのは無理だ。


「……ナルホド」

「……成る程じゃないぞ……」

「小さい子は小さいなりに恋をしている様子ですけれど」

「…… ニハは」

「いえ、近所の子供の、話です」


あ、あぁ、スライ達か。

まだ5才だと言うが、アイツ程に一生懸命という言葉が似合うヤツも居ない。

確か…… 単眼鬼人(キュクロプス)の女の子、泉精霊(ナイアデス)の少女が熱を上げていた様子。


「……自分以外はしっかり見えているんですね」

「返す言葉も無い」


その二人が何やら揉めているのをさっき見かけている。

ひょっとしたら、告白でもされるんじゃなかろうか。

……まだ小さいなりに、か。


「……いいのです。貴方は、遣るべきが分かっている人」

「……サクラ」

「私は貴方の幸せが増える事を願い、その為に働きます。貴方が幸せと感じてくれる為の努力が出来る、その時に私自身が幸せを感じます」

「全く、良い女だ」

「良いですか? 私…… 重くないですか?」


……ははは。

いかんな。

この妻を幸せいっぱいにしてやらねば、夫たり得ない。


「生憎とな、サクラは軽い。本来の姿に成らなくとも」

肩に担ぎ上げ、クルリと地上に戻す。


「この通りだ」

「あららぁ」

「気持ちとしても、思いが重たいとは感じない」


寧ろ、頼もしい。

俺の遣りたい事をするを願い、協力し、援護してくれる。これ以上無い相棒だ。


「俺の支えで、良いのか?」

「ええ、勿論。この身が尽きて骨になるまで」


さっきも唱和した契りの誓い。


「互いの命を足し合わせ」

「歩める道を開き進まん」


……恥ずかしい台詞だ。

道を開き、進まんとするのは、辛いが楽しいな。

さあ、遣るべき事があるぞ。


「……謝らなくちゃならん」

「なんです? ニハさんとお付き合いしたいとかでしたら却下ですが」

「っ、違う。挨拶回りをしなくちゃならん件数が増えた」


商業保証徽章なんてモノをぶら下げて、一人で歩かなくちゃならんのか。

だが、守るべき相手となら。


「……一緒に来てくれ」

「はい、何処までも。わたし、常歩(なみあし)には自信がありますよ」


ラカエ・フィスト Level=70

状態=新婚(一目惚れ)

職業=海商人 称号=財浚い

ギフト=「雨季陽炎」気配察知、目星

スキル=異常耐性level.7/10

    常時体力微量回復

    狩猟採集level.2/10

    経営学(特)

    演算強化level.7/10

魔法=黒魔術(中級)



サクラ・フィスト Level=31

状態=新婚(熱狂)

職業=弓使い 称号=ラカエの妻

ギフト=「風土の大観」気配察知、聞き耳

スキル=速歩level.Max

    常歩level.Max

    常時体力微量回復

    清掃(中)

    調理(中)

    畜産鑑定level.7/10

    調理師Level.5/10

    狩猟採集level.7/10

魔法=無し

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