10-12 力
そう言って彼が取り出したのは、スローウの絵が書かれたボスターだった。
「動機がある」
「そ、それは!!」
普段のおっとりとした口調を捨てて、スローウが取り乱した。
「なんでそれを!!」
「悪いけれどこっそり机の中を探らせてもらった。それと日記も。――村長になりたかったのに、元村長に反対されたようだね」
「……」
スローウは黙った。
「そして、この村の決まりとしては、村長が急死した場合、その間の代理は村長の親族が務めるとあった。つまり」
「そこまでして村長という立場を得たかった……?」
ゴーシュの視線がスローウへと突き刺さる。困惑と、怒りと、悲しみ。様々なものが入り混じった目であった。
「……ふふふ」
少しの沈黙の後、スローウは静かに笑い声を上げた。アクトには不敵に聞こえるものであった。
「そうですー。私はー、村長という立場を得たかったー。……おっとりとした性格だからー合わないと言われー魔法の才能もなくーただ村長のー偉大なターケンの娘というだけでしかなかった私はー、せめて村長という立場を得たかった……。そうでなければせめて……力を」
スローウはそう言うと、アクトへと一気に詰め寄った。
「なっ」
そしてシーリアの目にすら留まらぬ速さでアクトの懐から大蠍の持っていたエクストラクターを奪い取った。
「しまった!!」
「あの森の主が死んだと聞いてー、あなたのブレスレットを見てー、持っていると思いましたよー!!」
スローウは勝ち誇ったように満面の笑みを浮かべると、エクストラクターを身につけた。
「途方に暮れて死のうとした時あの大蠍は囁いたのですー!!村長を、父を殺せば!!私が村長になれるではないかとー!!そして同時に聞きましたー!!このブレスレットがあれば力が得られるとー!!この村を手当たり次第に探しましたが見つかりませんでしたが……これで私は!!力を得られ――」
瞬間、ブレスレットから真っ黒い光の蔦が生えた。
「えー?」
するとスローウの全身を蔦が包み込んでいく。ウニョウニョと生物の如く巻き付いていく。
「あ、え、ええー?な、なんですこれ」
「適合しなかったのか……?」
アクトが呆然としながら言う。その言葉を拾ってスローウが叫ぶ。
「そんな!!魔法も使えず!!村長にもなれず!!力も得られないんですか!!わた、私は一体、何のために――」
その言葉が最後まで紡がれる前に、蔦は口をも塞ぎ、そしてスローウの四本脚の肉体が漆黒の二本足の人間態へと変化する。
アクトはその形状変化よりも気になる事があった。
――何のために。
彼にはその先の言葉に当たりがついた。
「ああ……嗚呼もう!!」
唖然として何が起きているのか分かりかねているシーリア、そしてゴーシュの前に立ち、アクトは自らのエクストラクターにドラゴンとスコーピオンのリリーフカードをセットする。
「生まれてきたか、とでも言いたいのか。そうはいかない。君にも生まれてきた意味はある。罪を償い、それを探し給え。そのためにも、助けてあげるさ!!」
『ドラゴン!!』
『スコーピオン!!』
『リリーフ!!』
エクストラクターのドラゴンとスコーピオンの目が輝いた。




