第31章 学生時代
部屋の状態を見る限り、荒らされた痕跡はなかった。
紅茶のカップは三つ。誰か客が入ってきたものだと思われる。三つのうち二つのカップの中に青酸カリの毒物が検出された。
慎太郎たちは、マンションの監視カメラを見せて貰ったが、出入り口は一つ。マンションの出入り口にインターホンがあり、そこで外の客は住人のいる部屋に呼び出しボタンを押し、住人がインターホン越しでオートロックの自動ドアを開けないと入れない仕組みになっている。
監視カメラでは、十九時ごろに旦那の内田が帰っていて、その一時間後の二十時ごろに妻である桜田が帰ってきたのが映し出されていた。その他は、マンションの住人だろうか、何人かが、自分たちの鍵を使ってマンション内に入っていったため、どうも怪しいと思われる人間がいなかった。
ちなみにオートロックの自動ドアはチャイムを相手の部屋に鳴らすとカメラが作動し、どんな人間が来たか確認する事が出来るが、玄関前の呼び鈴のチャイムにはカメラの設置はされていない。
自動ドアの方には先程の通りにチャイムの所に防犯カメラが設置されているのと、自動ドアから郵便受けの周りが見えるように監視カメラが一台設置されている。
「カメラはこちらだけでしょうか?」慎太郎が管理人の石原卓三に聞く。
「そ、そうですね。出入り口のこの一台とオートロックの解除するこの呼び出しの部分だけになります。」石原が答える。
と、なれば必ずこのマンションの住人やそれ以外の人間が防犯カメラなどに映るはず。
だが管理人は、防犯カメラに映っているのは全員マンションの住人だと言った。
仮に犯人が内田夫妻の鍵を無断で持ち去っていたとしても、このオートロックの自動ドアを開けるには、鍵を差し込む呼び出す機械の方まで足を運び、鍵穴に鍵を差し込むところまでこの防犯カメラに映されてしまう。そうなれば、この管理人が住人ではない人間が鍵を使ったと気づくはずだ。
慎太郎は思考を変え、押収する予定の香水に目を向けた。
「鬼束君、香水に夫妻以外の指紋があるかどうか調べてくれ。指紋を見つけたら、この香水を販売している会社へ行ってみるよ。
もしかしたら、誰かからのもらい物かもしれんからな。」
「もらい物・・・ですか?」丹波が訊いた。
「あぁ、レシートがないし、それにプレゼント用に包装もされているようだ。」慎太郎がそう言って、包装用の紙を見つけたらしく丹波達に見せた。
香水の販売元は“株式会社ハニイ”という会社だった。
とりあえずその包装紙も鬼束に渡した。そして、あとの被害者宅の捜査は鑑識や科捜研に任せて、慎太郎たちは被害者宅を出てまずは被害者二人の勤務先である“株式会社チェリー・ブロッサム”へと向かった。
神奈川県横浜市都筑区で、株式会社チェリー・ブロッサムはあった。
会社へ入ると、優奈の父が顔を真っ青にして待っていた。
「しょ、翔君のお父さん・・・、内田君と桜田君は・・・・!?」
「死亡は、確認済みです。今、解剖医の方へと搬送しております。」慎太郎が答えた。優奈の父は固く目をつぶり、眉間に皺を寄せた。
「彼らは先週土曜日、式を挙げたばかりなんですよ・・・。」声を震わせながら、優奈の父は言った。
「しょ、所長・・・。」優奈の父の後ろから女性が声をかけた。
「とりあえず・・・応接室をご用意しましたので、警察の方に入ってもらいましょう?」女性が、優奈の父を支えながら慎太郎たちを案内した。
*
教室にいても気まずいからか、翔二は授業が始まるまでは屋上で寝転がっていた。
喧嘩する前は、蛍と一緒にいた屋上。二人で寝転がって空を見ていたのが物凄く昔の事のように感じていた。
翔二は丹波の言葉を思い出す。
“男が悪くなくても、先に謝っちまえば女の方だって素直に謝るだろ?こういうところ、大人の男の対応だぜ?”
