2-D100-19 タカマツによる報告書3
タカマツ君の報告書です。
その3。
親愛なる宰相閣下へ 忠実なる部下より
今、僕と汀はヘルザーツの郊外に居ます。
反鉱山組織の一員の家の中です。
取るものも取り敢えず逃げてきました。
ヘルザーツの王城は燃えて……正確には数秒で蒸発して跡形も残りませんでした。
幸い、庶民の暮らす地域には火は及ばず、犠牲になったのは王族と内城に居た者、もしかしたら人魚族も巻き込まれたかもしれません。
もしそうだとしたら、なんと悲しい事でしょうか。
我々が避難したのは、城をすべて――――石ころすらも残さず――――焼き尽くしたのち、その上空で飛びながら高らかに笑うロンドール候の赤い異形を目にしたからです。
汀が言うに、あれは鬼神化しておりました。
しかも、炎の鬼神です。
確たる系統は不明ですが、火の属性値は18を軽く超えています。
同じく汀の見立てでは、25を下回ることは無いそうです。
鬼神となると、急に気が変わって街全部を焼き尽くすかも知れず、それに僕を見たら一体どのような動きをするのか、全く予測できません。
誰もが知る通り、ロンドール候と言えば空間を扱う運命神です。
炎には弱いどころか、触る事すらできなかったという報告もあります。
彼は「先日復活した」と言っておりました。
もしかしたらそれと関係あるのかもしれません。
しかも、あの「甘っちょろい」と有名だったロンドール候が、ヘルザーツ王一族だけではなく関係の無い女官や捕らわれの人魚族に至るまでを……。
僕には信じられません。
偽物だったのでしょうか?
僕は間違ってしまったのでしょうか?
そして、これは予定通りですが、反政府組織と反鉱山組織が連合して蜂起し、既に王都はその支配下にあります。
後は大使が顧問として次期政権に入り込む予定になっております。
この時の為に宗主国のマグヘイレンにも既に手は打ってありますが、それは御存じの通りでしょう。
本来、ここに至るまではあと半年以上かかり、もっと多くの犠牲を要するはずでした。
その意味では、ロンドール候に感謝すべきかもしれません。
ロンドール候は、港に停泊していた船に乗り込み、北へと向かいました。
その理由もわかりません。
飛べはするものの、意外と月日の属性値が低いのかもしれません。
僕たちは後を追おうと思います。
彼の行く末に興味が出てきました。
追伸 僕、メリッサに帰ったら汀と結婚式を挙げるんだ……。
――――
フォルカーサ帝都メリッサの郊外。
「宰相殿」の私邸にて。
その宰相殿がタカマツからの報告書を手に叫んだ。
「おいタカマツ! フラグ!! それフラグだっつーの!!!」




