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輪廻伝記〜この世界を生きている〜  作者: 今日 虚無
獣人の国スルト編

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36 トッシュ崩壊

エリアたちがリベル(スルトの都市)で安全な避難場所を探し、ルフル・スルトがトッシュ(スルトの都市)に向かっている頃、トッシュの街では至る所から悲鳴が鳴っていた。


「おぉ~、いい感じに崩壊していってるね~、絶景絶景~」


全身を黒い何かで覆いおしゃれにフードみたいなものをつけている黒髪の少女イェリスはトッシュの街中にある高台で魔族、魔人族に街が壊され、人が殺されていく様をニヤニヤとしながら眺めていた。

街を見る感じ、トッシュにいた騎士団もそれなりに奮闘しているが戦況は断然魔族、魔人族有利の状況だ。

トッシュの市民は街の中枢や避難所に向かい騎士に助けを求める人々と街から出ようと城門に向かう人々とで大きく二分割されていた。


「あ~あ、かわいそうだな~どっちに逃げようたって結果は死ぬだけなのに、まぁみんな中枢か避難所に集まってくれた方がこっちとしては嬉しいかな~一挙に殺せるし」


と少女がつぶやきながら街を眺めていると一人の赤髪の男が逃げ行く街の人々を血しぶきを上げながら殺して回っているのが目につく。

少女はその男を見つけるや否や高台から降りてその男の元へと駆けつける。


(ちっ、クソ面白くもないが俺たちが生きるのには必要なことだしな、だれか強いやつでもいないのか? 暇すぎる)


そう思いながらも逃げ行く人々を赤い血をレーザーのように伸ばしたり剣にして斬りつけたりと様々な方法で殺しまわって死体に手をかざしている赤髪の男のアストの元にイェリスが高台から降りてくる。


「ねぇねぇどんな感じ~? 人間はたくさん殺せた~?」


「まぁな、それより作戦はうまくいきそうなのかよ? それにお前も手伝え、作戦の指揮者だからってぼ~と突っ立ってねえでよ」


「今からやろうと思ってたんだよ~、作戦の方はね~、どうしても最後の方は運も絡んでくるし、最初もなんだけど、成功するかはわかんないね~ところでオーブントはどこなの? 作戦では一緒にトッシュを崩壊させるっていう感じだったと思うんでけど……」


「そういえば見てないな」


「あ、そうだ、アストさぁ城門の方に逃げていくやつらを殺してほしんだよね~、それ以外は後で殺せるからさ、あとは建物をいっぱい壊して戦ってほしいかな~、その方が絶望感が出るでしょ?」


「わかったよ」


アストがめんどくさそうに返事をしたその時急に空が銀青色に光る粒に染まる。

その異様な空の光景に街のいたるところから悲鳴が聞こえてくる。

それもそうだろう、地上には魔族、魔人族、空には謎の銀青色に光り輝く粒、人々が絶望するには十分すぎる。

その銀青色に光る粒の中心には一人の細身の男が宙に浮かんでいた。


「おい、あそこにいるぞオーブント」


そう言いながら目を銀青色の光から隠すように手で覆いながら反対の手で指を指すアスト。


「おぉ~ほんとだね~、これは一気にこの都市を消し炭にしようっていう判断なのかな?性格によらず大胆だね~」


「そうだな、一番こういうのに向いているなあいつの魔術、それでよ~、これ俺たちも巻き込むつもりだよな?」


「巻き込むつもりはないだろうけど、そうだね~、じゃっそういうことで~」


そう言うとイェリスは黒い何かでできたフードを頭にかぶりだす。


「おい俺を守ろうとは思わねーのか?」


「え~めんどくさいな~、それくらい頑張ってよ」


そう言うとイェリスは完全に頭に黒い何かでできたフードをかぶり、頭から足まで黒い何かで覆いつくした。


「こいつに親切心というもんはねーのかよ」


そう言うとアストは魔方陣から血を出して頭の上、背中、体の正面に大きな盾を作り出す。


「『血晶(ケッショウ)』」



そのころ空中にいたオーブントはというと、無数に広がる銀青色の光の中心で手を上にあげていた。


「あーめんどくさい、めんどくさい、人間の神力(シンリョク)は取れないけど、殺すならこれが一番楽だ」


そうボソボソと呟くのは青と黒の混ざった少し長い髪で体は少し細身の男、オーブント・スティアルナだ。


「下にはアストとイェリスがいるんだったっけ? 忘れてた、まぁあの二人なら問題ないかな、あ、魔族は……まぁいっか……」


どうやらイェリスの言った通り巻き込むつもりはなかったらしい、ただ忘れていただけだった。


「じゃあいっきに壊すよ、じゃあね、流れ落ちるのは夜空に光り『光降夜(コウコウヤ)』」


手を振り下ろしそう唱えると銀青色に光り輝く粒がトッシュの街全体に降り注ぐ。



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