「・・・俺から謝るべき?」翔二はぼそりと言った。
「何が?」顔を覗き込んできたのは、吉澤だった。
「うわ!!」翔二は驚いて起き上がった。
「ねぇ、誰に謝るの?」吉澤はそう言って翔二の胸板に手をのせて自分も寝転がった。
傍から見ると二人で寝転がっているように見える。
「考え事してるから、寄るな!!」翔二がそう言って起き上がり、吉澤から一歩離れた。
「だって、もう少しで授業始まっちゃうよ?」と、吉澤。
「さぼるから。」
「じゃあ、私もさぼる♡」吉澤はそう言って、また一歩翔二に近づいてくっついた。
「くっつくなよ・・・。」翔二はまた離れて、今度は吉澤がそれ以上近づかないように手で制した。
「何でくっついちゃいけないの!?私は翔二にくっつきたいもん!!」
「俺は別にくっつきたくない。頼むから一人にさせてくれよ。」
「どうせ土方さんでしょ?」そう言ってまた吉澤は翔二にくっつく。今度は、翔二の前に行き、翔二の首に手を回した。
「ねぇ・・・土方さんなんていいじゃん。私と付き合ってよ・・・。翔二が好きなの。」そう言って、だんだん翔二の唇に吉澤は自分の唇を近づけた。
「!!??」翔二は驚き、顔を横に背けた。危なく吉澤と口づけを交わすところだった。
「悪いけど・・・俺お前の気持ちに応えられないから!!」逃げるように翔二は立ち上がり、出入り口の方へ足を向かわせた。
「・・・土方さんの事、好きなの!?」吉澤が訊ねた。
「・・・・・・。」逃げる足を翔二はピタッと止めた。
思い浮かんだのは、蛍の笑顔だ。
「あぁ・・・、好きだ。ごめんな、吉澤。」そう言って、翔二は屋上を出て行った。
教室に戻ろうかと考えていると、話し声が聞こえた。ちらりと目をやると、優奈が誰かと電話をしているようだ。
「・・・・お父さん・・・冗談でしょ?」優奈が涙声で言っているのが聞こえた。
「おい、どうした優奈!!」思わず、優奈に声をかけた。優奈が目に涙を浮かべながら翔二の方へ顔を向けた。
「翔二・・・・。」優奈は翔二の顔を見て、一気に涙を流し始めた。
「な、なにがあったんだ・・・?」
優奈が泣くなんて珍しい。何かあったとすぐに翔二は悟った。
「この間の・・・内田さんと桜田さんの夫婦・・・。」優奈が声を震わせながら言った。
「あ、あぁ・・・、結婚式の夫婦だよな。その人たちがどうした?」
「殺されたって。」
「え?」
「・・・誰かに・・・毒で殺されたって・・・。」
「何だって!?」翔二は詳しく訊こうとしたが、優奈は動揺している。父に電話で聞くのが早いと思い、電話をしたが出ない。
「これから翔二のお父さんが、うちのお父さんの職場に話を聞きに行くみたい・・・。だから、多分今聞いてもまだ何も・・・。」
「そ、そっか・・・。分かった。とりあえず、教室に戻ろうぜ。何か飲む?」
「・・・大丈夫。それに、担当刑事が翔二のお父さんなら大丈夫・・・。信じてるもん。必ず犯人を捕まえてくれるって。」優奈は大きく息を吸って、吐いた。涙を止めさせて、顔を上げた。
(どんだけ俺の親父、信頼されているんだろう・・・・。それにしても、あの夫婦が・・・?人に恨まれたりされそうにない、優しそうな人たちだったのに・・・。)
先程の吉澤とのやり取りを忘れ、すぐに翔二の頭は事件の事でいっぱいになった。
一応、ニュースになっていないか、一通りインターネットで調べてみた。出てきたニュースは、“座間市で新婚夫婦が殺害される。”という見出しのニュースがあったので、それを開いてみたが、被害者の名前と死因が簡単に書かれているだけだった。
「これか!?」くるりと後ろを振り向いて、翔二は優奈に記事を見せる。
「こ、これかも・・・。」優奈がうなずいた。
内容はこう書いてある。
“神奈川県座間市で三十代の夫婦が毒殺された。
近隣住民から“変な臭いがする”という、一一〇番通報が六月十六日、午前七時頃にあり、近くにいた交番巡査が駆けつけたところ、夫婦の遺体が発見されたとの事。
被害者は内田正平さん(31)、妻の内田彩さん(30)。
死亡原因はまだはっきりとされていないが、部屋中にアーモンド臭がしていた事から、青酸カリによる毒殺と考えられているとの事。“
と、記載されていた。
(あ、アーモンド臭・・・?青酸カリって・・・。親父に色々聞きたい・・・!!)翔二はとりあえず、その記事を保存した。と、その瞬間にチャイムが鳴った。
「行けるか?」翔二が優奈に声をかける。
「うん。」
二人は小走りで教室に向かった。
*
被害者夫婦の勤め先である会社、“チェリー・ブロッサム”で、優奈の父を始めとする聞き込み捜査が開始された。
まずは、事務員の鈴木真帆。彼女は高校、大学と桜田彩と一緒だったという。
