表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/114

2-D100-10 船の神2 クーコ

『愛の神』であるマリヴェラがガレオンに揺られていた頃。

ロンドールへは『船の神』であるマリヴェラが辿り着いていた!

『船の神』マリヴェラは、ユウカから状況を聞き出すと、西の大陸ナルコーへと向かう決断を下したのだった。


 と言う訳で、俺はまず愛するユキを探しに行く事にした。

 ここの事はあまり心配していない。

 ロンドールは低空飛行ではあるものの安定しているからだ。

 港はミツチヒメが見ているし、内陸は稲荷神の化身であるお夏さんが差配しているらしい。

 ロジャースら艦長連中も健在で、今は哨戒や護衛の任務。

 内務大臣ファーガソンの爺さんも全然元気。彼は内陸に出張中との事だ。


 オレサマの家出についても、別に俺自身がすぐ出張らなきゃいけない状況でもない。

 今の所あの2人組+澪は、ホーブロ王都への定期船に乗っているらしく、全く足取りの辿れないような家出ではなさそうだ。それにユウカは既に何人かを派遣していると言う。

 上手くいけば、彼らが俺様たちを連れ戻してくれるかもしれない。


 ユキの捜索だけは、俺自身行かないとダメ。

 西の大陸では、人間種は基本的に奴隷階級だ。

 ヒエラルキーの一番下である。

 従って、人間を派遣してユキを探しにやるのは事実上不可能なのだ。

 下手すれば、逃亡奴隷扱いされて売られてしまう。

 第一、人口の少ない地域は魔獣や魔物が闊歩している。

 そんな所へ部下をやらせるわけにはいかない。


 ただ、俺1人で行く気も無い。

 必ず連れて行かねばならない奴がいる。


 そいつは政府職員が住む寮の一室にいた。


「邪魔するぜ~」


 ベッドに寝たまま首を巡らせ、俺を見たのは――――転生者、人猫族のクーコだ。

 彼女は俺を見るなり、身体をよじって向こうを向いた。


「久しぶり。クーコ大先生。俺さまの帰還ですよ~」


「……分かってます」


 大先生とは、彼女が俺の歌の師匠だからだ。


「何だい。どいつもこいつも、全然顔違うのに分かるものかね。おかしいだろ」


「そんなことありません。見ればすぐです」


「ああ、そう。ね、こっち向いて?」


「いやです」


「そう言わず」


「合わせる顔もありません」


「じゃ、こうしてやる」


 俺はクーコの後ろから手を回し、ぎゅっと抱きついた。


「やっ……やめて! ちょっと!」


「そっけないんだもんな~」


「ホント、お願い」


 クーコが泣きそうになったのでやめた。

 でも口を耳元に寄せてささやき続ける。


「オイコラ、いつまで寝てるんだよ。今からユキ探しに行くぞ」


「……え? でもアタシ両足無くして動けないし……」


「ホムンクルスの存在お忘れですかね?」


 ホムンクルスとは、主にエルフの国フォールスで製造されているもので、魔法医師などが上手く使えば欠損した四肢などの代用として使える便利な「肉体」だ。

 2年以上前に女型と男型の2体を購入し、女型はカミラの身体として使ってしまったのだが、男型の方は残っていたのである。


 ……ちょっと時間が経ちすぎて、緑色になってるけどな!


 クーコはそれを知っていた。


「え……今残っているあれ、男子用でしょ?

 それに、緑色になってきてるってこの間オレサマさん言ってたわよ?」


「うんうんそうそう」


「そうそうって……」


 俺はクーコにウインクした。


「でも大丈夫。今回改めて転生し直したとはいえ、魔法のレベルも『言霊』のランクも全部そのまま引き継いでるんだよね」


「そ……そうなの?」


「ああ。すげーだろ。理由は分かんねえし、前と同じやり方はできなくなったけどな。

 何とかしてみせる。俺を誰だと思ってるんだよ?」


「……有難う」


 確かに「冥化」はもう使えないし、「運命神の金の雨」にあたる「船の女神の変化」は「船その物への変身」であったりするので、したがって患者の体内から治療するという荒業は使えなくなった。


 せっかくなので、ここでちょっと、今回の全属性値を見てみよう。


月16

日14

火6

水19

風16

金19

土7

固12

流20

冥6

魔18

聖37


 この通り。

 うーん。良いといえば良いのだけれど、微妙でもある。

 数値が平均して高いわりに、攻撃に関しては決め手に欠けるのだ。

 まあ、船の女神なんだから攻撃力高くてもおかしな話だけれど。

 しかし、「水化」は使える。

 しかも聖属性が高いと言う事は、自己の回復力や回復系の魔法・言霊の効果が抜群に上がるという意味なのだ。


 魔と聖は一言で例えると、魔属性は「バラバラになれ」。聖属性は「あるべき姿になれ」。


 さて、じゃあクーコを元に戻そうか。


 先ずは彼女を「スリープ」で眠らせて服を引ん剝く。

 「水化」に抵抗されても困るからな。

 眠らせたとしても、生体としての抵抗力は生じているので、余裕の作業とは言えない。


 服を脱がせたのは……。

 もちろん、いかがわしい意図が有ってのモノではない。


 ……断じてない!

