23.狩りの後
家に戻り、まずは、皆で食事にした。
リープスとルプスの肉を外で焼き、たらふく食べた。
「本当は、冬越し用に干し肉にしないといけないんだが、今日は特別だ!」
そう言ってヒュペリオンは、次々と魔法で肉を焼いてくれて、レアさんもいっしょに食べた。
「特別なら、ヒュペリオン、あのタレも出してあげたら」
「このタレは作るの大変だし、少ししか無いんだぞ。少し辛いし子ども達には無理だろ」
腰元に下げた小さな筒を見せるように振り、また元に戻す。
「わからないじゃない。ヘリオスは味わったことある?」
「ないよ。食べてみたい」
塩も貴重だから肉も薄味で食べている。タレがあるのなら是非とも食べてみたい。
「私も食べてみたい」
セレネもヒュペリオンにねだる。
ディアントスは、遠慮しているようで黙っているが、リアンサスは自分も食べたいとヒュペリオンに向かう。
「私も食べてみたいです。ヒュペリオン」
アキレア王女も言う。
苦笑いしたヒュペリオンは、木の器にタレを少したらす。
「少しずつだぞ」
俺たちは焼けた肉に少しだけタレをつけて食べてみる。
「「「美味しい!」」」
ドロッとしたタレは、甘く濃厚で後から少しピリッとくるが、様々な味が混ざっており、肉によく合い、旨さが何倍にもなる。
皆、口にあったようですぐにタレは無くなった。
「すごく美味しかった。まだタレが欲しいけどないの?」
俺が聞くとヒュペリオンが答えた。
「タレはあるけれど注ぎ足していかないといけないから、全部は使えないんだ。また、仕込んでおくから今度な。そんなに食べたいなら皆手伝えよ」
「「うん」」
「「はい」」
俺もセレネもリアンサスもアキレア王女もうなずき、返事をし、ディアントスは無言でうなずく。
「タレを作るのに何が必要なの?」
俺は聞いてみた。
「魔獣の血と複数の木の実と魔木の新葉だ。魔木の新葉を採集するのが難しいんだが、ヘリオスのおかげで大量に採れたから、タレも大量に作れるだろう」
魔木の葉がタレの味わいを深くして味の調和を取り持つらしい。近くで魔木が見つけにくいのと発見すると背丈が低いうちにすぐに伐採するのであまり葉を採集できないらしい。
「よかったねヘリオス。たくさんタレを使えるね」
セレネの言葉に俺はうなずく。
「大量に作ると毎日、かき混ぜるのが大変なんだぞ。みんな手伝え」
皆、喜んでうなずく。
「母にも食べさせたいのでタレが出来たら少しわけてもらっていいですか?」
ディアントスが言う。
「わかった。しっかり毎日混ぜてくれよ。それから、肉や素材は、こちらで売ってからお金をわけるか?そのまま持って帰るか?」
ヒュペリオンが答える。
「冬越しのために干し肉にする分は、持って帰りたいと思います。素材は、自分の防具にする分だけ頂きたいです」
「持って帰らない分も、売ってお金を均等に渡すから」
「私は受け取れません。何も役に立っていないですし」
アキレア王女が言う。
「俺も倒した分だけでいいです。」
リアンサスが言う。
「私も全然倒せてないし」
セレネはうつむく。
「チームで魔獣狩りをしたんだから戦利品は均等に分けるのが当然だ。これが、珍しい魔獣の魔石などあれば、一番活躍した人に権利が生まれるんだが、普通は均等に分けるんだ。じゃないと、魔獣に遭遇して戦利品が欲しいからと勝手な行動し始めたら困るだろ?それぞれの役目を持ち、チームで動くために必要なんだ。王女は魔獣を倒せなくても、他の仲間が怪我をした時は回復魔法をかけてくれるのだし、それぞれの役目がある」
俺たちは納得した。
「それでは、私の分の魔獣の肉は孤児院にお願いします」
アキレア王女が言った。
「余った素材は、いっしょに売っていいですね?」
「ええ。売ったお金で羊毛を買うほうが孤児院の多くの子供たちに配ることができるでしょう」
「孤児院って?」
俺は聞いた。
「他国の侵攻で親を失った子や口減らしにあった子がいます。たくさんいる子ども達の食べ物を確保するのも大変なのです」
「俺にも孤児院を見せてください」
俺にはヒュペリオンやレアさんがいて恵まれている。孤児院の様子が気になった。
何か俺に出来ることがあるかもしれない。