「私と彩は、高校から仲が良かったです。」鈴木は、高校時代からの自分と桜田の関係を話した。
桜田は今と昔変わることなく、フレンドリーで優しい性格の持ち主だという。そんなところに内田は惹かれたのではないかとの事。内田と桜田はこの職場で出会い、結婚をつい最近したとの事だ。
チェリー・ブロッサムに入社した理由は、お互い、ここの化粧品を高校時代から使っていたとの事。この化粧品が好きだから好きな化粧品を扱っている会社で働きたいと思って、入社したという。
鈴木は涙で目を腫らし、声をしゃくりあげながらその事を説明した。
「あなたと桜田さんは本当に仲の良いご友人だったんですね・・・。」と、慎太郎。
「はい、多分四十、五十になっても連絡を取り合える仲だと思っていました・・・。」鈴木が言った。
「ちなみに・・・この会社の人たち以外で桜田さんや内田さんを知っている人はいらっしゃいますか?」続いて、千田が訊いた。
「この会社以外・・・ですと・・・、あの、内田君は学生時代は分からないのですが、彩でしたら・・・高校時代の友達何人か連絡とっている人いるので、彼女たちの連絡先でしたらお答えできますが・・・。」
「構いません。ご協力ありがとうございます。」慎太郎が頭を下げる。
「あの・・・何故、友人たちを・・・?」鈴木は質問した。
「事件に関する事が分かるかもしれない人たちとして、まず被害者を知っているご家族やご友人を当たろうと思っております。
その人たちの証言で犯人逮捕につながるんですよ。」千田が答えた。
「絶対・・・絶対犯人を捕まえてください・・・!!許せない・・・、彩や・・・内田君をこんな目に遭わせた犯人なんて・・・!!」鈴木が言った。
「あ、ごめんなさい・・・感情的になってしまって・・・。」ふと、すぐに我に返ったのか、声のトーンを鈴木は下げた。
「・・・構いませんよ。ご協力ありがとうございます・・・。」
その他の従業員の話を聞いたが、大抵ほぼ全員は死亡推定時刻の時間は家にいたという。ほとんど家族がいる人たちで、アリバイが成立しているが、一人暮らしである鈴木と、工場の従業員、渡辺健太がアリバイがない状態になる。
聞き込みが終わり、優奈の父と鈴木がビルの玄関まで見送りに来てくれた。
「翔君のお父さん・・・桜田君も内田君も本当に優秀な従業員だったんです。
必ず、犯人を見つけてください。信頼していますから。」優奈の父が頭を下げて言った。
「えぇ。必ず。」慎太郎は頷く。そして、目を鈴木に向けた。
「一つ、いいでしょうか?」
「・・はい?」鈴木が慎太郎に顔を向けた。
「鈴木さんは桜田さんと高校時代からの友人でしたね。こんな事聞くのは不躾ですが、桜田さんは誰かに恨まれたりなどされていませんでしたか?
あぁ、もちろん皆さんの話を聞いて桜田さんはとてもやさしい女性である事は分かったのですが念の為聞いておこうと思いまして。」
鈴木は、慎太郎の質問に目を上に向け思い出そうとしたが、すぐに首を横に振った。
「私が知っている彩は、心優しい女性でした。人に恨まれるような事なんてしていませんね。」
「そうでしたか。どうもありがとうございました。」慎太郎は、優奈の父と鈴木に頭を下げてチェリー・ブロッサムを出て行った。
鈴木からは何人か桜田の高校時代の友人の連絡先を教えて貰う事が出来た。もちろん、鈴木は先にラインでその友人たちに話をつけていた。
やはり、鈴木の友人たちも少しずつインターネットのニュースなどで知ったらしく、同じ職場の鈴木に友人たちから連絡がきたりしていたようだ。
あと、内田については内田の実家に行き、学生時代の友人たちに虱潰しに内田正平がどんな人間だったか、人に恨まれるような人物だったか聞くしかないと思った。
鈴木が何人かに連絡をしてくれたおかげで、鈴木含む桜田の高校時代に仲が良かったという、女性二人の連絡先を聞くことが出来た。
「ありがとうございます。これ、私の名刺ですが、何か思い出されましたらこちらにご連絡ください。」そう言って、慎太郎は名刺を他の従業員分も含めて数枚鈴木に渡した。
「そうだ、石川さんも含めてもう一つ・・・宜しいでしょうか?」と、また慎太郎。
「この女性・・・死体の写真で申し訳ないのですがご存じですか?」
慎太郎は、優奈の父と鈴木に先日鳩とともに毒殺された“ハトコさん”の死体写真を見せた。
「いえ・・・、私は・・・。鈴木君、知っているかい?」優奈の父が答える。
「いえ、私も知りません。」鈴木も答えた。
「そうでしたか、お時間頂きありがとうございます。」そう言って慎太郎たちはチェリー・ブロッサムを出て行った。
「いかがいたしますか、警部。」丹波が訊いた。
「うん、とりあえず鈴木さんから聞いた友人二人・・・岩野愛さんと藤田美雪さんに話を聞こうか。」
