第十三話 氷が溶けるとき
「お初にお目にかかりますわね。生徒会『副』会長をしている響麗華と申しますわ。今回は私の生い立ち……ではなく、ジャンヌダルクのように颯爽と登場し、ナイチンゲールのように優しいその身で私を守っていただいた佐久間裕理さんとの出会いを……って、あら?台本と違う?そうだったかしら?」
他の人とは違う、そう感じたのですよ……
~響麗華視点~
『生徒会長って女神みたいに優しくて接しやすいのに副会長って近寄りがたいよな』
『そうそう見た目もキツそうだしね』
『やっぱあの噂って本当なんじゃねぇの?』
『噂って?』
『副会長って猛吹雪のなか生まれたって話』
『え、吹雪のなか拾われた子なんじゃないかって話だったような……?』
どれもこれもが勝手に一人歩きしているだけのどうでもいい話ですわ。
私が冬に生まれた?
拾われた子?
なにを馬鹿な。私の誕生日は夏ですのよ?
例え本当だとしてもなぜあなたがたが知っているのかしら?
どうでもいい噂話なんて興味はありませんの。
所詮は噂ですもの。
『副会長って話しかけても話が続かないんだよな』
『ほんと、挨拶だけして終わりって感じだよね』
『生徒会の仕事も学校生活も必要最低限のことさえしていれば良いって感じなんだよな』
『会長もなんであんな人を副会長に選んだんだろ?』
去年、生徒会の会長を選ぶときには先代の生徒会総メンバーが世月亜里沙さんをご指名したそうですわ。まさに満場一致ということで決まったそうです。ですが一点だけ、世月さんは自分が生徒会長になったあかつきには他の生徒会メンバーは自分に選ばせてほしいと頼んだとのこと。そこに副会長として私が選ばれることに。
最初はお断りさせていただきましたわ。
だって生徒会って面倒な行事、すべての計画や運営を中心に担っていくのでしょう?そんなことには興味ありませんでしたし、なにより私がその位置にいるのはおかしいと思ったのです。
現に今でもーーー
『生徒会って響先輩だけ浮いてる感じがするんだよな』
『あ、分かるー!異質って感じがするよね』
『他にもっと適任の人いたんじゃね?』
同級生からならまだしも下級生でもある二年、そして一年生たちの間でも私が副会長の座にいるのは変だ、おかしい、変わった方が良いんじゃないか、と言われているのを耳にします。
でも世月さんが諦めてくれなかったので渋々、そう仕方なくOKを出したのです。
「麗華、学業の方はどうなんだ?また余計な活動に手を出して勉強が疎かになっていないか?」
たびたびそう問いかけてくるのは私の祖父。
とても厳格で、学生はなによりも学業を大切にしろ、の一点張りです。もちろん祖父の意見には同意しますわ。ただ、一つだけ私にはやめられない趣味……のようなものが。
学校でも真面目な一生徒、家でもしっかりと勉強に励む響麗華として過ごしているなか見つけてしまったのです。キラキラと私の世界を輝かせてくれるものを!
それがゴスロリ……ゴシックロリータファッションだったのです!
たまたま参考書を購入するために本屋を訪れたときのこと、目についてしまったのがゴスロリファッション誌でしたわ。
最初は、なんて恰好をしている子たちなのだろう、とゴスロリファッションに身を包むモデルたちを卑下したものだったのですがゴスロリファッションというものに興味を抱けば抱くほどにそのファッションに魅入られるようになってしまったのです。
「……まぁ、このようなワンピースがこんな値段もするなんて……高いのですわね」
着てみたい。
見ているだけでは満足できずに自分もその袖に腕を通してみたいと考えたのですが残念なことに近場にゴスロリ専門店は存在しないようでしたし、通信販売を使おうものならば「何を買っているの!」と荷物を勝手に開けられお叱りを受けることでしょう。
迷ったあげく、自分で材料を集めて作成すれば安価に済むのでは?
サイズも自分にきちんと合ったモノを着られる!
