↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の導きと私の何度目かの人生。  作者: 可愛い
第二部 第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/5

小さな波紋

よろしくお願いいたします

「ねえ、ユッタを憶えてる?」

女性の神職が兄に向って尋ねた言葉


数瞬の間、私は彼女を睨みつけていたかもしれない

慌てて自分を取り戻し表情を取り繕う


近くにいたラデクさんは・・・私を見ていない

周囲を見渡しても大人たちの注目は兄に向っている


皆が兄の返事を待っている


そして兄が困ったように微笑むと

「アンナ、子供を困らせるなよ」とラデクさんの声が飛ぶ


「でも知りたいでしょ?」

「外見といいスキルといい加護といい、気になるじゃない」


「まあ、そうなんだけどな」

ラデクさんが頭を掻きながら答える


「聖女様からの話は憶えてるでしょ?」

「いや、でも我々が今聞くことではないだろ」


「いずれ改めて宗教都市から使いが来るだろうしさ」

「分かってるわ」


「でも、私は聞かなかったことを後悔したくないの」

アンナと呼ばれた女性は小さな声で呟く


「ああ、そうだったな・・・・」

少しの間を置いてラデクさんも小声で返事をしていた


「ところで、あなたもスキルと加護を得たのよね?」

と突然私に向きを変えて話しかけてくる


「おめでとう」

「・・・・・」


「でね、あなたはユッタを憶えてる?」

私は兄同様に困ったように微笑み、表情を隠すように俯く


危なかった。兄ではなく最初に質問されていたら平常心は保てなかっただろう

アンナと呼ばれる女性は俯く私の顔をしゃがみこんで下から覗き込んでくる


「おい、アンナ」アレク様の声だ

「仮にも聖女候補がしゃがみこむのは品位に欠けるのではないか?」


「あら、聖女はユッタが適任よ。あの子がなればいいわ」

目の前の女性が立ち上がりながら答える


あの女が聖女候補?何よそれ。とんだお笑い草だわ


「アンナさん、そろそろ正面へ。お付きの方が戻らないとお嘆きでしたよ」

いつ戻ってきたのかロッテ院長が話に割って入る


「すみません。いま参ります」と言って院長に近づき小声で何かを囁き合うと去っていった

「あいつは全然変わらないな」と言うアレク様


「ロッテは強くなったけどな」と返すラデクさん

「ああ」と同意するアレク様


微妙な表情を浮かべる院長が手を叩き皆の注目を集めアレク様とラデクさんにスキルを得た子の将来に関する話をするようにお願いをする


将来の話とは具体的には仕事についてだった

希望すれば領主の元で働くこともできるし神殿で見習いとして働くこともできるという


どちらを選んでも間違いなく歓迎されるとのことだった

「エーベルハルトは希望があるかい?」


アレク様が年上の男の子に声をかける

エーベルハルト・・長い名前だ、多分私たち捨てられた子ではなく預けられた子なんだろう


だとすれば攻撃系のスキルを得られたことと相まって貴族の出自で間違いないだろう

彼は私たちをチラリと見るが答えが出てこない


「まあ、焦る必要はない」アレク様が彼の肩に手をやり話しかける

「12歳の退院までに決めればよいし、庶民として自分で仕事を探してもよいんだから」


「お前たちはどうだ?」

私は兄を見る。私の向かう先は弟と同じだからだ


「僕は・・・」

「僕を必要として下さる方の元で過ごしたいです」


「なら、領主というより私の下で「おい、ちょっと待て」」

アレク様の声をラデクさんが遮る


会話を始めた二人をよそに院長が兄に質問をする

「その言い方だと私たちが決めてしまってよいと考えていいのかしら?」


「私も、私も兄と一緒なら、兄と同じ場所で過ごしたいです」

私も慌てて声を上げる


院長は私を見て微笑むと兄に向かい話しかける

「それでよいのかしら?」


「妹が望むなら、同じ場所で働ける仕事をお願いしたいです」

「分かりました」


「後ほどアレク様と騎士ラデクと話し合って結果を伝えるわね」

「「はい」」


良かった。神様ありがとうございます

私たち二人は道を違(タガ)うことなく歩み続けることが出来ます


話は終わりのようだし後は二人だけの時間になるはずだ

部屋に戻ったら将来について兄と話してみようと思っていると


「それとは別に二人に聞きたいことがあるの」

別に聞きたいこと?女性神職の質問を思い出す


「神の加護を得た理由について思い当たることは無いかしら?」

「・・・・・」違った、でも


アレク様とラデクさんも会話をやめて私たちを見ている

兄は無言だ。私が答えるしかないのだが正直に答える分けにはいかない


「・・・・・良くわからないのですが、多分・・・」

「多分?」


「礼拝堂を毎日清掃して祈りを捧げているからだと思います」

「そうですか」「その可能性はあるな」「それなら納得できるか」


三者三様に理解を示してくれてホットしたのも束の間

「俺も、俺も加護が欲しい」


「院長、お願いだから俺も明日から礼拝堂の担当にして下さい」

不躾ともいえる発言。だが心からの思いが込められているのを感じる


少し考えていた院長もその思いを感じ取ったのか了承してしまった

そして神の御前では口を慎むことを私たち三人に説いて散会となった


「明日から宜しくな」笑いながら声をかけて走り去っていく男の子

私は私たちの大事な時間を奪う人に突然声を掛けられ返す言葉が浮かばなかった

お読みいただきありがとうございました。


無断転載禁止。翻訳も禁止

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。