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優しい感想という文化

 現在、多くの創作の場において、読者からの感想は非常に『優しい』ものになっている。



 面白かった。

 続きが気になる。

 キャラクターが魅力的だった。



 そうした言葉が並び、否定的な意見はほとんど見当たらない。

 仮にあったとしても、それは極めて柔らかく、角を丸められた形で提示される。


 これは決して悪いことではない。

 むしろ、創作という繊細な営みにおいては、ある種の理想形とも言えるだろう。


 誰も傷つけず、誰も否定せず、ただ互いを支え合うように言葉を交わす。


 それは一つの「健全なコミュニティ」の姿として、確かに成立している。


 実際、カクヨムでの利用規約においては以下のように定められている。


『作者への誹謗中傷、過度な批判は禁止しています』


 なろうも同様だ。


『意味を為さない日本語・作者に対する誹謗中傷・催促して作者を追い詰めるような行為・評価感想依頼』


 この一定の枷が存在しなければ、無法地帯になる事は目に見えているからだ。




 読者によって好みが分かれており、好き嫌いが発生するのは当然の事。

 人気作家への妬みでアンチコメント爆撃を行うのも、実に人間らしい行動だろう。


 報復が繰り返され、残るのは焼け野原だけである。



 故に、今日も感想欄はお花畑のように、柔らかな毛布のように作品を包み込んでいる。




 だが、ここで一つの疑問が生じる。


 その優しい感想と言う名の花束は、本当にその「作品」を読んだ上で手向けられているのだろうか?


 作者を傷つけない為に選ばれた言葉を投げかけているだけではないのか?

 そこにあるのは、作品への正しい評価ではない、

 

 配慮であり。

 談合であり。

 作者との関係性を保つための社交辞令ということになる。


 そして、それが当たり前の『作法』として共有されているのだとすれば。



 それ即ち、「作品を評価する」という行為そのものが——静かに後景へと退いているのではないだろうか。



 結論から言えば、それはすでに「感想」ではない。


 それは、人間関係を円滑にするための潤滑油に過ぎない。


 面白かった、という言葉。

 続きが気になる、という言葉。


 それらは一見、作品に向けられた評価のように見える。

 だが実際には、「否定しない」という選択の結果でしかない場合が多い。


 そこにあるのは、作品の良し悪しを測ろうとする意思ではなく、場の空気を壊さないための配慮だ。



 無難な言葉を選び、波風を立てず、誰も不快にさせない範囲で言葉を整える。


 その行為は確かに優しい。

 だが同時に、それは評価という行為から最も遠い場所にある。




 なぜなら評価とは本来、『選別』だからだ。


 価値を測り、線を引く行為。


 良いものとそうでないものを分けること。

 何が優れていて、何が足りないのかを見極めること。


 そこには必ず、肯定と否定の両方が伴う。


 

 しかし現在、多くの感想はその片側しか持たない。

 

 


 肯定だけが並び、否定は沈黙する。




 その結果、何が起きるのか。

 作品は、正しく評価されなくなる。


 褒められているように見えて、実際には何一つ測られていない。


 称賛する言葉は与えられている。

 だが、その言葉は作品の中身には触れていない。


 これは残酷だ。優しさという名の毒は、いつだって甘いのだから。



 褒め言葉は、しばしば批評よりも残酷である。


 なぜなら批評は、少なくとも『作品を作品として』扱っているのだ。

 だが優しい感想は、作品を作品として扱わない。


 

 作品の欠点を指摘しないということは、その作品が改善する価値すらないと宣告しているのと同じだからだ。


「あなたの作品は、傷つけてまで語るほどの価値はありませんよ」

 というメッセージを、柔らかい言葉で包んで渡しているだけだ。


 これほど残酷な優しさがあるだろうか



 また、優しい感想だけが蔓延するのならば、読者は次第に本文をしっかりと読む必要を失う。


 なぜなら、対して読まなくても褒めることはできるからだ。

 あらすじやサブタイトル。初めの数行や登場人物紹介のページのネタバレ。

 そこをさらりと流せば、優しい感想の出来上がり。


 三分クッキングよりも容易いだろう。


 

 雰囲気が良かったです。

 世界観が素敵でした。

 〇〇のキャラが魅力的でした。

 続きが気になります。


 いかがだろう。

 RT企画で多くの作品へコメントを残している常連皆様方には、とても見覚えがある感想ではないだろうか?


 そして作者は、それを感想として受け取ってしまう。


 こうして作品は、読まれたという幻想だけを与えられる。


 実際には、誰の心にも触れられないまま、情報の海に沈み死んでいく。



 優しい感想は、作者を慰めることはできる。

 だが、作品を成長させることはできない。


 作品を救うのは、誠実な読解と、正確な批評だけだ。


 作者が本当に求めるべきは、「傷付かない優しい言葉」ではなく、「作品を作品として扱ってくれる読者」ではないだろうか?


 

 優しさは、作品を守らない。

 むしろ、作品の死因になることすらある。


 せいぜいこの優しさが満たしてくれるのは、作者の承認欲求程度だろう。



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― 新着の感想 ―
僕も感想書いててなんか、ダメな気がしながらも面白かったって言っちゃいます 読み終わった後に、急速に記憶が抜け落ちて面白かったって以外の記憶が残ってないっていうか うん、そういうの
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