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25.杖職人

 杖がかけてあった部屋と違い、奥は広い部屋だった。

 長い材木が壁一面に立てかけてあり、下には木くずや小さな木片が大量に落ちていた。


 大きな台で木を削っている黒髪の男性がいた。


「バルカン。急がせてすまない」


「あとは、お前の息子にあわせて仕上げるだけだ」

 ヒュペリオンが声をかけると黒髪の男性は、顔をあげずに答えた。


「ほらバルカンさんのところに行って」


 ヒュペリオンの言葉で俺はバルカンさんの目の前に立った。


「ヘリオスです。杖をよろしくお願いします」


「俺にまかせとけ。仕上げるためには魔力の流れを見ないといけないから、この魔木の杖を握ってくれ」


 バルカンの言葉に俺は戸惑い、ヒュペリオンを見た。


「加工しているから昨日みたいに急激に魔力を吸い込むことはないから安心していいぞ。むしろ、魔木でもシェフレラでは、杖にすると魔力の吸い上げが足りない可能性が高い。バルカンに頑張ってもらったが」


 ヒュペリオンの言葉を聞いて、俺はバルカンが指さすテーブルの上の杖を握った。

 杖に魔力を吸われ、体の奥から魔力が流れこんできたが、昨日ほどではない。あまり流れている感覚がない。


 杖の先に付いている茶色の魔石が光った。


「もう離していいぞ」


 バルカンに言われて俺は杖を離した。すんなりと手から離れた。


「どうだ?」


 ヒュペリオンの問いかけにバルカンが答える。


「普段と違い、原木の特徴を残すことに気を付けたが、シェフレラじゃ吸い上げる力はこの程度だな。だから、普通の魔法使いはこの魔木を杖として使うんだしな」


「だから言ったろ」


「息子のために魔力の吸収を遮断しない杖を作ってくれとか言ってきたときは、忙しすぎてヒュペリオンは頭がおかしくなったのかと思ったぞ」


「ヘリオスは、空間の魔力をうまく使えないから、必要なんだ」


「分かった。じゃあ、魔木バーニヤナを採集してきてくれ。あれだと上級魔法使い捕獲用のネットの材料に使われるくらい魔力吸収が強いからな」


「わかった。けれど、バーニヤナは何年も見ていない。国境を侵されているからな。回収されているんだろう。しかし、何年かかっても必ず採集してくる」


「それまで、シェフレラや他の手に入りやすい魔木で息子用の杖をつくろう。とりあえず、この杖を今の仮組みから仕上げる。明日には仕上げ塗りも乾くから取りに来てくれ」


「分かった。俺が取りに来る」


「ヒュペリオンおじさん。私が頼んだものもバルカンさんに作ってもらえそうですか?」


「大丈夫です。アキレア王女。バルカンは快く引き受けてくれました」


「アキレア王女?ちゃんと紹介しろ!ヒュペリオン」


 バルカンが慌てて跪き、王女に挨拶をする。


「すいません。挨拶が遅れました。そんなにかしこまらないでください。バルカンさん、よろしくお願いしますね。私が来ても挨拶はいいですから、立ってください。作業の手を止めさせたら申し訳ないですから」


「アキレア王女は何を頼んだんですか?」

 セレネが聞く。


「出来上がるまでの秘密です」

 アキレア王女が嬉しそうだ。


「ただ、加工や編み上げるのに時間がかかります。春までには間に合わせますので」


「よく魔導士たちが許してくれましたね」

 ヒュペリオンがセレネを向き言う。


「キロンおじいさまにどれだけ必要か、私、説明しましたもの。出来上がるのが楽しみです」


「教えてください。アキレア王女」

 気になって俺は聞いた。


「春までのお楽しみです」


 嬉しそうに笑うアキレア王女の緑の髪がゆれていた。


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