第十一話 ゴスロリガールの我が儘
カツアゲ?ナンパ?から救出したのはゴスロリ&クールビューティーボイスだった。
だけど私は知らないけれどどうやら同じ学校の生徒らしい。
目の前で喧嘩を起こしてしまったから、もしかしてこのままトラブルガールとして名前を広められてしまうんじゃ……!?
困っている人は放っておけない!性格によって無事に救い出したのはーーー
ゴスロリ&クールビューティーボイスの持ち主でした!
目の前で上品に「クスクス」と笑う仕草からは下品さは感じられなくて、もしかして良いところのお嬢様?でもお嬢様がゴスロリファッションとかに興味あるか?いや、意外とお嬢様って堅苦しい家柄のなかで過ごしているからゴスロリという未知のファッションに手を出してハマってしまったのでは!?
たいして時間もかからずにテーブルに運ばれてきたアイスティーに口を付けつつ(あ、このアイスティー美味しい!紅茶に凝ったお店なのかもしれない!)舌鼓を打ちながら目の前に座るゴスロリガールにちらりと視線を向ける。
ゆるくふんわりと巻かれている黒髪は艶があり、ストレートにしたらさぞかし天使の輪が映えるだろう。
ついついゴスロリファッション自体に注目しがちになってしまうが着ている当人だって相当な美人と思われる。化粧も自分に合った化粧の仕方をしているのか「化粧美人」というヤツだ。
「えーっと……取り敢えず名前を聞いても……?」
ピクリ。
気のせいか?
今わずかに肩が震えたように見えた。
「名前は……今は教えられませんわ」
NO!いただきましたー!
えぇ!?じゃあ、なんて呼べば良いんだ?
ゴスロリガールで良いの?そんなの絶対嫌でしょうに!!
「先ほどの手腕。お見事でしたわ。男子数名を前にしても引くことを知らず、堂々とした振る舞いによって屈服させてみせた手技……素敵でしたわ」
「へ?あ、ありがとう、ございます……?」
優雅にアイスティーを飲みながらクールに、だけれどほんの少し頬を薄紅色に染めながら言葉を紡いでいく艶やかな唇。
え、赤い顔?走ってきたから熱いのかな……アイスティーどんどん飲んでください!
「佐久間裕理さん。私貴女とお友達になりたいのですが……」
「え、友達!?」
友達って、なってみたいからなってください。
っていちいち断りをいれなくちゃなれないものだったっけ?
「ダメ、でしょうか……」
「いえいえ!全然!私で良ければ!あ。あの、でも名前は……」
「それは今は内緒にしておきますわ。いずれ知る時がやってくると思いますので」
友達になりたいとお願いされてこちらはOK!
でも名前を教えるのはどうやら嫌みたい……なぜ!?
「……その、この見た目で分かると思いますが私はこういったファッションが好きでして……」
「あ、はい。好きじゃなきゃ着ないですよね」
うん。
誰も嫌いなファッションを着て歩くような人はいないだろう。
ゴスロリが好きだってことは一目にして分かります。
「学校ではもちろん制服を着用しておりますから……私という人間だとすぐに気付かないかもしれませんが……後日、必ずご挨拶に伺いますので」
え、挨拶?伺う?どこに?私のクラスにってこと??
「えっと、同じクラスメイト……ではないんですよね。名前を教えていただければこっちから挨拶に行きますけど……」
「そ、それはダメです!!その……いろいろ、ありまして……」
そ、そうか。
いろいろ、あるのか……それなら仕方ない(?)のかな。
それにしても名前を教えてくれないゴスロリガール。
学校では制服だからーーー
なるべくファッションを視界に入れないようにじぃぃぃっとゴスロリガールの顔を見つめていると視線に驚いたようにびくついて小さく悲鳴をあげられてしまった。
「な、なんなんですの!?そ、そんなに人の顔を見ても何も出ませんのよ!?」
何か出させようとしたわけではないです。
ただ制服姿だとどんな様子になるのか考えていたんですって!
