鬼は冒険者登録をする
AIと対話してたら、イイ感じで話が進んだので、投稿する気になりました。
丘の上から町を見下ろす男がいる。
ひどく体が大きい。よく見れば端正な顔だちだが、どう猛そうな笑みがすべて台無しにしている。
「やっと着いたか、新天地」
男は、町へ向かって歩き出した。
[冒険者ギルド]
「お名前と出身、種族、年齢、戦闘方法、得意なことを書いてください。わかる部分だけでいいです。字が書けない場合は、代筆します。」
金髪のショートカットがよく似合う受付嬢が登録用紙を差し出した。
「名前はマックスだ」
名前を書き込んだ彼女は、ペンの先でトントンと紙の空欄を叩きながら、慣れた様子で促した。
「はい、マックスさんですね。ありがとうございます。続きもお願いします。種族と年齢、性別と戦闘方法くらいは教えてください」
「種族は鬼族、35歳くらい、男、素手で戦う」
ペンの先がぴたりと止まった。受付嬢の営業スマイルが、ほんの一瞬だけ凍り付いたのを、マックスは見逃さなかったかもしれない。
「お、鬼族!?・・・ですか」
彼女はちょっと驚くと、改めてマックスの姿を上から下までじろじろと眺めた。けれど、鬼族の特徴である角は見当たらなかった。
ギルド内の空気が微妙に変わる。奥の食堂で酒を飲んでいた冒険者の何人かが、ドアの付近まで来て受け付けをうかがう。
鬼族といえば、この世界では希少種に分類される。人間をはるかに凌駕する膂力を持ち、その拳は岩をも砕くとされる。しかし同時に、粗暴で野蛮なイメージも根強く、街中でも鬼族というだけで警戒されることも珍しくない。ギルド内の冒険者たちの何人かが、露骨に距離を取った。
咳ばらいを一つ、プロ意識で持ち直したらしく、再びペンを走らせ始めた。
「えーと、素手での戦闘ですね。武器は使用しないと。・・・はい、確認です。これで登録内容、すべて埋まりました」
彼女はカードに情報を刻みながら、少し声を潜めた。
「あのー・・・一応お伝えしておきますが、鬼族の方は街中でトラブルになりやすいので・・・くれぐれも、くれぐれも穏便にお願いしますね?」
「俺は手を出さないが、喧嘩は買う」
彼女の眉がぴくりと跳ね上がった。ペンを持つ手が一瞬震え、カードに情報を刻む手が明らかに狂った。
「・・・あの、それは冒険者としての活動方針に含まれますか?」
引きつった笑顔のまま、なんとか業務を全うしようとする姿勢だけは立派だった。
隣りのカウンターで手続きをしていた獣人の4人組パーティが絡んできた。
「おい見ろよ、鬼族が素手で戦うだとよ。武器すら買えねぇんだろ、きっと」
仲間がどっと笑い声をあげた。獣人のリーダーは熊のような体躯で、首から下げた冒険者カードはCランクを示していた。彼はペンを片手に、わざとらしくマックスに近寄ってきた。
「なぁ新入り。鬼族なのに角はどうした?隠してんのか?それともビビらせるための騙りか?」
言い終わる間もなく、マックスの裏拳が閃いた。それは、「振りかぶる」とか「構える」といった予備動作を一切排除した、純粋な暴力だった。熊獣人の巨体が、まるで風に舞う木の葉のように吹き飛び、後ろのテーブルを2つ巻き込んで壁に叩きつけられた。依頼を貼りだした掲示板が真っ二つに割れ、依頼書が散乱した。
ギルド内が一瞬にして凍り付いた。
(続く)