「はい。分かりました。」
二人の勤め先は、先程鈴木が教えてくれた。まずは、二人の勤め先に連絡をしてアポイントを取らなければならない。
丹波が携帯を取り、二人の勤め先に連絡した。
*
「殺された!?あの夫婦が!?」
昼休みに翔二と優奈から内田正平と桜田彩が殺された話を聞いた寮生たちは驚いていた。
「ま、マジかよ・・・!?何で・・・!?」拓也が言った。
「マジだよ。これ、一部しか書かれてないけどもうネットニュースにも載っている。」そう言って、翔二はニュースを寮生たちに見せる。
寮生達はニュースを読んで愕然とした。あの幸せそうな夫婦が何故・・・と。
「おじさんたちが担当になったの?」和也が訊ねた。
「多分な。全然電話出てくれねぇから分かんねぇけど。」
「毒殺って・・・この間の鳩が殺された毒と同じなのかな?」と、連司。
それも訊きたいのだが、父に連絡がつかないので、翔二は首を横に振り、“分からない”と答えた。
翔二はちらりと蛍を見るが、蛍は拓也と美由の間に挟まれて無反応。こういう時、蛍は知恵を出してくれるのだが・・・。
それを見かねた連司が翔二にこっそり耳打ちをする。
「ねぇ、いい加減仲直りしたら?」
「しない。」翔二はぷいっとそっぽを向く。そんな翔二を見て、連司はため息をついた。
「多分千田さんは親父と一緒だから聞けねぇなぁ・・・。鬼束さんにでも聞いてみるとするか。」そう言って、翔二は鬼束にラインを送った。
すると、すぐにとまではいかないが、割と早めに返信をくれた。
『私が翔二殿にお話をするには、まだ集めたものが少ない気がします・・・。
只今、警部たちがネタを集めに行かれておりますので現時点では私は翔二殿のお役に立てないかもしれません・・・。
私が翔二殿にお話しできることと言えば、そうそう。確か今回殺された夫婦に使われている毒は以前鳩とホームレスの女性が殺されて使われた毒物と同じ、“青酸カリ”でしたよ。
警部たちは偶然か、それとも同じ犯人の仕業なのかも含めて捜査されております。』と、返信が来た。
(いい情報!!)翔二は鬼束からのラインを見て、小さくガッツポーズをする。
ちょっと調子に乗ることになるが、鬼束に更に詳しく訊いてみようと試みた。
『他に何か分かった事はない?』
鬼束も仕事中だろうから、すぐに既読にはならなかった。早くて二十分後に既読になり、返信が来た。
『そうですね・・・あ、現場には香水があって、青酸カリの臭いと混ざった感じで現場にありました。
誰かからの贈り物かと思うのですが・・・。
写真は見せる事は出来ないのですが、香水のメーカーと特徴なら伝えられますよ。
メーカー名は“ハニイ”というメーカーの香水で、若者に人気の甘い匂いが特徴の香水でした。
多分、翔二殿の年代の若者にも人気の商品のようですよ。
警部から連絡が来たのですが、マル害の勤め先の聞き込みが終わり、これから高校時代の友人にも話を聞きに行く予定のようです。その後に、その香水会社の“ハニイ”という会社に聞き込みに行く予定だそうですよ。』
鬼束のラインを見て、翔二はすぐに“香水会社ハニイ”と携帯で検索をかけた。
そこで検索がヒットしたのは“株式会社ハニイ”という香水会社だった。
被害者が勤めている横浜市と住んでいる座間市、そして川崎市に神奈川県では店舗があるようだ。
一番近いのは川崎なのだが・・・やっぱり、その香水を買ったという店舗に行くのがいいよなと、思った。
思い切って、鬼束にどこの店舗で買われた香水なのか訊いてみたら、さすが鬼束。優しかった。
香水の種類が載っている小さなチラシにピンクのマーカーで印をつけられているのを見つけたらしい。場所は横浜市で購入されたようだった。
*
「突然お二人の勤め先に連絡をしてしまい、申し訳ございません。」まず、慎太郎は謝罪をした。
急に警察から勤め先に連絡が来て、驚くのも無理はない。
電話をした丹波も頭を下げた。
「いえ・・・電話が来た事よりも、彩が亡くなったことが信じられなくて・・・。」
そう話したのは、鈴木から教えて貰った桜田彩の高校時代の友人、岩野愛と藤田美雪だった。
「それに、電話をしてくれた番号が私たち直通の番号だったので、全然気にしないでください。」藤田が言った。
二人の勤め先は、互いに違う場所だが場所は近いらしい。何度かランチなどを一緒にしているという。
「早速質問させて頂きますが、桜田彩さんと内田正平さんは最近、結婚式を挙げたばかりだとか。お二人に変わったところはありませんでしたか?」慎太郎が質問した。
二人は眉間に皺を寄せてから互いを見合った。
「結婚式自体は本当に二人、幸せそうでしたけど・・・。彩は何故か・・・理紗子を招待してたよね?
