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いずれ公爵の男爵 〜今度の人生は努力する〜  作者: 三者凡退
幼少期編

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明日でいい

 「俺、中学受験するんだ。」

 

 そんなことを俺は小4のころに親友に言われた。

 

 「中学受験?なにそれ?」

 

 「母さんが言ってたのはたしか、中学校に入るために勉強するらしいんだよね。」

  

 「へぇー。」

 

 そんな話をして一週間後、親友は塾に通い始めた。

 

 俺はほとんど親友と過ごしていたから、ぼっちになった。

 

 親友を追うように塾に入った。

 

 お互いそこそこ勉強して小5の夏を迎えた。

 

 「俺、壮市を目指そうと思うんだ。」

 

 「それってチョー難しいとこじゃん。」

 

 それから親友の成績はもっと上がり始めた。

 

 俺もそれについていこうとある程度頑張った。

 

 そして受験当日、親友は自信に満ちた手で答案に書いていたようだった。

 

 逆に俺は受かろうという気持ちは薄かった。


 合格発表で俺と親友は受かった。親友はぶっちぎりの成績で受かったが、俺は結構ぎりぎりだった。


 しかし、俺は努力の結果だと思った。


 俺の一年目はまずまずな成績だった。親友は相変わらずだ。


 俺の成績は下がり続けていた。親友は学年の一位二位を争っていた。


 高3の夏、目の前に積まれた参考書。


 「明日でいいか。まだ間に合うしな。三か月あればやったら主席くらいとれるだろ。てか、あいつらメッセージ送っても返信ないな。まぁいいか。」


 そう言ってページをめくる。


 そして共通テスト。


 志望校の足きりに遭った。


 俺はその結果に納得できなかった。


 その時電話が鳴った。


 「おう、結果どうだった?」


 「ちょっと失敗しちゃったわ。」


 「そうなんだ。なんかごめんな。で、どうすんの?浪人するの?」


 「そうだな、今回は運が悪かっただけだったからな。来年こそは絶対行けるよ。」


 少しの間、時計の音と車の音が聞こえた。


 「確かに。まぁ頑張れよ。受かったら連絡してくれ。」


 そういって親友は電話を切った。


 「俺はやったらできるし。やんなくてもできるし。まだ本気を出してないだけだし。」

 

 後で母から聞いたがどうやら、国内トップの大学に受かって主席らしい。


 そして、次の年の共通テスト。また足きりに遭った。

 

 その次の年は両親に言われ、違う大学も受けてみた。


 その結果中堅大学に受かった。

 

 両親にはそこに行けと言われたが、もう一年やると言った


 もちろん次の年も結果は同じだった。

  

 そうして、五浪した末、中堅大学に入った。無駄な三年だった。


 大学生活はつまらなかった。優秀な俺からするとつまらないものだった。


 何もせずに三年半を過ごして就活を始めた。


 親友から電話がかかってきた。


 「聞いたよおばさんから。就活するんだって?」


 「そうだよ。五年も遅れてるがな。」


 「ははは。そうだね。僕からは頑張って。それと何か困ったことがあったら言って。職も紹介できるしさ。あ、でもいらないか。」


 「ありがとな。けど、安心しろいいとこ入るからな。それよりもお前は自分の心配をしろよ。俺がお前を超えるのも近くないからな。」


 そう言って電話を切った。


 大手企業を志望して面接やらを受けたが、ほとんど面接官の履歴書を見て苦笑い浮かべていた。


 すべての会社から蹴られた。


 「くそ。なんで。俺は優秀なのに。なぜ、あいつらはそれを気づかないんだ。」


 親友に電話して助けてもらおうとしたが負けた気がするのでやめた。


 行く当てもなかった俺は両親に相談した。


 そうして、親の伝手で中小建設会社の管理職に就いた。


 最初は彼女や結婚などと考えていったが、出会いのない職場では不可能だった。

 

 日に日に増していく腹のたるみ、増えていくシミ、冷たくなる視線。


 「こんなはずじゃなかった。今頃俺は大手企業の重役で素敵な妻とこどもがいるはずだ。おかしい。優秀でエリート街道を進んできた俺がこれはおかしい。何かの間違いだ。そうじゃなきゃこまる。」


 「わかったぞ。みんな俺の優秀さに恐れて俺をこんな感じで封じ込めてるんだ。なるほど、じゃあこの生活も悪くない。」


 「そう認知されているんだったらいずれ俺は幸せになれるな。」


 会社を55歳でリストラされた。


 行く当てもなく少ない貯金を崩してだらだら過ごしていた。


 「何かしないとな。貯金もなくなってきたしな。」

 

 「。。。まぁ明日でいいか。まだ、焦るときじゃない。」


 テレビをつける。そこに映ったのは見覚えのある顔だった。


 リポーターが尋ねる。


 「ノーベル賞受賞おめでとうございます。」


 「質問ですが、何がご自身をノーベル賞をとるまでにしたのですか?」


 「そうですね。「努力」ですかね。地道な努力が僕をここまで持ってきたんでしょうね。」


 俺は幸せそうな親友を見て理解した。


 親友は俺より努力していたのだ。対して俺は努力をしなかったんだ。


 すべて過信だった。


 うぬぼれてた。俺は特別な存在だって。


 悔しさで拳を握ろうとする。


 力が入らない。


 「あれなんでだ。」と呟こうとするが口や舌が動かない。


 何も聞こえなくなった。


 何も見えなくなった。


 あ、脳卒中だ。


 死ぬんだな。


 やだ、まだ死にたくない。


 まだ、本気を出してないのに

 

 違うな。出してないじゃない。逃げてるんだ。


 逃げ続けただけだった。


 次は、次は。


 次、なんてないよな。


 でももしあったら、逃げない。

 

 絶対に逃げない。


 意識が途切れた。




 次なんてないと思っていた。


 意識が回復した


 声が聞こえる。


 視界がぼやける。


 誰だ?


 輪郭がわからない。


 手足の感覚がおかしい。


 ー


 あぁ。そういうことか。


 やり直せるなら。


 俺は逃げない。

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