親父
復活!!新章始まりでーす!!!!
再会から二か月。いたって平穏な毎日は充実していた。
何よりも嬉しいのはエリシアとの生活である。あのラブレター(?)のことは少し照れていたが気に留めず今まで通り接している。しかし、ここ最近距離が小さくなった気がする。
このように平穏な日常はエリシアの再参加で始まった。
「ん?手紙?」
学生寮の入り口には部屋番号ごとに手紙ボックスが設置されている。少し茶色い羊皮紙の封筒がぴょっこりとボックスから出ている。
その封筒の差出人の名前は走り書きで「シエル」と書かれていた。急いで書いたのがうかがえる。
「父ガルド死す。敵、シグレインにあり。救援求む。」
封筒の羊皮紙には明瞭でない走り書きで書かれていた。
「え。親父?」
思わず声がこぼれた。この世界に生まれてこの方父親ガルドのことはパパか父様としか呼んだことない。零れた親父はここからの父親に対する呼びだったのかもしれない。
そう言葉を零してから一歩目はいつのまにか踏み出されていた。
前の人生、日本にいた時の記憶。親父は俺のやりたいこと将来、進路すべてに金をかけてくれていた。しかし、俺はそんな親父に感謝をしていたわけではなかった。何かいいことがあると努力による当然の結果だと思っていた。
しかし、この世界では親父との接点は少ない。
未だに脳裏にあって離れない生まれたばかりのころの記憶。母親は恍惚とした表情をしている中、父親のガルドも一見温かみのある表情を浮かべていたがそれが建前であるとわかるのは容易なものであった。
「っち。ふふ、勝手に死にやがってw!どうなるか覚悟してろよ!!」
今、初めて本物の「親父」というものに出会えた気がした。超えたいと思う存在、奪いたいと思う地位その全てが俺を奮い立たせていた。
——
手紙を手にしてからの行動は早かった。
すぐに冒険者ギルドへ行きルートレット領行の馬車を予約した。予約時刻は昼後。後は職場に顔を出すだけでいい。
いつの間にか俺は走っていた。助ける義理などなかったはずのもの。
けど今回は何か違った。俺の中を何が焚き付けたのかもしれない。たとえ魔道具師としての平穏の一生があったとしても取りに行かなければいけない何かを感じ取ったのだろう。
——
「ヴァレリウス!!聞いたか?!!お主の領土が——。」
俺はいつもの冷静さを少し欠いたレイモンドに目をやる。その目はいつもの平穏に浸った生ぬるいものではない。
「その目...。頑張ってこい。私からもできる限りのことはする。」
「そうですか。嬉しいです。じゃあ国王か王子に伝言を。「俺は魔道具師だ。」お願いします。」
そう言い残し俺はいつもの実験室に向かった。
勢い置く開けた扉の奥にはいつも通りだらだらと魔道具教本をおかしをつまみながら読むエリシアがいた。
俺に気づくと姿勢を正し、手についたお菓子の破片を近くのタオルで拭っていた。
「あ、あら。ヴァル?どうしたの?」
体裁を保とうと必死なエリシアを横に俺はデスクの上においてあった魔道具を片っ端からマジックバッグに詰めた。これもエリシアと開発したものだ。
どでかい本棚からは読みかけの本一冊、魔道具の上級教本を抜き取る。その様子にエリシアは困惑しながらも俺からただならぬ雰囲気を感じ取ったのか色々と俺に手渡してきた。
「で、どこに行くわけ?また私の前からいなくなっちゃうの?」
「お前んとこみたいな子爵家の家とは違うんだよ。」
「ど、どういう意味よ!!?」
「お前んとこはそうそう攻められなくて羨ましいよ。」
「ま、まさか。攻められたの?!!!誰に??!!!」
「その内耳にするだろうから言う。シグレイン家だ。あいつら予予うちの領地で勝手に鉱山資源を奪っては証拠を残さず逃げていたんだ。そこで士気も領地としての財政も厳しくしたうえでうちを狙ったんだ。」
「そ、そんな...。か、家族は...大丈夫なの...?」
俺はその言葉を無視した。もちろん一人死んだ。しかも領主だ。
今、領内がどうなっているか検討もつかないが、兵の士気やルナや母親のことを考えると俺が行かない選択肢など宇宙を探したってない。
「う、うそ...。」
「うそじゃない。これは現実だ。じきに知らせが届く。」
俺はエリシアから踵を返しドアへと歩み出した。
「ま、待って!!」
その一言に足が止まる。俺もどこか助けが欲しかったんだろうか。
「わ、私も!!」
「やめろ。お前じゃ——。」
「私だって!!!いつまでもヴァルに助けられてばっかりじゃだめなのよ!!」
「——。」
「だから...。私を...。」
それは一見淡白に見えた。しかし、ついこの前まで結婚したくない相手と結婚させられそうになっていた人間にとって俺は多大な精神的な柱だったんだろう。
エリシアのそんな逃がすまい、離れまいという感情が俺にもひしひしと伝わってきた。
「ーかった。分かった——。着いてこい。」
「はっ。うん!」
「そうと決まれば十分以内に身支度を済ませろ。」
「はい!!」
バカ真面目に敬礼のポーズを取ったエリシアの笑顔はキラキラと輝き、充足感に溢れていた。
——
「ルートレット領行の馬車は欠航でーす!!ルートレット領内で戦争が起きたため見送ります!!」
ギルドに着くと受付嬢複数名がホールで声を張り上げていた。
エリシアと俺は二人で旅の格好をして冒険者ギルドからの馬車の出発を待っていた頃であった。
ルートレット領内での戦争は王都までも届いておりギルドにいる群衆はどよめかずにはいられなかった。
「ヴァル。ど、どうする?」
「参ったなぁ。これじゃ——。」
「どうしたのよ?」
「飛ぼう。」
「え。飛ぶ?何を言っているの?」
「大変だと思うが風魔術でルートレット領まで飛ぶぞ。」
「えぇーーーーー!!!飛ぶの?!!!!無理無理!!私あんたみたいなバカでかい魔力持ってないのよ??!!どうやれって?!!」
「俺が供給する。」
「供給って、どうやって...。」
「このスライドガラスさ。」
取り出したのは魔力の置換を光を媒介して行えるスライドガラスだ。空中で作動することは間違いなしだ。
「あぁ——。」
こうして俺らはルートレット領へと飛び立った。
復活!!