仲・・・あまり良くなかったから・・・てっきり招待しないのだとばかり思っていたから。」と、藤田。
「あぁ!!そうだね!!でも、彩は悪い子じゃないし・・・昔の事とか関係なしに呼んだのかもね?」と、岩野。
「理紗子さんとは?」千田が質問した。
藤田が、千田の質問に答えるように昔撮ったプリクラだろう。それを見せて“木村理紗子”を教えた。
「木村理紗子です。鈴木真帆とさっき会ったと思うんですけど、真帆と彩とはあまり仲が良くなかったんです。」藤田が説明する。
「なんでも・・・高校時代、理紗子が付き合っていた彼氏が、彩に惚れて奪ったとかなんとか・・・。
彩の友達の真帆は事実知ってて、その彼氏が勝手に彩に惚れただけみたいなんだけど・・・そういうのもあって、高校三年間ずっと仲違いしてましたよ。
だから、高校を卒業してから約十年?結婚式に理紗子を招待した彩に少し驚いています。」と、藤田が説明した。
「鈴木さんと桜田さんと、この木村さんが高校時代揉めてたりして、あまり仲が良くなかったんですね?」丹波が訊いた。
「そうです・・・。理紗子は今、香水会社に勤めているんですけど。
確か・・・“ハニイ”っていう香水会社。」と、藤田。
香水会社の名前を聞いて、慎太郎たちははっとし、顔を見合わせた。
「その会社のどの支店に勤められていますかね?」慎太郎が質問する。
「えっと、確か・・・横浜じゃなかった?」岩野が答えた。それに対して、藤田も“うん、そうだよ”と頷いた。
香水を送ったのは、木村理紗子だろう。桜田と内田の家には横浜支店の香水会社の紙袋などがあったからだ。
「この木村さんも桜田さんたちの結婚式にいらしていたんですね?」と、慎太郎が質問すると、二人は頷く。
慎太郎たちは、この香水会社の店舗に行った後は、木村にも話を聞いた方がいいと考えた。
「高校時代に・・・言い方悪いですけど男を盗られたと言って仲違いをしていた人間をよく自分の結婚式に招待しますね。
俺が知っている女子たちは絶対にそんな事しませんよ。」車に乗った後、丹波が言った。
「まぁ、高校時代と言っても桜田さんたちにしてみれば、十年以上前の事。三十代になったんだし、そろそろ大人になろうと許そうとか考えたのではないのかな?
本当、十代ってしょうもない事で喧嘩するからね・・・。
うちの息子も・・・。」と、慎太郎。
「仲直りしたんですかね?翔二君と蛍ちゃん。」千田が心配そうに言った。
「うちの息子の性格上、まだ仲直りしていないな・・・。」慎太郎がため息交じりに言う。
(俺の助言、無視したな息子め・・・。)と、丹波は心の中で思った。
*
放課後。翔二は、拓也と連司、それから和也に声をかけた。
「この後・・・暇?」
「俺は暇だよ。」と、連司。
「俺も!!」と、拓也。
「僕も大丈夫だよ。」と、和也が答えた。
「ちょっとついてきてほしいんだけど。」
「いいよ!!」
翔二たち男子は、放課後教室を出て駅の方へと向かって行った。
「どこ行くんだろうね?蛍今日は?」教室の窓から翔二たちの行動を見ながら優奈が言った。
「バイト・・・入れちゃった。」蛍が答える。
「あ、私もだ。」と、美由。
「私も。」続いて春那も言った。
「私もです。じゃあ、途中まで一緒に帰って解散しよう。」と、優奈が言って、女子四人も学校を出た。
「今日さ、吉澤・・・翔二に振られたよ。」優奈が言った。
「・・・え?」蛍が反応した。
「告ってきたみたい。で、翔二は他に好きな子がいるからって振ったって。」
優奈の言葉に美由も春那も蛍の方を見てにこりと笑う。
「翔君がいったの・・・?」蛍が訊いた。
「いんや、トイレで吉澤が泣きながら酒井とかに言ってたよ。」
優奈がそう言うと、蛍はその後何も言わずに黙る。
美由と春那はこれで、翔二が近々蛍に告白してくれればいいのにと思っている。
「だから・・・蛍は今はちょっと気をつけなね。」
「え?」優奈の言葉に蛍はきょとんとする。
「吉澤があんたにあたるかもしれないし。
今まで何度か絡まれたんじゃないの?だから、翔二ともギクシャクしちゃったんじゃない?」
優奈の言葉に蛍はドキリとする。蛍は黙って頷いた。
「うちらが一緒にいる時は、吉澤たちも優奈が怖いから近寄らないかもしれないけど、これからバイトで一人でしょ?そういう時だね、気をつけなきゃいけないの・・・。」と、春那。
「おい、春那。私が怖いってどういう事よ?」優奈が突っ込む。
「蛍、バイト何時に終わるの?」美由が訊ねた。
「九時に終わるよ。」
「じゃあ、私もコンビニのバイト九時に終わるから途中で待ち合わせして一緒に帰ろうか。」美由が言った。
「あ、ありがとう・・・美由ちゃん。」蛍はほっとした顔をする。
「宜しく、美由。」と、優奈。
「うん、じゃあ後で。」
ここで、美由と蛍は同じ方向で、春那と優奈が別の方向にて別れた。
「吉澤って何か地味そうな女子を馬鹿にする傾向あるからさ、負けんなよ?
