義妹
「で、沙弥がどんな人か......か。そうだな、俺は5年前にここに来てその頃は結構避けられてたんだけど、1年くらいした辺りかな?なんかいつも元気なさそうにしてて後を付けたらクラスの男子共にイジメられてたんだよ。」
いじめというのも幸い暴力的なものではなかったが、まだ小さかった沙弥には応えたようで、みるみる内に表情が暗くなっていく沙弥には俺もカヨも不安を抱いていたものだ。
「いじめ……ですか。」
蓮姫は眉をひそめて嫌悪感を露わにした。
「まぁ、結果的にそれを俺が若干力に任せつつ解決した訳なんだがそれから途端に俺を避ける事がなくなってな。今じゃたまに勉強を教えたり一緒にゲームしたりで結構仲の良い妹だよ。」
「……そうですか。」
蓮姫がポソリとそう呟いた時、ドタドタドタと階段を駆け上がる音が聞こえバンッと部屋の扉が開かれた。
「おにぃっ!!」
突然開かれた扉に蓮姫はビクゥッと肩を跳ねあがらせた。可愛い。
「沙弥か、おかえり。」
「やっぱりあんたか。委員長。」
「……やはり貴方だったんですね。沙弥さん。」
二人は顔を会わせるなり、お互い眉をひそめた。
あぁ、そういえば蓮姫を見に行ってる時に同じクラスに沙弥もいたっけ。
だが、この妙な雰囲気はなんだろう。
「えーっと、もしかして二人は友達なのか?」
「いえ、違います。」
「ふん、こんなのと友達になれるわけない。」
「......もしかして仲悪いのか?」
「仲の良し悪し以前に殆ど話す事がありません。ただ、周りの方々には猫を被り笑顔を振りまいて、私には態度を変えてくるので嫌いではあります。まさか先輩の妹だったとは思いませんでした。」
あー、確かに苗字は違うからな。
「おにぃと付き合ってる女と仲良くとかありえない。」
.........ん?
「沙弥は俺と蓮姫が付き合ってるって知ってたのか?」
「は?知ってるに決まってるでしょ?おにぃは1年のクラスに通って変態とか言われて有名になってるし委員長も成績はいつもトップクラスで容姿もそこそこ良いから有名。そんな2人が付き合ってたら噂にもなるよ。......ま、それだけじゃないけど。」
「そ、そうか。知ってたのか。」
「でもね、おにぃ。私は知ってるよ。おにぃはこんなちんちくりんを好きになったりしないって。」
............ん?
「きっと脅されてるんだよね?おにぃにベタ惚れの委員長が何かおにぃの弱みを握って無理矢理付き合わされてるんだよね?」
う、うーむ。なんか所々当たってるような......。
なんて考えていると沙弥の言葉を蓮姫が真っ向から否定した。
「沙弥さんが考えているような事はありません。先輩は私に......その、ぞっこんなんです。」
「.........。」
「.........。」
相変わらず照れながらのセリフに場は静まり返った。
正直、確かにぞっこんではあるのだが、言葉にされそれも蓮姫の口から言われると俺としても照れくさくて仕方ない。
「うざ。私は勉強しないとだからもう行くね。」
「あ、あぁ。」
暫しの間の後、随分あっさりと引く沙弥に若干の違和感を覚える。
まぁ、確かにもう少しでテストだから勉強は大切だが。
「じゃあ、おにぃ。また後でいつもみたいに一緒にお風呂入ろうね。」
「「.........え?」」
ブックマーク100人超えてて感謝の気持ちでいっぱいです……。