第六十四話 クラス委員長の企み
いよいよ、文化祭スタート!
我がクラスの『男女逆転メイド喫茶』を少しでも盛り上げるため、客引きをおこなうために看板もばっちり!そして、メイドさんと執事さんが教室の前、廊下に立って客引きする準備もバッチリ!……なのだけれど。
「あははは!」
クラスメイトたちは、あちこちから笑い声を上げている。それはなぜかって……男子がメイド服を着ているから。しかも、嫌そうに、そして人によっては気恥ずかしそうに着ているものだから余計にコミカルに見えてしまうのだ。
「可愛い!可愛い!」
「ぷっ、く……あははは!」
「メイドさ~ん、似合ってる似合ってる!」
茶化しているのは、もっぱら執事服に身を包んだ女子たち。意外にも女子たちは執事服をばっちり着こなしていて……そう例えるならば宝〇男役の人たちみたいだった。髪型も女性らしくではなく、恰好良く整えている子たちばかりだから、ここはもしかして執事喫茶なのでは!?と誤解されてしまうかもしれない。いえいえ、ここは『男女逆転メイド喫茶』ですから。
「くそ~っ……あー、足が落ちつかねぇ!!」
めちゃくちゃメイド服を着ることに対して嫌がっていた南クンもばっちり着こなしている。頭にはヘッドドレスまで付けちゃってて、うん、可愛い!
サイズ的な問題は特に無く、接客担当の男子たちはものの見事にメイドさんになった。
ふわふわと広がるスカートに苦戦しているのは南クンだけではなく、メイド服を着ている男子たちは違和感にもやもやしていることだろう。なかには面白がって記念撮影をしている人たちもいるが、それはごくごく僅かだった。
「お、お帰りなさい……ませ、お嬢様……こ、こんな感じで、いいのかな」
灯チャンは、と言うと執事服に着せられていた。むしろその執事服を脱がせてメイド服を着させてあげたい!なんてもったいないことを!!!
「うん。バッチリバッチリ!可愛い可愛い!」
なんとも頼り無さそうな執事の灯チャンになってしまったが、バリバリ執事として気合いを入れている女子のなかに、灯チャンのような弱弱しいタイプの執事がいると……それはそれで楽しめる図になっているみたい。
え、私?私は、と言うと……。
「ちょ、なんでよ!私は裏方担当希望だって言ったよね!?」
なにせ、裏方担当を希望する生徒たちが多いこと多いこと。それゆえにクラス委員長の独断と偏見によってなるべく接客ウケが良さそうな生徒は次から次へと接客担当にまわされることになってしまったのだ。しかも!
「あ、有り得ない……」
何度も言うけれど、我がクラスは男女逆転メイド喫茶である。男子がメイドさん、女子が執事になってお客をもてなす……という流れだったのだけれど……。
なぜか私に渡されたのは『メイド服』だったのだ。おかしい、これは絶対におかしい!!
「いやぁ、悪い悪い!ちょーどメイド服が余っててさー……このまま誰にも着てもらえないなんて可哀想だろ?せっかく買ったのに。サイズ的にも佐久間がちょうど良さそうだったんだって!いや、一人ぐらいマジなメイドさんがいた方がサービスになるってもんだろ?客のための目の保養にしてやれって、な?」
これがクラス委員長のやり方かーっ!!
灯チャンは期待している目をガンガンに向けてくる。南クンもさっきまで死にかけていたというのに私がメイド服に着させられるという話を耳に入れれば目をキラキラに輝かせている!
「くぅ~っ!!絶対に何か奢ってよね!!」
「分かってる分かってる!」
さすがにクラス委員長をぶっ飛ばすわけにもいかないから、仕方なく……これでも猛抗議はしたし、裏方がダメなら執事で頑張るから!と詰め寄ったのだけれど、結局最後に手渡されたものはメイド服だった。もしや、メイド服は予定以上に数を揃えていて、隙あらば女子に着させるつもりだったのでは?