あんたのことは地味だとはいってないけど、海堂があの外見じゃん?海堂の外見と比べると蛍は清楚系だからさ。気に食わないんだろうね。」美由が言った。
「そうだと思う・・・。前にあの人たち私が聞こえるような声で言ってた。私よりも吉澤さんの方が翔君の隣にいるのが合っているって。」
「自画自賛ってところね。」美由が鼻で笑った。
「でも私・・・、嫌だよ・・・。あの人に翔君の隣奪われたくないよ・・・。」蛍が消え入りそうな声で言った。その言葉に美由がにこりと笑う。
そして、蛍の頭をポンと撫でた。
「大丈夫よ。海堂は吉澤を振ったっていうし。それに、言ったでしょ?うちらはあんたの味方よ。」そう言って、美由は蛍に笑顔で言った。
「バイト、早く行こうか!!」
「・・・うん。ありがとう、美由ちゃん。」
美由や春那、優奈たちのおかげで蛍は何とか笑顔を取り戻してきた。
一方、翔二たちは横浜にある香水店に到着した。実際に自分たちはあまり香水を使わない為、色々な種類の香水がある事に戸惑っている。
「何かお探しですか?」店員の女性に声をかけられた。
「あ・・・いや・・・。」翔二がしどろもどろになる。
顔を上げて店員を見ると、翔二は見たことがある顔だと思って目を見開く。
「実はですね、この人彼女と喧嘩してて。仲直りしようと思ってプレゼントを探しているんです。」連司が店員に説明をした。
「お、おい!!お前今なんて・・・!!」翔二が連司に怒ろうとする。すると、連司はその言葉を遮るように翔二に言う。
「そういう事にしときなって。あんまり女の子を泣かすと、蛍ちゃん俺が奪っちゃうよ?」不敵な笑みで連司が言った為、翔二は口を紡いだ。
「あらあら・・・。」店員の女性がクスリと笑った。その瞬間に、翔二は膝をカックンされた。
「ぎにゃ!!」思わず変な声を出した。
「な、なんだよ・・・。」振り向くと、そこには父達がいた。膝カックンをしてきたのは、丹波だった。
「あ、翔パパ!!直兄!!」拓也が嬉しそうな顔をして慎太郎たちに声をかける。
慎太郎は笑顔で拓也に応える。そして、連司の方に肩をポンとして耳元でささやく。
「ありがとうね、連司君。もう少しこのバカ息子の面倒見ててくれるかい?」
「・・・うん。そのつもり。」と、連司。
「・・・ありがとう。奴の事は絶対に捕まえるからね。」慎太郎が真剣な目で連司に言った。
その目に連司はハッとし、一瞬硬直する。
(翔パパ・・・覚えてくれているんだ・・・。)
連司と翔二たちを横切り、慎太郎達は女性店員の元へ向かった。
「・・・・木村・・・理紗子さんですね?」慎太郎が女性に質問する。
「え・・・えぇ・・・。そうですけど・・・。」木村が答えた。
その名前に翔二はハッとした。
(そうか・・・あの人・・・内田夫妻の結婚式に来てた人だ!!)
*
「神奈川県警、捜査一課の海堂と申します。
昨夜午後十時から十一時半の間に内田正平さんと内田彩さん・・・旧姓、桜田彩さんが亡くなられた件はご存じですか?」慎太郎が訊ねた。
「・・・え・・・!?」木村は驚いた顔をした。
「ご存じではなかったようですね・・・。無理もありません。昨日あったばかりでニュースではネットニュースくらいしか取り上げられていないようですから。」
「え・・・・桜田さんが・・・死んだ!?しかも・・・旦那さんもですか・・・!?な、何故・・・!?」木村は声を震わせていた。
あまり仲良くなさそうに見えていたから、こんなに取り乱す木村の姿を見て、翔二は少し驚いた。
でも、一応元クラスメイトだし驚くかとあえて思い直した。
自分でも嫌いなクラスメイト、芹沢が死んだら一応驚く。と、勝手に納得した。
「あの・・・今業務中ですよね?もし宜しければ待っていますので、業務が終わる頃にまたお話を伺いにくるという形でもいいですけど・・・。」慎太郎が気を遣ったのか、木村に言った。
木村は間をおいて、上司に相談して来ると言って一回その場を離れた。
数分後に戻ってきて、十七時半が定時なのでその時間以降なら大丈夫との事。
慎太郎や翔二は時計を見た。後、三十分だ。
「それでは、またその時間に伺いますね。」慎太郎たちが頭を下げて、香水店を出て行った。
「・・・・で?」一緒に出てきた翔二たちに慎太郎が声をかける。
「お前は何してんの?」
「べ、別に・・・。」
「蛍ちゃんに仲直りする香水は買えたのか?」
慎太郎の唐突な質問に翔二は驚きを隠せないでいた。
(聞かれてた!!)
「もう一回戻ろうよ~、何も買わずに出て行って、あの店員さん探してるかもよ?」連司がそう言って翔二を香水店に戻そうとする。
“行こう行こう!!”と、拓也や和也も一緒に香水店に戻ろうとする。
「さて、俺らはその辺の喫茶店でお茶でもしてるかね?
