地味子さんイケメン様をいじめてしまった模様
遅くなりました。すみません。
なんとか新キャラの金森先輩との自己紹介イベントをクリアした翌日、いつもよりもしっかりと尾行の準備をした私は少し遅れて学校へ向かった。
人目のないところではちょっと走って、人目のある所では歩くようにしている。
地味子さんは運動ができない...ということになっているのである。
そんな感じでホームルームが始まる5分くらい前にくつ箱についた。
「...ん?」
教室がざわざわしている。
今日は特に朝に起こるイベントはなかったはずなんだけどな。
...いつもの嫌な予感がする。
最近はこの危険察知能力がちょっと嫌になってきた。
絶対あたってるんだもん。
「沙夜!」
「琉理ちゃん。」
なぜ彼女は当然のように私のクラスにいるのだろう。
5分前だよ?
「この騒ぎはいったい何?」
とりあえず琉理ちゃんに聞いておく。
心構えをしておきたいからね。
「なんか、黄色い頭の先輩が桃井さんとお話してるみたいなの。...ねぇ沙夜?神月がどうのこうのって話してたんだけど、今度は何に巻き込まれたの?」
金森先輩か...。
琉理ちゃん黄色い頭って、金髪って言ってよ。
金森先輩ってば桜ちゃんに会いに来たのかなー。
隠しイベントかなー。
......わかってる。現実逃避したっていけないのは。
私ゲーム完全攻略したもん。
隠しイベントも全部したもん。
私があんなにしっかりとかかわったからまたおかしなことになってるんですよね。
あーもう!
それにしたって金森先輩もうちょっと考えて行動できないの?!
ゲームではあんなにかわいくてキュンキュンさせてくれたのに!
今んとこ恐怖からのドキドキかイライラしか感じさせてもらえてないよ!
「...ちょっと図書室でね。」
「大丈夫?」
「うん。」
教室に入りたくない。
でもこのままというわけにもいかない。
教室で私の名前を出して会話しているみたいだし、ほっといたらどうなることか。
イケメンは自分の影響力をちゃんと理解してよね!
モブの心臓がいつか止まっちゃうよ!
「行ってくる。」
「沙夜、頑張ってね。何かあったら呼んでね。」
「うん。ありがとう。」
覚悟を決めて教室に入る。
「あ!神月さん!」
「やっと来たか。遅いじゃねぇかよ。」
「私の記憶では特に今日の朝に会うだなんて話はなかったと思うですが?」
本当にいらいらさせてくれるイケメン様である。
「で、何の用ですか?」
桜ちゃんに一目ぼれって話なら大歓迎ですけどね。
「お前に、手伝ってほしいことがある。やってくれるな。」
「お断りします。」
「え」
なぜほぼ他人の手伝いをしてくれると思ったのだろうか。
あぁ、バカだからか。
てゆうか、なんで私なの?
なんでどいつもこいつも私のもとに厄介ごとを持ってくるの?
あんたらならいくらでも手伝ってくれる人くらいいるでしょうに。
「なぜ私が先輩のために何かをしなくてはならないのですか。私のような他人ではなく、お友達にでも頼めば...」
そういえばこの人不良だから友達いないんだったっけ。
友達たよれっていうのはちょっとかわいそうか。
「クラスメートにでも頼めばいいじゃないですか。」
「おい、今なんで友達をクラスメートに言い直した。」
「特に意味はありません。」
「いやその言い訳は苦しいだろ。」
「では、先輩はお友達がいらっしゃるということですか?」
「あ、当たり前だ!」
ほうほう。
そんなはずかないんだけどなぁ。
ゲームと現実の違いってやつかな。
まぁ、それなら、
「ならそのお友達にお願いしてくださいよ。お友達なら引き受けてくれるはずでしょう。」
「え、や、それは...」
「もういいですか?それでは。」
友達いるならその人に頼ってもらおう。
はっきり言ってこれ以上直接彼らにかかわりたくない。
さっきからの桜ちゃんがなるほど確かにって顔してるけど、桜ちゃんも金森先輩に友達がいるって可能性を考えてなかったんだね。
ま、もう関係ない。
先輩も帰ってくれるで―
「いねぇよ!」
「は?」
何?!
急に叫ばないでよ。
「俺に友達はいねぇんだよ!だから手伝え!」
真っ赤になって叫ぶ金森先輩。
なんて...なんて...かわいそうなんだろう!
若干涙目になっている金森先輩に同情の視線が集まる。
うわぁ、プルプル震えてる。
「...わかりました。」
あんまりにもかわいそうでつい了承してしまった。
「放課後図書室に来い!」
そう言い残して走り去っていく先輩。
いたたまれなくて逃げたってめっちゃわかる。
だって耳も赤くなってるもん。
...やっぱ金森先輩かわいいわ。
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