プロローグ 私を構成するもの
よろしくお願いいたします。
目が覚める
泣いていたようだ
たぶん前世の夢を見ていたのだろう
夢の内容は憶えていない
その必要もない
私に克明に刻まれた記憶だから
私の隣から安らかな寝息が聞こえる
隣で眠る彼を見て私は安堵する
私は・・・私は輪廻の輪に留まる存在だ
何度も転生を繰り返し数えきれない人生を送ってきた
幸せが続く人生
約束された幸せが無為に続く人生
無限とも思える私の人生で記憶に残るのはたったの数回
最初の記憶、母と過ごした人生
それと私の全てともいえる弟と関わった人生
一番幸せだったからか?
違う、つらい記憶、二度と繰り返したくない人生だ
でも失いたくない記憶
私に生きる意味を与えてくれた記憶だからだ
決して忘れてはならない記憶
忘れることのできない記憶
私という存在を繋ぎ止める記憶
私は隣で寝ている弟を見る
変わらぬ黒髪に優しい顔立ち
私を幸せにしてくれる存在
私が愛情を注ぐ存在
私は神に感謝を捧げる
私の我がままを受け入れてくれたことに対して
弟を転生させて下さったことに対して
周囲が騒がしくなってきた
もう起床の時間のようだ
部屋の扉を開けて神職が起きるように告げてくる
周囲の子供達が次々と起き始める
隣で寝ていた弟も目を覚まして朝の挨拶を私にしてくれる
私も笑顔で返事を返す
「おはよう、お兄ちゃん」
そう今日も記憶すべき幸せな一日が始まるのだった
お読みいただきありがとうございました。
無断転載禁止。翻訳も禁止。