翔二、三十分以内に買って戻ってきたら、そこの喫茶店にいるから飲み物ぐらいなら奢ってやるぞ!!」慎太郎が言った。
「マジ!?」翔二が目を輝かせる。
「買ったらな!!拓也君、カズ君、連司君、宜しくね!!」
「ラジャ!!」拓也と連司が返事をした。和也も笑顔で手を振った。
そして、四人は香水店に戻っていった。
香水店に戻ると、商品の棚の近くで木村が商品の整理などをしていたところだった。
少し、ぼうっとしているように感じた。先程、父から桜田彩と内田正平が殺された事を聞いて、ショックから立ち直っていないように見えた。
「お姉さん!!」連司が声をかける。木村は連司の声にハッとして顔を上げた。
「さっきの香水の件、どんな香水がいいですか?相手の女の子は俺達と同じ高校一年生なんですけど。」
「そうなんですね、どんな女性ですか?」木村が質問する。木村が質問した後、寮生たちは翔二をじっと見る。
「お、大人しくて・・・控えめな子です・・・。」翔二が答えると、寮生たちが笑顔になる。
「そうなんですね・・ですと・・・こちらとかいかがですか?」そう言って木村が紹介したのは椿の花がパッケージになっている香水だった。
「椿の花に蜂蜜をトレンドした香水です。知っていますか?椿の花言葉って“控えめな愛”なんですよ。
彼女さんにぴったりの香水だと思いませんか?」そう言って、木村が香水を翔二に差し出した。
ピンク色のビンに入っている香水を翔二はまじまじと見た。その後、木村が紙にその香水を吹きかけ、翔二たちに香水の匂いを嗅がせた。
「あぁ~いい匂い!!」連司が言った。
「うん、蛍にぴったりな香水じゃん!!これにしなよ!!」と、拓也も絶賛した。
「・・・・じゃ、じゃあ・・・これください・・・。」翔二がそう言って、一回香水を木村に返す。
「彼女さんと早く仲直りできるといいですね・・・。
仲直り出来るなら・・、早めがいいですよ・・・。私みたいに・・・後悔しないように・・・。」木村が苦しそうな顔をして翔二に言った。
「・・・あの・・・俺ら・・・桜田さんたちの結婚式にいた者なんです・・・!!
後で、親父たちが待っている喫茶店に案内します・・・!!
絶対に親父たちが桜田さんを殺した犯人、捕まえますから・・・!!俺の親父、神奈川県警一の刑事なんです!!犯罪を犯した人間は例え何年かけても捕まえるから・・・!!」翔二が言った。
翔二の言葉に木村は泣きそうな顔で笑顔を翔二に見せた。
「・・・ありがとう・・・。」
*
十七時四十分くらいになった。そろそろ行こうかと慎太郎たちは腰を上げたら、声をかけられた。
「親父!!」
息子の声に振り向くと、翔二たちが木村理紗子と一緒に喫茶店に入ってくるのが見えた。
「・・・あ?」慎太郎たちがぽかんとした。
「えっと・・・、香水を買った後、実は翔が翔パパの息子だって暴露して、一緒にこの喫茶店に来るという事になったんです。」と、連司が説明。
「あの、あくまで翔は木村さんをこの喫茶店に連れてきただけで、事件の事とか聞いてませんよ。」和也がフォローして慎太郎に説明する。
「本当です・・・。桜田さんの結婚式にこの子たちがいて、それで・・・・。」木村も説明をした。
慎太郎は一瞬だけ、翔二をジロリと睨んでから、木村に席に着くように言った。
翔二たちにも好きな飲み物を頼むように言い、木村にも飲み物を聞いてから本題に入った。
が、その前に木村の方から質問をしてきた。
「あ、あの・・・桜田さんが亡くなったって・・・い、いつですか・・・?
わ、私昨日彼女とお茶をしたんです。」
木村の言葉に慎太郎たちは目を見合わせた。
「桜田さんと内田さんは昨夜何者かに毒物を紅茶に混入されて殺害されました。
昨夜の十時から十一時半頃が死亡推定時刻となっております。」慎太郎が答える。
「桜田さんとお茶をしたと言うのは、何時の事ですか?」続いて、千田が質問した。
「き、昨日夜六時半頃です。確か、その頃小田急線が人身事故で電車が遅れててお互いの家に帰るのが遅くなりそうだからと、横浜線乗り換える町田駅で待ち合わせて七時半くらいまでお茶をしていました。
それで、あの・・・結婚祝いとして私のこの職場の香水を彼女にあげたんです。」木村が答える。
香水と聞いて、慎太郎は香水の写真を木村に見せた。
「香水とは・・・こちらの香水ですか?」
「そ、そうです・・・。」木村が頷く。
「あの・・・失礼は承知で質問させて頂きます。あなたの高校時代の方にお話を伺ったんですが・・・あなたと桜田さんはあまり仲が宜しくなかったと伺ったんですが・・・。
まぁ、高校時代から十年以上経っていますし、お互い大人になって思うところがあって和解したかと思うのですが、木村さんは桜田さんとは連絡を取り合う仲なんですか?」丹波が質問する。
翔二は耳を欹てながらノートをひたすら取った。
その後、木村が注文したコーヒーが来て、木村は一口コーヒーを飲んで口を開いた。
「単純な事ですよ・・・。刑事さんの言う通り、三十にもなったのに昔の・・・学生時代の色恋のいざこざをいつまでも引きずっているなんてばかばかしいでしょ?
