ビビりが母から騎士修行(?)をされます
不安しかない時でもなんやかんや言いながらその場に向かえるなら、大丈夫ですよ。
成さねばならぬ、何事も。
☆
なんやかんやで4才になりました。
今まで毎日、父から魔術の知識、魔力の操作や一般教養を教わっていました。
勉強の間は、母がずっと「隙あらば撮影係」をしていたんだけれどね。
4才になりましたので。
体が大きくなったので。
とうとう始まります。
騎士による騎士見習いの為の騎士修行が。
……あぁ不安。
「さっ、準備はいーい?」
母がとっても嬉しそうだから、まあ、いっか。
「はいっ母さん」
準備体操を入念に、動きやすい長袖を身に着けて、草履サンダルは足首まで結い付けた。
今日は、先ず体を動かすと言うのだが。
何かニュアンスが違う気がする。
「うんっ、良い返事。じゃあ、まずはどれくらいスライの体が動かせるのかを見せてね?」
「は…… い?」
……ね?
何か違和感あるのだけど。
コレは直感的天才のあるあるなのかなー。
「僕の体力の限界の事?」
「ううん? 違うわよ。そのまんま、どれくらい動かせるのかを」
言いながら、ゆっくりなのに避けられない、不思議な歩法で後ろに回り込まれる。
「見せてもらっちゃうからねー」
肩を掴まれ、腕を広げられ、肘を曲げられ、手を開かれ、指を1本ずつ掴まれる。
早い。
……うっわわわわ、そこら中触られてるぅ、恥ずかしい。
「随分…… 大きくなったのね……」
……屈んで背中を撫で擦る母は、何だかとてもしんみりと。
えっ、何か悪い事してしまったかな?
「羽も、大分生え換わってきたし……」
うん、黄色い羽が段々伸びて、羽根先から白い部分が。
まだ体を支える力が無いから、空を飛ぶなんて出来ないけれど、生え換わりが終わったら父の訓練を受ける予定。
遊びで羽ばたいてみたり、滑空してみたりはしてる。
人と骨格構造が大分違うって事は、この遊びで知った。
肩甲骨が大きく伸びて、左右に関節が二つずつ繋がり、翼を形成している。
動かすのはちょっと難しい。
背中にあると言うより、脇の下に松葉杖を挟んだ時が感覚は近くて、肋骨の後ろに指が生えた様な、不思議な感触。
どの指か例えるなら、親指、中指、小指、かな。
母の手は細かく筋や関節をなぞり、関節の動きを覚える様に触れて……っ?
「ちょっ、ストップ!」
「ああっん、なあに」
母の手から、一旦逃れる。
お尻までは、うん、仕方ない。
でも前には関節は無いよ。
筋肉も、付いてる場所が違うよ?
「母さん……」
その手をワキワキさせるのやめて。
「違うわよ、あくまでも現状の把握デスヨ」
何が違うの。
ゼッタイ目的が変わってるでしょ。
「ほらぁ、ね、子供の成長が、気になるのは仕方ないの」
本音がダダ漏れだ。
もう、ワキワキさせるのやめてってば。
「はっ、恥ずかしいから、触っちゃ、ダメだよ」
我ながら、動揺がヒドい。
赤ちゃんの頃には散々撫でられ拭かれ世話をされた部位だけれど。
オムツは一年前サヨナラしたし。
プライバシー保護は、させてもらいたいっ。
「……っうちの子…… マヂ……」
「母さん?」
「あっ、ううん、ごめんねスライ」
大丈夫かなぁ。
(一部除く)全身を探り終えて、母が溜め息を吐いた。
「本当に大きくなったわねー」
「母さん達のお陰だよ。早くもっと大きくなりたいな」
まだ背丈は母の腰。
訓練受けることで体が成長するなら、頑張るよ。
って目線の先に母の顔。
いつもの、麦を焦がした様な甘い香り。
「じゃ、両手を出して」
「はい」
壁を押すような姿勢をとると、母が置いてあった竹竿を振り上げた。
「この竿を地面に立てて、私が上から押さえます」
「うん」
「20数え終わるまでに、この竿を倒してね。触れるのは両手だけって条件で」
「はいっ」
「じゃー、始めっ。いーち、にーい」
踏み込んで物干し竿を掴む。
下の方から持ち上げれば動く?
うっ、持ち上がらない…… 母の押さえ方が真っ直ぐだから。
じゃ、上を傾がせれば?
