16/17
新幹線
低い走行音と、高い駆動音。
車窓からは、さまざまな街並みが、さまざまな自然や気候と共に過ぎ去ってゆく。
雨の街を過ぎ、霧を生む山を貫き、海を見渡した。
いつも過ごす街には無い、石に富んだ川を見た。
示し合わせたように高さの統一された屋根を見た。
霧雨に囲われた、鬱蒼とした緑を映す細道で、濡れながらはしゃぐ親子を見た。
私の関われなかった多くの人生、その一幕があった。
私の産まれなかった土地の、きっと私が子ども時代の象徴的思い出の場とした地形があった。
心地の良い寂寥感。せめてもの足掻きに、私は地名だけでも知りたくてスマホのマップを開く。
私の現在地を示すマーカーが、見たことのない速さで海と山との境界線を割いてゆく。
ついにマップの描画が間に合わず、私はグレーのマス目の上を移動していた。
ようやく諦めがついた。私はここにいなかったし、この心地良い街の、美しい自然の子ではあり得なかった。
ここには私だけがいる。時速300キロで、私の多くの構成要素を置き去りに、たったこの身を運んでいる。
ああ、まったくもって寂しく、孤独で、癒される。
旅とはこういうものだった。




