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2-D100-15 船の神4 コバルト公国

精神修養を乗り越えて、西の大陸ナルコーの玄関口、コバルト公国に上陸した『船の神』マリヴェラ。

マリヴェラは、同行の2人による「教育」に耐えられるのであろうか?!


 と言う訳で? 

 何とかコバルトに到着したが、ミュリエルⅡ号は港には入らない。

 検疫やら入国審査やら面倒くさいからだ。


 魔王が歩きを厭うかどうかを心配したが、それは問題ないらしい。

 内心ほっとする。

 魔王は基本ふんぞり返って座っているので、歩いているのをほとんど見た事が無い。


 ただし、今こうやって3人で歩いていると感じるのだが、魔王は目立つ。

 若い女の子が高級な和装を魔改造した服を着て、ピンクの髪を茶筅に結っているのだから。

 俺とクーコは如何にも冒険者っぽい見た目にしているのに、マイペースはこれだから困る。


 なお、ぱっと見人間に近い俺は、ユキのモノを参考に、お尻に尻尾を生やしている。

 変身なので、ちょっと意識し続けないとすぐ消えちゃうんだけれどね。

 人間の姿で歩いてると、逃亡奴隷とみなされて捕まっても仕方ないとか、マジこの大陸あり得ねえよな。


 ちなみに人猫族であるクーコも、見た目が人間なのであるが、良く見ると虹彩が縦に裂けていたりする。それにどうも、こっちの連中は人間とクーコのようなライカンスロープを見分けることができるらしい。


 さて、ここコバルト公国は、悪魔族の国。

 悪魔と言っても、キリストの敵なんかではない。

 そういう種類の生き物だって言うだけだ。

 天使族だってそう。

 連中も全く持って神の代理人とかではない。

 まあ、悪魔族ってのは見た目も持っている能力もそれっぽいので、内海では嫌われているし、悪魔族も面倒は避けて内海には入らない。


 ほら、あのフロインのおっさんが悪魔族だ。

 見た目ワケわかんなかったもんな。

 2人で1人だもん。

 彼の場合は転生者なので、生粋の悪魔族ではないし、当然ここの出身でもない。


 さて、この西の大陸ナルコーにある国と国の力関係については、大した情報を持っていない。

 ロンドールはこっちの国とは国交も通商もひらけていないからだ。

 たまに往来する個人の商船からもたらされる話が頼りだ。


 ここコバルト公国の北には祥州が広がっている。

 更に、西側には天使族のマグヘイレン共和国と、夢魔の国ガルナタが広がっていた。

 いた、というのは、3年ほど前にマグヘイレンがガルナタを滅ぼして併呑したからだ。

 尚、その時とほぼ同じくしてコバルト公国の南に位置していたクローリスクインタルが、更に南のシルヴェス王国に滅ぼされている。


 大雑把に言うと、マグヘイレン共和国が力をつけて周辺諸国を併呑しつつある。

 祥州は独立独歩で干渉を嫌う。

 コバルト公国はマグヘイレンに圧力を受けながらも何とか国家としての形を守っている。

 という。


 ま、ここの状況の説明なんて詰まんないよな。

 ほら、もっと面白い事が転がり込んで来たぞ。


「ほう、余に用事とは何か」


「魔王様、魔王様が手を下すまでもございません」


「近くの俺たちの住処に招待してやろうって言ってんだよ。上手い人骨スープあるぜえ」


「何だぁ? 随分ナマイキだなこのメスガキ二匹ぁ?」


「なあ兄弟、もうボコって攫ってやっちまおうぜ?」


 魔王とそのお供の者に突っかかっているのは、オークの集団。

 全部で五人か。

 皮膚の色は普通に肌色で、背丈はどれも2メートルはある。


 しかし馬鹿だよね~。

 魔王と化け猫に喧嘩売るとかさ。

 俺は後ろの方で高見の見物、と。


 オークが俺を指さした。


「おい、その後ろの! お前こいつらの保護者だろう! どういう教育してるんだ?!」


「保護者な訳ねーだろ?! アホかお前!」


 教育されてんのはこっちだぞ!

