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日々の出来事  作者: Gerbera


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18/19

月雨

 夢を見た。

 覚えているのはただの一場面。

 その日は激しい夕立と雷が、空気中のあらゆる穢れを清めた日だった。

 夜の満月の美しさに、その青白い輝きに瞳を焼いた日だった。


 夢の中、私はたぶん見慣れた我が家の廊下に立っていた。

 夜だった。

 障子窓は閉ざされていた。


 私はその障子が、美しく瞬いているのを目にしていた。

 まるで海蛍がそのまま和紙に染み込んで、あの青い燐光を散りばめているような光景だった。


 夢の中の時間は曖昧で、記憶もすでに霞んでいる。

 それでもきっと、私はしばらくその青い揺らぎに見惚れていたと思う。

 唐突に、私はその障子窓を開けた。

 重さも抵抗もなかったと思う。

 きっと、私はこの幻想的な光の正体が外にあるのだと直感したのだろう。

 きっと、その源を目にしたかったのだろう。


 私はそれを、望み通りに叶えていた。

 

 月があった。

 大きな、本当に皓々とした満月だった。

 空には雲も出ていた。

 月明かりを受け、蓄え、輪郭をあやふやにさせる朧な光を纏っていた。


 雨だった。

 それが、障子窓に清らかな揺蕩いを生んでいたものの正体だった。


 雲は、月光を蓄える雨雲。

 雨は、月白色の、月の雨。


 覚えているのは、たったそれだけ。

 音があったかどうかも、よく思い出せない。

 あっただろうか。

 なかっただろうか。


 もしもあったなら、それはどんな音であったのだろう。

 それは美しく、透き通る、記憶すらも透明にするような音だったのだろう。


 そう思えば、覚えていない事実すら輝いて思える。

 私は聴き入っただろう。

 そうして魅了され、こうして想いを馳せている。


 うん。きっとそういうことなのだ。


 叶うことなら、また見たい。聞きたいのはもちろん、感じたい。

 月光に濡れるとは、いったいどんな感覚なのかを。


 今日も少し雨だった。

 私は夢に準備する。

 窓をすっかり開け放ち、涼しい夜気を寝息へ変える。


 それがあの夢を運んでくれると期待して。

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