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12-1 逃走

 どうしてこうなったんだろう。


 アタシ、シーリア・ガードナーは、()()()()()をしっかりと抱きしめながら、木々の合間を縫うように枝と枝を飛び回りつつ、そんなことを思う。



 思い返せば、アタシ達が甘かったせいだろう。色んな国が協力しているからと、ナクールに居る協力者の存在を軽視していた。それが全ての誤りの始まりだったのだと、今更ながらに思う。



 数時間前。


 アタシ達は『人住まぬ地(ノーマンズ・ランド)』での用事を一通り終えたことを確認して、一旦ジャンベールへ戻ろうという話になった。


 サラマンダー達の村を後にして、『迷宮の森ラビリンス・フォレスト』へと入る。魔物達は大蠍やその他多くの魔物を退治したアタシ達を見るやとっとと逃げ出したので、帰り道は気楽なものであった。不気味な木々の雰囲気だけは全く慣れる事が出来なかったけれど、少しの間だと思って我慢した。アクトは全く気にしていなかったけれど。


 事がおかしくなりだしたのは、森を出た直後だ。ビービービーと変な音がした。どこからか最初は全く分からなかったけれど、アクトが懐からある物を取り出した事でその音源がなんであるかを理解した。管理者を名乗る彼女、クレアから貰った『デバッガーコンパス』が、しかもあの、インジェクターに反応する方のソレが反応していたのだ。


「いきなり何だ何だ」


 そう言ってアクトがコンパスを覗くと、その針は真っ直ぐ前方を指し示していた。


 そちらに目を向けると誰かが走ってくる。


「あれは……」


 アタシは目がいい方なので、それが誰か察しが付いた。サチとクレスであった。


「ひいいいいいいいいい助けて!!まずいんよまずいんよ!!私を喰っても美味しくないんよ!!」


「クレア!?クレア!?こういう時に反応しないのは無いんじゃあないですかオイ!!未だ現役の管理者のくせにどーしてこういう時に何もしてくれないんですかこのままでいいんですか!?」


「山の上で無いと聞こえないゆーてたやんよ!!」


「使えねえ妹ですねぇ!?」


 そんな事を大声でギャアギャア言いながらこちらに向けて駆けてくる。と、二人の視線とアタシ達の唖然とした顔とが見合った。瞬間、サチはこちらへ警告を投げつけてきた。


「あ!!アクト!!戻るんよ!!『迷宮の森ラビリンス・フォレスト』でも『人住まぬ地(ノーマンズ・ランド)』でもいっそ魔界でもなんでもいいからこの場から離れるべきなんよ!!」


 警告なのは理解出来たけれど、状況の方は全く理解出来なかった。まぁその、二人は結構騒がしい方だなとは思っていたのだけれど、こんなにあーだこーだ叫びながらこっちに来るというシチュエーションが意味不明であった。


「一体どうしたんだ」


 アクトが尋ねても二人は無視して、アタシ達が来た方へと走っていく。


「ヤバいです!!マズいです!!体勢建て直さないとマズいんです!!逃げた方がいいです!!」


 そう言い残して、二人は『迷宮の森ラビリンス・フォレスト』へと消えていった。


 アタシとアクトは顔を見合わせた。その顔には――アタシの顔もだと思うけれど――困惑と焦りが浮かんでいた。


 何か、おかしい。

 何か、まずい事が起きている。


 それだけは理解出来た。


 騒がしい二人が消えて、静かになった草原に風がびゅうと凪いだ。


「戻る?」


 恐る恐るアクトがアタシに聞いてきた。アタシに聞くか?アタシだって分からない。


 でもなんかマズい気がして、アタシは言った。


「……戻ろう」


「少なくともあの二人を捕まえて事情を聞いた方がいい気がするね」


「アタシも同感」


 そう言ってアタシ達が森の方を向こうとした瞬間。



「いやいや困りますよぉ。ここで死んでもらわないとぉ。少なくともそこの――アクトだっけ?男にはねぇ」



 どこかで聞いたような、不敵で不気味、ニヤニヤとした笑みを浮かべていそうな男の声がして、


 ズブッ。


 何か、肉を穿つような嫌な音がした。


「え?」


 音のした方を見ると。


「は?」


 アクトが居た。

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