それを思わせてくれたのが、彼女からの結婚式の招待状でした。
一応、大人にお互いなったわけですから・・・お祝いくらいしないとと・・・ちょうど私は香水会社で働いているし、女性に人気のこの香水を結婚祝いにどうかなと思って、昨日会って渡したんです。」木村が答えた。
慎太郎たちが相槌を打ちながらメモを取った。
「どうして結婚式の日に渡さなかったんですか?」
突如、慎太郎たちの後ろから声が聞こえる。
「え?」木村が顔を上げた。質問してきたのは翔二だ。
「まぁ、結婚式の日もちょっとつっけんどんな感じはしてたけど・・・、前から結婚式の招待状を貰っていたのなら、とっくのとうにその香水準備していたのかなって思って。
そしたら、結婚式の日にその香水を結婚祝いとして渡せば良かったのかなって・・・。」翔二が言った。
翔二の言葉に木村は一瞬黙った。慎太郎は、翔二の質問も重要だと思ったのか、口出しはせず、木村の回答を待った。
「そ、それは・・・その・・・忘れてしまって・・・。」木村が答える。
「忘れたとは・・・香水を持ってくるのを忘れたという事ですか?」丹波が訊いた。
「そ、そういう事になります・・・。」
木村の目が泳いでいるのが見て分かった。何かしら、嘘を吐いているように感じとった。
丹波は慎太郎に更に何か突っ込みを入れるか目で訊いた。慎太郎は首を横に振り、丹波に何も言わないように合図を送る。
「分かりました・・・最後に一つだけ・・・。」そう言って慎太郎は“ハトコさん”の写真を取り出す。
「死体の写真で申し訳ないのですが、この女性はご存じでしょうか?」
今まで話を訊いた人間全員と同じようにハトコさんの事を訊いた。
「い、いえ・・・。知らないです・・・。」木村は首を横に振る。
「そうでしたか・・・。お時間取らせてしまい、申し訳ございません。ご協力、ありがとうございます。」慎太郎が頭を下げた。
木村はコーヒーを飲みほした後、席を立ちあがった。すると、慎太郎がまた一言。
「あぁ、もう一つだけ・・・宜しいでしょうか?申し訳ない。」
慎太郎の言葉に、木村は振り向き、翔二たちも慎太郎をじっと見た。
「あなたにとって・・・桜田彩さんとは・・・どういう存在でしたか?簡単で構いません。」
意外な慎太郎の質問に翔二や、丹波も少し驚いた。
木村は、少し戸惑った顔をしたが、一回深呼吸して、口を開いた。
「・・・憧れ・・・でした・・・。」木村が答える。
「・・・なるほど。どうもありがとう。また、事件に関して、聞きに来ることがあるかもしれませんが、その時はご協力ください。」そう言って、慎太郎は頭を下げた。
それに続いて、丹波や千田、そして翔二たちも木村に頭を下げた。木村も頭を下げ返して、喫茶店を出て行った。
翔二はちらりと父を見る。
「親父、何でそんな事訊いたの?」
「事件の確信をつくためだ。」
慎太郎の言葉に翔二はきょとんとした。言っている事がちんぷんかんぷんだった。
「さ、俺達も出ようか。丹波君、翔二たちの飲み物代も悪いが経費で出してくれるようにしてもらってもいい?」
「あ、了解です・・・。」丹波がそう言って、立ち上がり伝票を翔二たちの分も持ってレジの方へ向かった。
「直兄、ごっち~♩」拓也が丹波にお礼を言うと、他の寮生たちもお礼を言った。
丹波は手を振って返事をする。
「じゃあな、早く蛍ちゃんと仲直りしろよ、翔二。またね、拓也君、連司君、カズ君。」そう言って、慎太郎たちは喫茶店を出た。
「ありがとう~翔パパ~!!」拓也たちは慎太郎たちに手を振った。
「さて、これからどうする?」連司が翔二に訊く。
「とりあえず・・・俺はノートをまとめる・・・。」そう言って、さっき木村から聞いたことを翔二はノートにまとめだした。
「学生時代仲が悪かったのに大人になったら仲直りなんて出来るんだね。
じゃあ、今仲が悪い翔と芹沢とかも大人になったら仲直りしてるのかな?」連司が言った。
「はぁ?俺、芹沢みたいなクズと仲良くする気さらさらないな!!」翔二はきっぱりと言った。
「俺も・・・セリは嫌だなぁ・・・。」拓也も言った。
翔二も拓也も同じクラスで合わない生徒とはあまり関わりあいたくないタイプだった。
だが人間年を重ねるにつれて、この先はどうなるのか分からない。
現に、仲が悪かった二人が結婚を機に仲直りしようとして、こんな事件が起こった。
自分の事はさておき、きっと木村はこの結婚式を機に本当に桜田と仲直りをしたかったのかもしれない。
そう思うと、翔二はやるせない思いでいっぱいになった。
第32章に続く。




