17.特訓―チーム戦
座学がすべて終わるとチーム戦の特訓を俺たちの家の前ですることにした。アキレア王女もディアントスもいっしょだ。
「アキレア王女。本当に護衛をつけなくて大丈夫ですか?」
俺は心配でもう一度聞いた。
「王宮近くは大丈夫ですよ」
「隣国の兵の侵入もここまでは無いですからね」
リアンサスが言う。
「魔獣もここまでは来ませんし、王宮近くの町に侵入する前に討伐されますしね」
ディアントスも言う。
アキレア王女の立場では暗殺などの危険もないから護衛をつける必要もないのだろう。
それでも、何かあったら今の俺達だけでは守れないかもと心配になる。
こういう時にヒュペリオンに居てほしいが、昼から国境近くの警戒に出向いているとレアさんに教えてもらった。
「私たちでアキレア王女を守ればいいんでしょ?特訓して強くなればいいんだよ」
セレネの言葉に皆が笑顔でうなずく。
「ありがとう。セレネ。でも、私も守られるだけではなく戦いますから」
「よし2チームに分かれて模擬戦の特訓をしよう!」
俺の言葉に皆がうなずいて、チーム分けをしてみた。
俺とディアントス対セレネとリアンサスで、まずは模擬戦をやってみることにして、アキレア王女は審判と負傷者が出たら回復をしてもらうことにした。
ディアントスの実力もわからないので、どのような流れになるか分からないし、アキレア王女にいきなり怪我されても困るからアキレア王女以外は納得した。
アキレア王女の合図で模擬戦を開始すると俺は、セレネの魔法を防ぐ盾になりつつディアントスと突撃した。
セレネが小さな水魔法を放ち、俺がそれを防ぐと同時にリアンサスが身体強化でスピードを上げつつ木剣を俺に向かってふるってきたが、それを俺は木剣で防いだ。
そこへ、ディアントスが間髪入れずにリアンサスを木剣で叩きのめし、すぐさまセレネに向かい足払いで地面に倒した。
「そこまでです!」
アキレア王女の合図で終了し、リアンサスは打たれた箇所を治してもらう。
ディアントスが弱くないことは分かった。俺たちが生徒の間でどれくらいの実力なのかわからないからディアントスが強いのか俺にはわからない。
分からないから試してみたくなった。ディアントスのことも今の自分ことも。
俺とディアントスは1対1で勝負してみた。対戦してみて分かったのだが、剣の訓練をしていない俺では防ぐのがやっとだった。
「すごいなディアントス」
「いや、ヘリオスは、身体強化の持続時間がすごいな。追いつくのがやっとだ。向かってきてくれるからいいけど、逃げられたら絶対に追いつけない」
「チーム戦でも俺だけ逃げられるのならば命の危険はないけれど、そういうわけにもいかないし。一人で逃げ回って仲間を危険にさらすなんて模擬戦の意味がなくなる」
「そう言うけど、命の危険が一番あるのはヘリオスだよ」
リアンサスの言葉にアキレア王女とセレネが驚いた顔をする。
「「どういうこと?」」
「アキレア王女の立場ではチーム戦で命を狙われることはない。イレックスは王配になりたいのだろうから、王女に無事でいてもらわないといけない。けれど、王配候補としてのヘリオスは邪魔なんだよ」
リアンサスの話を聞いていると、どうやら俺は命を狙われる可能性があるそうだ。このまま、魔法の実力が上がれば、植物成長の魔法という替えがきかない能力もあるので王配候補筆頭となるのでイレックスにとっては邪魔になってしまうそうだ。
本当にどうにかしないと危険だということがわかった。
数日、植物成長に魔力を使ったおかげか、アメットも使いやすくなった。
作戦としては、まずイレックスを倒すことはどうか話し合った。
セレネがイレックスに相性の良い水魔法を放ち、俺がアメットで盾役をやりつつ突撃しリアンサスとディアントスが追い打ちをかける。
まだ足りない。
次の朝、ヒュペリオンに特訓を付き合ってもらった。
「ディアントスなかなかやるな。自己流か?それにしてはよくやる」
「父さんといっしょに行商人になるはずだったのですが、危険も多いからと父さんに剣の稽古をさせられていました。父さんがいなくなってからも一人で訓練していました」
「この革鎧をやるよ」
「魔獣の革鎧なんて高価なものもらえません!」
「他人からもらえないと思うだろうが、まあ、俺が息子の安全を考えてと思ってくれ。ディアントスが無事ならいっしょのチームのヘリオスも助かるだろ?アキレア王女もいるんだ。魔法を少しでも防げる防具があるほうがいいだろう」
「ありがとうございます」
ディアントスは礼を言って革鎧を受け取り強く抱きしめていた。