 そこ!

 無いったら無いんだって!!


 しかしクーコの裸体を目に収めた俺はつい顔をしかめた。

 思ったよりも損傷が激しかったからだ。

 生きながら引き裂かれた……そんな感じだ。

 生命力の強い種族だとしても、一体これでどうやって生き延びたんだろう?

 それに、ユキを守れなかった自責でずっと心を焦がしてたんだろうが。

 彼女の苦悩を想い、俺の目からは涙が落ちた。


 次に収納魔法「パンドラボックス」で設定した自分の身体から、ホムンクルスを取り出して横に置く。


 ……何度見てもやっぱり結構緑色だな。

 ま、ソコは修正するからいいんだけれど。

 便利だった「パンドラボックス」も、冥属性値がめちゃくちゃ下がったので、ホムンクルスを入れるだけでもう手一杯だったしな。

 色々適応していかなきゃ、だ。


 

――――



 キュー〇ー3分オペレーション!


 てれてってってってれー(略)


 材料

 クーコ1体

 ホムンクルス適量

 小指少々


 先ずは下ごしらえです。

 ホムンクルスの使用する部位だけを「水化」で水の塊にします。

 「言霊」の「つく」と「なおす」のコンボ、「つくりなおす」で男子用のホムンクルスの形状を女子用へと変えていきます。


 形を整えるのは楽々ですね。

 「整える」力を表す聖属性が37もあるのですから。


 次に俺の左手の小指の先を切り飛ばします。

 

 おっと!

 部屋の隅まで飛んで行ってしまいました……。

 危ない危ない。


 別に親分に詫びを入れるとかそう言う事ではなく、万能の薬ともなる高位神族の肉体を混ぜ合わせる事により、成功率のアップを図るのです。

 これは元の世界で「アンガーワールド」のシナリオ集を勉強し直した成果です。


 耳でも鼻でもどこでもいいのですが、後々の事を考えて、一番無難な小指の第一関節から先にしておきましょうね。


 これで成功率が99%とかになった筈です。


 何故成功率が揚がるかと言うと、神族の肉体と言う「対価」を支払う、という概念です。 

 「対価」と言うからには、当分の間この小指は回復魔法でも治りませんが、クーコが元に戻るのなら安い物です。

 

 さて、下ごしらえが済んだらクーコとホムンクルス、神族の小指を全て「水化」し、よく混ぜ合わせます。

 大きな水の球が俺の目の前に浮かび、ゴボゴボと音を立てております。

 重要なのは、元の姿のクーコを強く念じる事です。

 間違っても「足4本」とか「あっハエが混じっちゃった!」とか余計な事は考えてはいけません。


 ……そろそろ出来上がったでしょうか?

 水の球を人の形に。

 徐々にクーコの形に。

 焦らないのがコツです。

 

 さあ、出来上がりました。

 肌艶もピカピカ、やせ衰えてた筋肉も戻しました。

 完璧です!


 凄腕無免許外科医もびっくりですね!


 では、また来週!



――――



 あ、服を「水化」して着せるの忘れてたか。


 俺は裸のクーコを前にして考え込んだ。

 服を「水化」して着せるのも面倒なので、仕方がなく、俺は手ずからパンツを含め服の全てを着せてやった。


 別に何らかの意図があってそうした訳ではないからね!?


 「解除」とつぶやくと、クーコが目を覚ました。

 クーコは、自分の身体を見つめた。

 そして今度こそ本当に泣き出した。


 ポンと彼女の頭を叩いてやると、電光石火の動きで俺の首につかまってぎゅっと抱きしめて来た。

 かつて、たまにこれで「訓練」と称して締め技を食らっていたのだが、今はクーコは何も言わず、俺の首からぶら下がったまま、泣き続けた。

 俺は彼女の身体を抱きしめ返していたが、大事な事を忘れたのに気が付いた。


「あ、悪い。おっぱいをボリュームアップさせんの忘れてた……グェギュァ!」




マ「手術料は五千万だ」

ク「ところで、何でアタシ、パンツを前後逆に履いているの?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