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14.筆頭王配候補

 今日もセレネ達の家で夕飯をいただいた。ヒュペリオンは帰るのが明日になるそうで、4人で食べた。


 食事前にレアさんに花を渡すと喜んでくれた。セレネは不満そうでレアさんとリアンサスがなだめていた。


「セレネは、ヘリオスと話す時間が少なくなって寂しいのに、花を母さんにだけ、あげるからすねているんだよ。ヘリオスやさしくしてやってね」


「お兄ちゃん!」


「ヘリオスが王配候補としてアキレア王女と仲良くなっていくのが複雑な気持ちなの」

 レアさんが言った。


 ――王配候補?俺が?


 ――リアンサスや宮廷魔導士の息子が王配候補だと聞いたが、俺も?


 アキレア王女を支えてこの国の人々を貧しさから救いたいが、王配になりたいなんて思ったこともない。

 救ったあとは、冒険にでも出てみたいと思っていた。魔法の腕が上がれば色んなとこに行けるのではないか。ドラゴンもいるらしいので見てみたい。


「俺もリアンサスと同じで王配候補なの?」


「同じじゃないよ。ヘリオスは有力候補だよ」

 リアンサスの言葉にレアさんが続ける。


「ヘリオスは、魔法が使えるでしょ。それに植物を成長させることも出来るわよね。誰にも出来ないことが、これで攻撃魔法も普通に使えるようになると筆頭候補になるらしいわよ」


 ――俺が筆頭候補?


「国内をまとめるために発言力のある宮廷魔導士の息子が王配筆頭候補じゃなかったの?」

 俺は驚いて聞いた。


「キロン宮廷魔導士長は、ヘリオスを王配として王妃にも昔から勧めているみたいよ。ヒュペリオンがキロン様の後を継いで宮廷魔導士長になれば、他の宮廷魔導士も抑えられるし国内も安定するから問題ないみたい。ヒュペリオンの魔法の実力は国内で一番だからキロン様は宮廷魔導士にさせたかったんだって」

 レアさんが教えてくれる。


「そもそも俺みたいな騎士団の息子も候補には上がるけれど魔力持ちじゃないからだめなんだよ」


 魔力は完全に遺伝するわけではないけれどある程度、両親の影響を受けるらしい。だから、王配や妃は魔力持ちが優先されるらしい。


「けれど、今の王妃は魔力がほとんど無いって」

 

 俺が言うとリアンサスが答える。


「そうだよ。王女も回復魔法しか使えないから婿になる王配候補は魔力が優先されるのさ」


「セレネは、ヘリオスが王配にならないでほしいからリアンサスに頑張ってほしいみたいだけどね」


「お母さん!私はお兄ちゃんがアキレア王女のこと好きみたいだから頑張って欲しいだけ」

 レアさんの言葉にセレネが顔を赤らめている。


「好きとは違うよ。あんなに民のことを想うアキレア王女を尊敬してるから支えたいだけだよ。俺が王配になるなんて、そんな大それたこと考えたこともないよ。けれど宮廷魔導士の息子みたいな嫌な人が王配になってこの国が変わるのも嫌なんだよね。皆そうだよ」

 リアンサスが言った。


「他に有力な魔力持ちの王配候補もいないしアキレア王女のためにもヘリオスに頑張ってもらわないとね」

 レアさんが言う。


「割れ器の俺が普通に魔法を使えるようになるのかな?」


「チーム戦もあるし明日から特訓だよ」


 リアンサスの言葉に俺とセレネはうなずいた。


 その後、リアンサスから遠い国のドラゴンの話を聞いたり、セレネから魔石を使った船に乗りたいと聞いたり、レアさんと魔獣の肉の味の違いを話した。


 楽しい歓談が名残おしかったが、明日の朝の特訓にそなえて早く眠ることになった。ヒュペリオンもいなくて寂しいだろうと言われ4人で眠った。

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