表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/31

19.アキレアの治療

「リアンサスとディアントスは?」


 俺は周りを見た。しっかりとした足取りでこちらへ向かってくる2人が見えた。


 セレネは、走って俺に飛び込むように抱きついた。


「ヘリオスが死ぬかと思った」


 俺は、イレックスの炎魔法をまともに受けアメットで耐え切れずに倒され、焼け焦げるようなひどい様子だったそうだ。


 ヒュペリオンからもらったローブの下だけ服が燃え残っている。しっかり現実に戻ると俺の下半身が丸裸なことに気づいた。


 アキレア王女が顔を赤らめながら回復魔法をかけ続けている。


「皆大丈夫だったのか?」


「チーム戦のために控えていた回復魔法使いから治療を受け終えて俺もディアントスも無事だ。それよりもこれで隠せ」


 リアンサスは、抱き着いたセレネを引きはがし、自分の袖を引き裂いたものを渡してくる。


 ――小さい。一応隠せるけど


「さっきまで、ヘリオスは焼け焦げて見れた状態じゃなかったから下半身が裸でも気にならなかったけれど、これはひどいな」


「そう思うならもっと隠せるものをくれ」


「何か探してくる。それとあいつらがどうなったか教官に聞いてくる」


 イレックス達は大丈夫だったろうか?


 回復魔法の使い手らしき人たちと審判役の宮廷魔導士も向かっていたから大丈夫だと思いたい。




 戻ってきたリアンサスから話を聞く。


「イレックスたちは、命は無事だって」

 腰にまわせるボロ布を俺に放り投げながらリアンサスは言う。


 ――命は?


 俺の心の声に答えるようにリアンサスが続ける。

「1人は、腕がねじ切れて、切断面がズタズタで教官の回復魔法でも元にもどせないそうだ」


 想像して俺は吐き気がこみあげてきた。


「私、行ってきます。ヘリオスはもう大丈夫ですね」


「治せるのですか?アキレア王女」


「分かりませんが、出来ることはしたいのです」


「あいつらは、アキレア王女ごと魔法をぶつけるつもりだったのですよ。ヘリオスの魔法がなければ、アキレア王女までどうなっていたか。それなのにあいつらに回復魔法をかけるのですか?」


 ディアントスの問いにアキレア王女は無言でうなずく。


「アキレア王女はやさしいしね」

 セレネがほほ笑む。


 アキレア王女は悲しさも混じったような複雑な表情でセレネと視線だけ交わし、3人の元へ歩き始めた。


 俺達も後ろから従う。




「何にしに来たんだ?」


 イレックスの言葉を無視してアキレア王女は腕がねじ切れた男へ近づき回復魔法をかけ始めた。


 治っている様子が見えない。


「教官も治せなかったんだ。無理だ」

 イレックスがアキレア王女をにらむ。


「アキレア王女申し訳ありませんでした。あなたも危険にさらして」

 腕がねじ切れた男が謝罪の言葉を口にする。


「模擬戦に出たのだから覚悟していました。あなたは、腕を治すためなら痛みに耐える覚悟がありますか?」


「・・・あります」


 アキレア王女は男の腕の切断面の上をヒモできつくしばり、ナイフで切断面を削り始めた。


 男は泣き叫ぶがアキレア王女は表情を変えずにナイフで削り続けた。そして、切れた腕にナイフで傷を素早く入れ、イレックスに渡す。


「傷口をあわせ支えていなさい」


「何馬鹿なことをやっている」

 イレックスが馬鹿にするように口にする。


「黙りなさい。あなたの仲間の腕を治したくないのですか?」


 イレックスは王女をにらみながらも従う。


 アキレア王女が回復魔法をかけ始めると傷口がふくらむように広がりながら肉がつながり始めているのが見えた。


 皆が驚き、腕が治っていく様子を凝視する。


 どれくらい時が経ったか、皆、無言で見守った。


「終わりました。どうですか?レイアット」


「動きます!アキレア王女!腕がつながるなんて!ありがとうございます」

 レイアットが跪く。


「良かった。では、戻りましょう」


 俺たちは従い、レイアットともう一人の宮廷魔導士の息子も続いた。


 イレックスはその場に立ち尽くしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