パーティ開始!
「ただいま~」
「お、おじゃましまーす‥」
兄貴達が帰ってきた。
僕は仕込みを切り上げ、玄関へと向かう。
外が結構寒かったのか、兄貴たちの鼻が赤い。
「外寒かったろ?」
「え、何で分かった‥‥って、大体この頃になると気温落ちるしな」
珍しくまともなことを言ってのけ、靴を脱いで上がる。“お友達さん”も遠慮がちだが靴を脱いで家へと上がる。
「お、何か良い匂いがするな」
「これは、シチューですか?」
「えっ、マジ?!」
「ん、そうそう。‥んだよ、その目は。安心しろ、兄貴よりは旨いから」
僕はそう言って兄貴の横を通りすぎた。
後ろでぎゃーぎゃー騒いでたのを一生懸命“お友達さん”が制していたが、気にしない気にしない。
「うわー、やっぱり妹さん凄いですね」
居間へと入ってきた“お友達さん”は、僕が飾り付けた物を見て一言そういった。
‥別に嬉しいとか思って‥‥ますともっ!
僕は褒められて伸びるタイプだからさ。
「そうか? こんなの俺だってでき───いてっ!」
「馬鹿兄貴のくせに」
文句を垂れた一名をぶん殴って、クリスマスパーティを開始する。
「メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
「ハッピーメリークリスマス!」
そう皆で言って、持ってるグラスを当て合う。
コツンコツン音を鳴らせたあとに一口流し込む。
もちろん飲んでるのは酒じゃなく、どこにでも売ってるオレンジジュースだ。
僕はそのあと、キッチンに行き三人分のシチューを入れる。そして兄貴達が買ってきたものもテーブルの上へと並べる。
「わー、美味しそうですね!」
「ん、まぁ我ながらに良い出来だと思うぞ」
「‥‥‥」
「あ、おいっ!」
僕は無言で兄貴の分のシチューを取り上げる。
そんな騒ぎを立てつつ、パーティは終盤を迎えようとしていた。
やはり、クリスマスパーティと言えば、プレゼント交換だ。
「よし、皆。準備はいいか?」
「はい」
「さっさと始めろ」
「じゃ、スタート!」
その掛け声とともに、兄貴がクリスマス定番の歌を歌い始める。
‥それって結構ズルいよね。自分の部屋に止めたい時に止められるんだからさ。
「はいっ、じゃあストーップ!」
出来れば兄貴のは当たりたくないな‥。
僕はそんな不安を抱きつつ、袋の包みを開けた。
「わ‥」
そこにはスノーボールがあった。
中央にちょこんとある小さな家とサンタさん。その周りは真っ白い雪で囲まれていた。
逆さにしてまた逆さにすると、まるでその世界に雪が降ったかのような演出まで出来る。
これは、まさか、“お友達さん”の‥?
「あ、それ俺のだ」
‥‥‥‥え。
あれ、僕耳が悪くなっちゃったのかな? まさかこんなもの、兄貴が買うわけ‥。
「大事にしろよー。それ結構高かったんだぞ」
「いくらぐらいしたんですか?」
「1280円」
「えっ、そんなにしたんですか?!」
「ああ。まぁクリスマスだし、そんな事言ってられねぇよ」
そんな会話を流しながら、僕は放心状態に陥っていた。
まさか、まさか、兄貴のが当たるとはっ。
隣を見ると“お友達さん”のところには僕のが、兄貴のところには“お友達さん”のものが当たっていた。
“お友達さん”のは、アンティークな時計。‥え、何か高そう。
僕のは簡単に編んだ手袋。水色に白の水玉模様だ。
「て、手作りですかっ!」
「まぁ‥」
「コイツ、手だけは器用なんだよ。でも何故か料理は失敗する」
「最近は上手くなってきてるし。僕は兄貴みたいに不器用かつ馬鹿じゃないんで」
「こんのっ、クソガキっ!」
「ちょっ、二人ともっ」
そんなドタバタでパーティも終わり、その後のまったりとした空気を味わう。
パーティにはありがちだよね、このまったり感。
「あ、そえば。風呂入る順番どうする?」
「は?」
兄貴がソファーにだらしなくもたれながら、そう聞いてきた。
何だよ、順番って。
「ほら、今日コイツ泊まるじゃん?」
「あ~‥‥僕から先でいい?」
「おっけー」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」
急に大きな声を出したもんだから、びっくりした、
見開いているだあろう目で、“お友達さん”を見つめる。
兄貴も同じで。見開いている目で“お友達さん”見ていた。
おおきなこえを出した、当の本人は注目を浴びたことに気付き、顔を俯かせてしまった。
「どうしたんだよ?」
兄貴がすかさず、問いただした。
“お友達さん”は、されど小さい声で問いに答えた。
「その‥良いんですか、泊まって。お家の方に迷惑じゃ‥」
「んなの、気にすんなって。何だ、お前ん家そう言うのとか厳しい系?」
「や、そうじゃないんですけど‥そんな急な‥」
「大丈夫大丈夫。兄貴はいつも急だから」
「ほら、コイツもこう言ってるし。泊まってけよ」
「‥‥‥じゃ、じゃあ‥宜しく、お願いします」
そう言うと“お友達さん”は深々とお辞儀をした。
「じゃっ、お先お風呂いただきま~す」
僕は風呂の準備をするべく、部屋へと戻った。
「あ、じゃあ今日は兄貴自分の部屋で寝るのか」
そんなことを思いながらタオルやら下着やらを出していく。
兄貴は何故か寝るときも僕の部屋で過ごす。理由はこっちの方が落ち着くらしい。
「‥アイツ、自分の部屋もってる意味なくね?」
そう呟いて、僕はお風呂場に向かった。
───ちょっと寂しいなって思うのは、きっとこの寒さのせいだ。




