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13.植物研究

 研究室の外に出た。この前見た畑があった。歩いてその奥にいくと一面の花畑だった。


「ヘリオスに見せたかったのです。ヘリオスみたいに花や植物に興味を抱いてくれる人がいて私嬉しくて」


 年相応の幼い笑顔でアキレア王女が色とりどりの花々を見つめながら話し始める。


「私は小さなころから花が好きで、でも自分の好きなことだけをするのは王女として間違っているとおそわりました。キロンおじいさんが教えてくれたのです。民のためになることだったらいいと。前は、花を愛でるのは罪悪感がありました。食べるものもない民もいるのに自分が花を見て喜ぶなんて、と。けれど、教えてもらったように根や花びらが薬になる花を集めたのです。少し罪の意識が減りました」


 一面に広がる花々は全て薬になるものだそうだ。アキレア王女の回復魔法では治せない病気があるそうだ。王女はあまり理解できていないようで説明は拙かったが、たぶん、がんのような異常細胞が増殖する病気は回復魔法で治せないようだ。


 小さな女の子が自分の立場を理解し出来る限り頑張っているのだから、出来ないことに罪の意識なんて持たなくてもいいだろうに。俺は出来る限り助けたいという気持ちが強くなってきた。


 俺は、出来る限りの笑顔でアキレア王女に気持ちを伝える。

「食糧増産できますよ。皆が冬越しできるように私も出来る限り努力します。なので、王女が花を見るときは、全て忘れて心から楽しんだらいいのですよ」


 一面の畑のシリジーニスを成長させたのが本当に俺ならば、意識して行えるようになればそれは皆が助かるだろう。


 けれど、今は出来ないし、畑一面成長させるなんて魔力が相当必要だから研究して原理がわかっても他の人が再現するのは難しいそうだ。


「ありがとう。ヘリオス。2人なんだから前に言ったようにお友達に話すように気軽に話して。セレネ達と話すようにして。私もそうしたいから」


 小さな貧乏な国で、小さな女の子でも王女と言われたらなかなか気軽に話すのにためらう。人前と2人の時となんて切り替えも要領よく出来そうにないし。


 俺は苦笑しながらも、うなずいた。

 考えた。俺が出来ることを。今の魔力でも出来るのは品種改良じゃないか、前世では、野生種と栽培品種の交配をしていたから分かる。


 まずは、強く頑強な野生種を母親にして多収量の栽培品種を父としてかけあわせる。


 そうすると、子どもとなるF1は、DNAを親から50%ずつ受け継ぐ。


 しかし、その体を構成している細胞は母親由来のものなので頑強。


 そのF1を母親にして、もう一度、栽培品種を父としてかけあわせる。

 これを何度も繰り返していけば、DNAは99.999999%父とした栽培品種のものだが、体を構成する細胞は野生種の母体由来のものとなり頑強となる。


 よしこれでいけるぞ!と思うと顔がにやけた。


 アキレア王女が不思議そうに俺を見たので、かいつまんで説明した。


「すごいね!ヘリオス!早速やってみましょう」


 アキレア王女にうながされ俺は、シリジーニスなどを管理している畑にいっしょに向かった。




 ふつうは、同じ植物で同じ場所なら花が咲く時期が一緒なので、意図していない交配になる可能性があるが、魔力で成長させれば、花が咲く時期がずれる。


 花粉が形成される前に母体にする野生種のおしべを取り、栽培品種のおしべの花粉を母体のめしべにつける。


 1回試してみて魔力が限界だった。


 魔力さえあれば、何年もかかる品種改良でも一瞬で出来るのに。


 花粉をめしべにつける様子を興味深そうにアキレア王女は見ていた。


「魔力が限界です。もっと魔力があれば何度も試せるのに。これで上手くいくかもわかりません」


 DNA解析をすれば成功しているか確認できるが、ここでは無理なので成長後の様子で判断するしかない。


「十分じゃないですか。他の人が出来ないことを出来て。私、こんな方法初めて知りました」


 俺は首をふる。成功しているかわからないこと、何回といわず、色んな組み合わせを考えたら何千回どころか何万回と交配を繰り返さないといけない。だから、ふつうは、何年、何十年とかかること。けれどそんなに待てない。食糧に困る人々を救うには、魔力が必要だということを話す。


「ヘリオスは、杖を持ったらもっと魔法が使いやすくなるかもしれないね」


 ――杖?


 ヒュペリオンも小さな短い棒を持っていたような・・・。


「学園で習ったら杖を持てるようになるそうよ。杖を持ったら魔力の使い方が安定したり、魔力吸収しやすくなるんですって」


 杖に使った素材によって特性もかわるし、良い素材は出回らないから親からもらうか自分で入手する必要があるそうだ。


「杖のことだけではなく、他にもローブに縫う魔法陣のことも学園では習えるから私、楽しみなの」


「魔法陣?それは楽しみですね」

 俺は本当に座学が楽しみになった。魔法を効果的に使うための知識を色々と学ぶことが出来るそうだ。知らないことを知っていくことは喜びを感じる。


 明日以降は植物研究の前に、チーム戦のために特訓することを約束した。


 不安もあるが、明日も楽しみだ。

 アキレア王女にもらった花を持って帰宅する途中考えた。普段の食事のお礼にレアさんにこの花をあげよう。


 きっとレアさんは喜んでくれるだろう。

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