11-8 そこにいるだけで
「ごめん」
サラマンダーの村を後にしながら、アクトはシーリアに言う。
「何よ」
「いや、肝心な時に気絶してたからさ」
「ああ。……いいのよ」
心底すまないといった様子で言うアクトを見ながら、シーリアはふっと笑みを溢し、あの後のことを思い出す。
あの後、アクトが起きてから、村にフォーゲルを引き渡し、村に残されていたサラマンダーのリリーフカードを手に入れた。
フォーゲルが持っていたエクストラクターは、元々はサラマンダーが使っていたものらしい。が、今は使う必要の無いもの、アクトにリリーフカードごと渡してきた。
「これでワシらの村はもう少しゆっくり出来そうじゃわい」とはサーラの談であった。
「いや助かりました、救われました。有難うございます、感謝致します。またこの地に来ることが、来訪することがありましたら、是非顔を見せてください、謁見してください」と、レームは相変わらずの言葉遣いでそう言った。
そして挨拶してレームの家を出ようとした時。
「あんたか、あいつを、ガルーダの奴を捕まえてくれたのは」
そうシーリアに声を掛けたのは、仮のベッドで傷を癒していた一人のサラマンダーの兵士だった。
「ええ」
「そうか。ありがとう。これでこの村は安泰だ。不甲斐ない我らに変わり、村を守ってくれたこと、本当に感謝する」
「気にしないで。アタシはやりたいことやっただけだから」
「ありがとう。後は我らが守る。必ず」
鋭い爪で切り裂かれた硬い肌。それを包帯で隠しながら、痛むであろう体を持ち上げつつ、兵士は言った。シーリアにはその目は輝いて見えた。その在り方も。
「……うん。無理だけはしないでね」
彼女は静かにそう応えた。
「気にしないの。村でも言ったけど、アタシはアタシがやりたいことやっただけだし」
「うーん。しかしその、何も出来ないままリリーフカードだけもらうってのは」
アクトが手元の2枚のリリーフカード、バードとサラマンダーを見ながら言った。このカードはアクトにしか使えない。そのためお礼にとシーリアが貰ったそれはアクトの手元へとやってきていた。
「いいじゃない、儲け儲け。それに、アンタだって別に、何もしてないわけじゃないから」
「寝てただけじゃないか」
その言葉を聞きながら、シーリアはアクトの顔を見る。
そして、新たな姿となったナイツエクストラクターを見る。
ーーどうやらこいつは、適合者の望む力をくれるようだな。
森で出会った大蠍の言葉を思い出す。
「何もしてないなんてことはないわよ」
そう言ってシーリアはふふんと機嫌良く歩き出した。
「寝てただけだと思うんだけどなあ。僕なんかしちゃった?」
ぶつぶつとそう呟きながら、アクトはそれに続いた。
人住まぬ地のエクストラクターの反応は消え、デバッガーコンパスは森の先の方を指している。インジェクターの反応を検知するそれもまた同様に。
二人は一旦ジャンベールへと戻ることにした。