「なーな、はーち…… はい、終了」
倒せたっ。
これで良かったのかな。
「いーい? 最初持ち上げよーとしたけど動かなかったでしょ」
「はい」
「目的はこの竿を倒す事。掛かってる力は、上からだけ」
「はい」
「上からの力しかないなら、逆らうより力の方向を曲げてしまえばいいよね。目的に沿って、力を利用したり、逆らわない方法を見付けるのが体捌き、体を動かすという事よ」
「ああっ……」
えっ、この人誰。
って位にビックリしてしまった。
母凄い、プロの顔だ。
技術が確かな、先達者の顔付き。
力を最小限に、道具や武器を効率的に使い熟すって事なんだ。
「でね、スライは腕力あんまり無いから、足の力を鍛えていきたいのだけれど。羽があるからね、長物は向かないし、剣とか盾とか手甲とかの武器にー…… 関節とかの組技とかねー」
「全部、手を使うよ?」
「足のが重要なの。片手武器は体重がどれ位打撃に乗っているかが威力に直結するのよー。大きな武器の場合は遠心力に体重を加えるって考えてね」
関節技は然り有利な位置を捉えるのが重点で、捉えるのに足を使うのだそう。
「……盾も、武器?」
「盾も、手に持ち掲げるなら武器。パリィはどの武器でもできる。待ち構えるなら槍も剣も防具だわー。盾弾飛とか、縁を使っての膝砕、鎧壊、連撃の繋ぎに叩き込むのもアリよねー」
使い方は発想次第なんだ。
……凄い。
「母さん凄い、カッコイイ」
「ダメよースライ。これからはこの騎士修行の時間はちゃんとして。私も、なるべくシッカリして、怪我なんてさせないんだから」
母の表情はシリアスとは真逆にニヤけているけど、そうだよね。
体を動かし、武器を持って、戦う技術を学ぶのだから。
「はいっ、がんばります!」
「じゃあ、先ずは『立ち方』から」
「立ち方?」
「そーう、立ち方。スライ、体の下って、分かる?」
「……下、この下?」
「うん、でもね。ちゃんと真っ直ぐの『下方向』が分かると、巧い体の使い方が分かってくるからねー」
指で下を指したまま、疑問が湧いて出る。
「今の立ち方って、間違っているの?」
「間違いじゃないけど、ちょっと違うの。普段の生活に使う立ち方と、体を『動かす為の』立ち方は別ものよ」
「……どう違うの?」
「背骨と腰で姿勢を作るの」
「足は……?」
「お尻から下は、意識しない」
「えぇ……」
何だか支離滅裂な感じだけど…… 理解していこう。
うん。
「じゃあ、両手を挙げてー」
「はいっ」
脇に手を差し入れられて、宙ぶらりん。
「体が伸びてる方向を感じて、引っ張られる先を感じて。イメージはぶら下がった錘。頭から腰まで、体の中に錘が下がっている方向を常にイメージ出来るのが、大事なの」
ブラブラされた後、着地。
「ぶら下がった錘を、イメージ……」
頭から、とは言われたけど…… 空から操り糸でぶら下がったのをイメージしちゃった。
垂直に、頭の天辺から腰まで、体の中に、錘が下がっている……。
膝の力を抜いて、母の様に胸を張って腰に力を入れる……?
「あっ、胸に力は入れない」
肩に手を置かれ、背筋を正される。
「お腹とお尻には少しだけ力を入れるけど、力み過ぎは動きを硬くしてしまうからねー」
腰を少し前に?
お尻を両手で挟まれ、位置を直される。
「足は肩幅。イメージしない、開いてるだけよ」
少しだけ開く。
「足の裏にだけ意識を集めて、地面を感じて。足の指が全部、地面に触れてるように」
太腿の内側から下に手が…… 手が?
「うひゃあ……っ」
「ああぁん、ごめんねえスライー」
つっ…… 掴まれた……。
「……つい目の前にあったから」
不安がマシマシでギトギト何ですが。
「かっ…… 母さん!!」
「たまには触らせてくれても良いじゃない?」
それ絶対に下ネタですよね。
スライ・オーニス Level=4
状態=育ち盛り
職業=教師見習い 称号=誠実な徒弟(神の愛し子)
ギフト=「壁無き友垣」対話、心理学、人類学、生物学、多言語の優良性
「狙い違わぬ指」目星、回避、隠密、追跡、投擲、技能数値への補助
スキル=「?」
精神力向上(大)
集中力向上(大)
身体強化(小)
教育指導(微)
悪戯耐性(微)
魔法=基礎魔力操作(上級)
黒魔術(初級)
白魔術(初級)
ロギー・オーニス Level=73
状態=溺愛(永続化)
職業=兼業農家 称号=騎士
ギフト=「空気の階段」高低差無効、跳躍、登攀
スキル=跳躍力向上(大)
剣術特化
槍術特化(大)
防御力増加(大)
弓術特化
調理(中)
直観力(小)
魔法=?