 と、真新しいトラウマをほじくり返された俺はつい怒鳴り返してしまった。


「何だと?!」


 あ、しまった……。


 魔王が頷いた。


「ふむ。貴様が露払いか。構わん」

 

 あーあ。

 何だかんだ言って、アンタ面倒くさいんでしょ。


「はいはい。やればいいんですよね」


 結局オークどもは俺を取り囲んだ。

 農民でも牧畜民でもなく、傭兵崩れか群盗の類だろう。

 とても、臭い。


 オークの背は高い。恰幅もある。

 俺が見上げる格好となった。


「宜しい。では諸君。今から一人ずつ俺を殴れ。

 一歩でも動かすことができたなら、そこの猫娘をくれてやる!」


 ただ俺が蹂躙して終わりじゃ面白くないもんな。

 と、クーコをビシッと指さした。

 流石のクーコも動揺する。


「え、ちょっとマリさん!」


「マジか。自信満々だなお前……獣人じゃ……なさそうか」


 と、オークは俺の尻尾を見てせせら笑った。


「ガキでもいい」


「食いでが無いな」


「ふん、簡単じゃねえか」


 オークたちはきちんと一列に並んだ。

 

「よーし、オレが最初だ。しかし、女だろうが手加減はしねえぜ?」


 1人目のオークが拳を固め、俺を殴った。


 ゴツン。


 痛そうな音がしたのは、主にオークの拳の方だ。


「うへ、いてえ!」


「おいおい。お前、手加減したんじゃないのか?」


「いや、こいつ、異様に硬いぞ?」


「ホントかよ。おい、女。何か魔法を使ってんじゃないだろうな?」


「いや、全然。君たちの柔らかいお手手が痛むってんなら、武器使ってもいいぜ?」


 オークは顔を見合わせた。


「じゃあお言葉に甘えて」

 

 と、2人目のオークは金属パイプのような物を持ち出した。


「じゃあ、後悔すんなよっと!」


 ブン!


 カン!

 

 乾いた金属音を残し、金属パイプのような物はオークの手を離れて飛んで行った。


「あぶねえな。何やってんだ」


「う、悪い。こいつ、確かに硬すぎるぞ」


 えっへっへ。そりゃそうだ。


 今回の「船の女神」サマは金属性が19、聖属性が37あるもんな。

 前者は言うまでもなく、後者も主に防御と回復にかかわる属性だからさ。

 特に防御しているつもりでなくともこの硬さだもんね。

 ま、火の属性武器でも持ってこなきゃ無理無理アルヨ。


「しょーがねーな。オレは素手で行くとするか」


 三人目のオークだ。


 しかし……。

 こらこら、婦女子の面前でナニ服を脱ぎだしてんだ?

 うわ、キタネッ。見せるな!


「オレも殴るけどよー、勢い余って抱きついたりしたらゴメンな~」

 

 あっ。

 やべっw

 アンタ頭いいなwww


「ちょ、マテ! 今からルールを変えよう! 俺が一発だけお前らを殴れるってのどう?」


「あー? なんだって?」


 と、3人目が助走をつけて襲い掛かって来た。


 もう、そいつは殴りかかるというより、はっきり抱きつきに来ていた。


 ちょー!

 オークのキス顔なんて勘弁してくれ!


 絶対拒否である。


 俺は右手を後方に突き出した。

 右手は一瞬で体積を大幅に増し……1隻の船となった。ミュリエルⅡ号であった。


 それで、全員纏めて横薙ぎにぶん殴った。


「食らえー! おりゃーーーーー!!!!」


「「「「うぎゃー!!」」」」



――――



「マリさん、やっぱりバカでしょ。ホンと、2年経って頭悪くなったんじゃないの?」


「うむ。そもそも、野盗など有無を言わさず根切にすればよいだけであるからな。無駄な事をするのはたわけの所業」


 再教育中である。

 いや、俺が悪いのか?

 悪いのかなあ。

 悪いよな。

 フナ虫と同等だもんな。


 申し訳ありませんでしたっと。


なろうの評価システムって~。

ワタクシが活動停止していた頃に~。

簡単に評価を付けられる仕様になったみたいね~。チラッ

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