5-6 登板<リリーフ>、リヴァイアサンフォース!!
「きゃー!!きゃー!!強化フォームよぉーっ!!」
サチが何か喚いている。
「きょ、強化フォーム……なのかな?」
僕はよく分からない。多分サチは昔=前世でこういうものに関する知識を持っているのだろうけれど、如何せん僕はそういうのに興味無かったので分からないのだ。……いや本当だよ?家電量販店で試遊したりはしてないよ?
「グァオォォォォォッ!!」
咆哮を上げて狼が二足歩行で迫ってくる。傷は深いようで、血がだくだくと流れ出ている。
「さっき襲ってきたんで罠に嵌めたんだけど、まだ生きてたの!?」
サチが言う。斜面を見ると確かに何か巨大な槍が仕掛けてある。あれが罠らしい。
「アレは人間を食う魔獣です!!ととととととととりあえずなんとかしてくださーーーい!!」
サチと抱き合いながら震えるクレスが言う。
「わかりました、わかりましたよ!!」
僕はイヤイヤそう言うと、右手についた尻尾を槍の如く狼の体へと打ち込んだ。
「スピアプラッシュ!!」
尻尾から水流が巻き起こり、狼の体へと突き刺さっていく。技名は今考えた。
「ギェアアアッ!?」
続け様に、右肩を狼の方に向ける。
「ギルスバイト!!」
肩についたリヴァイアサンの頭部、そのエラとキバから水の魔力を帯びた衝撃波が舞う。
それは向かってきた巨大狼の皮を、皮膚をズタズタに引き裂いていく。
「ぐげ、げ、げぇあ」
痛みに顔を歪ませる巨大狼。だが殺意は耐えていない。ギンと僕の方を睨みつけた。今にも殺したい、食べたいという感じの目である。
怖い。
怖いがここで逃げ出すという事も出来ない。
「す、すまないが、襲ってくる以上は撃退せねばならないんだ。退いてもらえるかな」
僕はそう言うが、退く様子は見せない。言葉が通じていないのか、それとも通じていても気にしていないのか。それでも狼はその牙に炎を湛えながら向かってきた。
「ならば仕方ない!!」
僕はレバーを一度スライド、リリーフカードを表に出すと、再びレバーを倒して読み込ませた。
『リヴァイアサン!!』『ラストイニング!!』
カードとプレスレットが連動して声を上げる。
僕の右腕に水流が発生する。僕はそれを天に掲げた。頭上にはまるで巨大な滝が上空目掛けて流れ続けるかのような勢いで水が湧き上がる。
『リヴァイアサン!!』『バトルエンディングヒット!!』
「オーシャンストリーム!!」
大海のような濁流が、狼の命の炎を包み込み、そしてその水圧で巨大狼の肉体を一瞬にしてすり潰した。
ザザザザザ。
山の斜面を濁流が流れ、やがて魔力が尽きて消えていく。斜面に残された血の跡は流れ、元の橙色の地面が見えた。
「ふぅ。まぁ、とりあえずこれで」
『リプレース』
僕がリリーフカードを取り出すと、エクストラクターがそう言った。
「すすすすすすすす」
先程まで抱き合っていたサチが、僕の方を見て目を輝かせながらそう言った。
「すすすすすすすす」
クレスも同様に口をパクパクとさせている。……なんで君まで目を輝かせているんだ?
「すごーーーーーい!!「すごーーーーーい!!」
同時に二人が僕へと抱きついた。
痛い。
「痛い痛い離して離して!!」
だが二人とも興奮しているらしく、まったく聞く耳を持ってくれない。
キャッキャキャッキャと僕の体をブンブンと振り回している。
「私の理想通りの結果だったんよ!!これが見たかったんよ!!」
「いやこれなら壊さなくて正解でしたね!!こんなド派手な魔法が見たかったんですよ!!」
なんかさり気なく恐ろしい事を言っている気がする。
「やー、スキルもそうですが魔法も結構地味でしてねー。もっともっとド派手なものが見たいと思ってマジックアイテムを実装したのですが、地味な効果しかなくて困っていたんですよ。バグの原因になりそうとわかった時はどうしようかと思いましたが作って正解でした!!」
「おい」
そんな理由で作り出したのか、と僕は呆れ気味に言ったが、全て無視してくれた。
「やーサチ!!研究所おっ立てて頑張った甲斐がありましたね!!」
「全くなんよ!!クレスがこんな無茶苦茶なアイテム作ってくれたお陰でアタシの転生後生活はハッピーなんよ!!」
「僕は全く困るんですけど!!もっと平穏に生きたいんですけど!!」
僕の訴えを二人は一向に無視し続けてキャッキャと喜んでいる。
僕はなんとか二人の拘束を抜け出すと、はぁ、と溜息をつく。
どんどん変な事に巻き込まれている感じがする。疲れる。
「でもまぁ、こういうカードを集めればパワーアップができるって事は分かったから収穫か……」
まだドラゴンのカードには、サメと同じサイズの、少し小さめのリリーフカードを差し込む余裕がある。
人間界に戻って鑑定して、エクストラクターを探せば、他のリリーフカードも見つかるかもしれない。
とりあえず帰ろう。そう思って、人間界への出口、魔界への入口、魔界上空の転移魔法を見上げた時。
「……は?」
僕の思考はフリーズした。