そうして家族にも秘密にしていることがゴスロリファッションの洋裁でした。
リボンや布の類であれば雑貨屋手芸屋で手に入ることが分かりましたし、細かなモノもじゅうぶんに揃えることができる。
デザインも自分でイチから考えるのは一番難しいことでしたがファッション雑誌で素敵だと思ったデザインを元に自室でミシンと格闘する日々がはじまりました。勉強よりも難しい作業、それでも洋裁に取り組んでいるときは本当の自分として楽しめている時間を過ごすことができていたのです。
学校で何を言われていても平気。
生徒たちのことを思っての生徒会の活動も大変……それでも家に帰れば大好きなゴスロリの世界に浸ることができる!他生徒たちからのくだらない根も葉もない噂話も気にしません。私は私のしたいことをするだけです。別に誰かに認められたいわけでもありませんもの。
ようやく仕上がったゴスロリ!
これは、なんという感動!!!最高の作品が仕上がったと感動している作家さんの気持ちが分かりましたわ!元となるワンピースだけでなく頭部を飾るヘッドドレスもリボンやレースでワンピースの生地と合わせていけば完璧です!(靴はさすがに靴屋で買い求めましたけれど……)
着るものには自分も合わせなければ!と苦手な化粧も勉強し、髪の毛もゆるく巻いて眼鏡を外してコンタクトに。そうして仕上がった姿は服よりも目立つことはなくも普段の私を知る者からすれば「誰ですか、あなたは!」とビックリされるぐらいに明るい印象になった姿。
家族のいない時間帯を狙ってゴスロリに身を包んだ私は生まれ変わったような気分で休日を満喫!……する予定だったのですがーーー
「お嬢さんゴスロリ系?可愛いねぇ」
学校帰りでは決してこのように声などかけられたこともなかったのに見た目をちょっと変えただけでナンパという面倒くさいものに出会ってしまったのです。
無視をしていれば引いてくれる、と思っていたところで颯爽とあらわれたのはまさにジャンヌダルクだったのですわ!
恰好良くあらわれた女騎士は相手が男子であることにまったく引けをとらず、その身に男性陣からの拳を一撃もくらうことはなく、逆に一撃で男性陣をのしてしまったのです。そしてナイチンゲールのごとき優しい心持ちで私をナンパという宿敵から救い出してくださったのですわ!
奇跡……
いえ、これぞ運命なのだと!
その方は転校生してきたばかりの一年生であることを知っていました。生徒会長の世月さんは信頼している人たちにはこっそりと「今度転校してくる子は佐久間さんっていうんだけれどちょっと問題があったとされているの。けれど、それはあくまで噂だから!あまり気にせずに、ね!」情報を教えていてくださったことを感謝しました。
「お、お友達になっていただきたいのです!」
きっと私のことなんて知らないでしょう。
そもそも学年も違いますし。
でも、これから知っていけば良いのですわ!今日がお二人の友情の記念日となるのです!
でも、学校内で私のことを見たら、今このゴスロリ姿とのギャップに驚かれるでしょうか?それとも冷たいと噂されている私に嫌気がさすのでしょうか?
それでも、それでも!!
私は、貴女に出会えたことに神に感謝いたします!
これからの学生生活、分からないことならば何でもお教えいたしましょう!一年生と三年生という学年の差は埋めることはできませんが、そのぶん良いお付き合いをしていきましょう!
って、あら……お付き合い、と考えてしまった?
お、お付き合いって……わ、私たちは女の子同士……そ、そういう方面に知識が無いわけではありませんが……べ、別に私は気にしませんことよ!
ね、私の騎士様!!
学校で挨拶することは少し恐怖もありますが、貴女のためならば勇気を出して会いに行くことを誓いますわ!
つまりはー……副会長はちょろかった、ということですね(汗)
偏見とかではありませんが、真面目な人ほどにいろいろな妄想をしていたり、憧れなものが強かったりするのでは!?と考えてしまいました!!
おそらく、この副会長サンはがんがん来ることでしょう!他のメンツ頑張れ!!!
JKハーレム勘弁!
先の展開が楽しみだ、面白い、笑えた、主人公やキャラクターたちがなんとなく愛せるようになってきたかも!!!とお考えの方、良ければ「ブックマーク」そして「評価」「感想」などもじゃんじゃんお待ちしております!