名前を教えてもらえないことがこんなに大変だなんて……やれやれ。
「こほん。それで、男子たちを退けた手技はどのような流派なんですの?」
流派?
「どこぞの武術や道場に通われたりしているのでは?無駄のない見事な手技でしたが……?」
「あー……アレは……その……」
「?」
このゴスロリお嬢様に『喧嘩』というキーワードの知識はあるのだろうか?
そもそも『喧嘩』ってどういうものか分かりますか?
さっき目の前で繰り広げられていた行為の一つなんですけど……
「さっきのは自己流の……け、喧嘩……みたいなものなんです」
あ、言っちゃった。
「喧嘩、ですか?」
うぐぐ……
やっぱり『喧嘩』を知らないんじゃないかな?目を丸くしているし!
「喧嘩って人と人とが殴り合ったり蹴りあったり半殺しのような目に遭わすものでは?」
意外とシビアな知識をお持ちであったー!!!
しかし、ちょい大げさかもしれんぞ、その知識は!?
「いや、えっと別に毎回半殺しまでにさせるわけじゃ……困っている人とかいるとつい手や口が出てしまって……直さなきゃとは思っているんですが……」
「佐久間裕理さんは喧嘩を一方的な暴力か何かかとお考えですの?」
「!そ、ういうわけじゃ……」
自分が守ったつもりの人たちでさえも私を見る目は怯えていて……
助けたはずなのに、泣かれることもあって……
あれ、これじゃあ人助けをしたつもりが何だったんだろう?今までの私のおこないって。
「貴女は私を助けてくださいました。私とても感謝しております。それに相手に負わせた怪我も最低限のものだったかと。私を助けるための正当防衛だったのではないでしょうか?」
「正当防衛?」
今までそういうつもりで手をあげたことは無かった。
それにゴスロリガールのようにはっきりと謝礼の言葉を向けてくれたことも……
「つまり何が言いたいと申しますと……貴女は良いことをしたのですわ」
「良い、こと?」
「はい!」
喧嘩、ではなかったと?
「えっと、じゃあ今回のことを学校とかお偉いさんとかに言いふらしたりとかは……」
「あら、助けていただいたことは事実なのですから時と場合とによっては報告いたします。ただし、他人にもらすようなことがあったとしてあくまで、人助けをしていただいた、と報告しますわ」
それに……
とゴスロリガールの言葉が続きーーー
「貴女は噂に聞くほどのワケありというわけではなさそうですわね。きっと今までに起きていたことだって噂が噂を呼び、尾ひれがついてまわってしまったのではありませんか?」
なんとワケあり転校生の実情を知るらしいゴスロリガール。
本当に一体何者?
「あー、でも手や言葉遣いが乱暴になることも事実、ですし……」
「私に対してはそんなことありませんが?」
うぅ……
なんだ、この言いくるめられ感は……。
『このサルが、もう少し頭を使え』と兄貴の顔が頭にちらついたのだが無視無視!!
「別に誰にでも乱暴ってわけではないのですよね?しかも状況に応じて、きちんと制するべき対象を弁えているように感じます」
不良に絡んでいたとき妙に静かだな、と思っていたけれどこのゴスロリガールは結構観察眼のようなものでもあったりするのかも?
それに不良に対して怯えていたわけじゃなく冷静に物事を進めようとしていたんじゃないか?私が口出ししなくても穏便に済んだんじゃ……?
「……そういうわけで貴女は引け目を感じることはありませんわ。では、後日、挨拶に伺います。楽しみにしていてくださいませ」
ぺこり。
と音がするような可愛らしいお辞儀をするとスッと立ち上がりそのままササッと会計を済ませて喫茶店を出て行ってしまった。
ん、出て行った!?
慌てて私も席をたつと会計をするべく店員に声をかけたが「会計はお支払い済みですよ」とのこと。いや、自分の分ぐらい自分で……と追ったがその姿はもはや無し。
あのゴスロリガール、ほんとにいったい何者!?
JKハーレム勘弁!十一話お読みいただきありがとうございます!
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