さすがコスプレとして売られているメイド服。チャック一つを開ければ頭からすっぽり着られる簡単なもの。そして頭部にヘッドドレス(これはカチューシャタイプかな?)を装着すれば、はい完成!
「……これで、良いんでしょ!」
「違う違う、佐久間!『これで、よろしいでしょうか、ご主人様』だっつーの」
「ぐっ……!」
案の定、私が着替えて戻ってくるとクラスメイトたちに囲まれてしまった。そのなかで南クンからは話し方を注意される始末。面白がって言っているかもしれないけれど、そういう南クンだって今やメイドの一人だ。
「……これで、よろしいでしょうか?ご主人様……」
「かっ、可愛い!」
「裕理ちゃん、なかなか似合うわね!」
「ボーイッシュなメイドっていうのもなかなかイけるじゃない!」
面白がるクラスメイトの女子たちはスマホを手に、私とツーショットを撮ったり、『いい、裕理ちゃん!ご主人様の命令には素直に従うこと!』と面白楽し気に私に指導までしてくる。本来、メイドとして働くべき男子たちよりも私の方がじゃっかん人気になってしまった。……あれ~?変だな。
「か、可愛いよ!裕理ちゃん!」
執事服の灯チャンも大興奮しながら私の姿を見て感想を述べてくる。『スカートの丈、ちょっと長いね』とか『もうちょっと短くても良いかも』なんて言っているとこの先どうなるか分かったものじゃないので、なるべく『シーッ!シーッ!』と静かにするように注意した。
「や、やっぱ佐久間のメイドだけで……いや、そうなるとタチの悪い客が来たときに……『可愛いメイドさん、膝の上に置いで』『キミの手で……いや、その可愛らしいお口で食べさせてくれ』『……メイドのテイクアウトをしたいのだが、可能かな?』とかって言われるに違いないんだーっ!!」
「なーにを馬鹿なこと言ってんの!」
だから、メイドのテイクアウトって何!?
わーわー騒いでいたら、やば!そろそろ文化祭がはじまる合図が鳴るはず!確か文化祭開始されるときには亜里沙センパイの挨拶がはじまるって言っていたっけ。校内放送で流れるのかな?
ピンポンパンポーン!!
『校内で準備をしている生徒の皆さん。そして、地域にお住まいの皆さん。長らくお待たせしました。各クラスが考え、生徒たちが協力し合って今日この日のために様々な催しを準備しました。どうぞ、ごゆるりと当校の催しを心ゆくまでお楽しみください。それでは!只今より当校の文化祭を開始いたします!』
おおーっ!さすが亜里沙センパイ!簡潔ながらも言葉に抑揚をつけることによって文化祭の楽しみが増す挨拶、恰好良かったです!
「さぁ!メイド諸君!執事のみんな!気合い入れていくわよ!一人でも多くのお客……ご主人様、お嬢様たちを満足してあげること!」
「よっしゃ、やるぞー!」
文化祭という熱は、不思議とみんなに気合いを入れてくれるみたい。誰が言い出したのか分からなかったけれど、『気合い入れるぞーっ!』の声に、みんなで『おおーっ!!』と応えることで我がクラスの出し物、『男女逆転メイド喫茶』がオープンしていった。
さすがに男子のメイド服は目に痛い……誰かをメイドに引き込んでやろう……とクラス委員長は考えていたのかもしれません!そこで見事にターゲットとされたのはもちろん主人公!ド〇キで主人公がメイド服を試着していたところをばっちり見ていましたし、ちょっとボーイッシュな子のメイド服は、所々ギャップがあってウケる!と見込まれたのかも!?
文化祭もとい、お店がオープンです!!
約一名の妄想が爆発していますが、そんな壊れた一面も楽しんでいただけると嬉しいです。『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです。もちろん全ての読者様に愛と感謝をお届けしますよ!!




