♥ 成人の義と婚礼の義 / 離縁不可な誓い…だと?!
私はコォールス子爵令嬢のサブリエル・コォールスです。
腹違いの姉であるセリシィエンヌお姉様へフォンオスコ公爵様から縁談の話が来ました。
セリシィエンヌお姉様が縁談をする相手は、リィグレーシェド・フォンオスコ公爵様です。
フォンオスコ公爵様との縁談を受けるのを嫌がったセリシィエンヌお姉様の身代わりとして、コォールス子爵令嬢として育てられた妾の娘である私がフォンオスコ公爵様の縁談を受けて、フォンオスコ公爵邸へ嫁ぐ事になりました。
15年間育ったコォールス子爵邸を出発した私は、馬車に揺られ続けながら約20日間の長旅を終えて、目的地であるフォンオスコ公爵領へ入り、その3時間後にはフォンオスコ公爵邸へ無事に到着しました。
未来のフォンオスコ公爵夫人となる私を出迎えてくださったのは、フォンオスコ公爵邸で働く大勢の使用人達でした。
15歳を迎えたものの未だ成人の義を終えていない子爵令嬢の私に対して、フォンオスコ公爵邸の使用人達は深々と頭を下げて手厚く出迎えてくださいました。
胸の奥から何か熱いものが込み上げて来るのを感じます。
涙腺が緩くなってしまったのでしょうか……、私の両目から涙が流れ出して来ました。
お母様を亡くした日以来の涙です。
涙の止め方の分からない私は、暫くの間フォンオスコ公爵邸の使用人達の前で泣いてしまいました。
侍女頭に用意された部屋へ案内されました。
とても素敵な部屋で、本当にこの部屋を使っても良いのかと何度も侍女頭に尋ねてしまいました。
侍女頭から聞いた事は、私の成人の義を執り行った直ぐ後に続けて婚儀を行うとの事でした。
当日の私はフォンオスコ公爵様が用意されたウェディングドレスらしきドレスを着た姿で〈 大陸神 〉と精霊王,妖精王の前で成人の義を執り行い、そのままフォンオスコ公爵様と婚礼の義を結び、夫婦の契りを交わして生涯の愛を誓うのだそうです。
〈 大陸神 〉と精霊王,妖精王の前で婚儀を執り行い夫婦の契りを交わすと離婚する事は生涯許されないそうです。
なんて恐ろしい誓い方なのでしょうか。
それ程までに婚儀とは神聖な儀式なのだそうです。
恐ろしい……。
私の成人の義とフォンオスコ公爵様と私の婚儀は、2週間後に決まっているそうです。
私は2週間、フォンオスコ公爵様の大事な客人であり婚約者として、おもてなしされる事になっているようです。
…………何か、セリシィエンヌお姉様が言う程、悪い人っぽくないのかも??
そんなわけで、お蔭様で私は何事もなく2週間後を迎えました。
フォンオスコ公爵領の中にある立派な教会で、15歳を迎えた私の成人の義が盛大に執り行われました。
続いてリィグレーシェド・フォンオスコ公爵様との婚礼の義が執り行われました。
〈 大陸神 〉と精霊王,妖精王の石像の前でリィグレーシェド・フォンオスコ公爵様と夫婦の契りを交わし、生涯の愛を誓いました。
驚いた事にリィグレーシェド・フォンオスコ公爵様はデブタではありましたけど、ブタヌキで禿げてて口臭い人ではありませんでした。
美顔とは言わなくとも醜くはありませんし、蒼色の混ざった長い銀髪が美しくて、碧い瞳が綺麗です。
声色も心地好くてずっと聞いていたい声ですし、口臭くもありません。
デブタな部分だけを除けば、良好物件だと思います。
今夜の初夜でデブタから繰り出される恐怖ののしかかり攻撃に小柄で華奢な私の身体が耐えられるかが問題です。
今夜の初夜で潰されて死んだりしませんよね?!
窒息死なんて、しませんよね?!
せっかく15歳になって成人出来たのに、明日の朝を迎える前に死んじゃうなんてないですよね?!
巨漢な相撲取りと●●●●した奥さん達って、どうやって恐怖ののしかかり攻撃に耐え抜いたの?!
激しく伝授してほしいんですけど!!
私の命の灯火が今夜──初夜で消えちゃうかもしれないんだもの!!
誰でもいいから、小柄で華奢でか弱い私を恐怖ののしかかり攻撃から助けてください!!
〈 大陸神 〉様,精霊王様,妖精王様──、どうか,どうか,どうか,どうかッッッ、恐怖ののしかかり攻撃から私の命をお救いくださいぃぃぃぃぃいいいいいいいッッッ!!!!
私に御慈悲をくださいませぇぇぇぇえええええッッッ!!!!
私の悲痛な心の叫びは〈 大陸神 〉様,精霊王様,妖精王様に届いたでしょうか……。
──えっ、「 届くわけねぇだろ 」ですって?
そですか…。
侍女が案内してくれた寝室は、初夜を過ごす事になる夫婦の寝室で、夫となったリィグレーシェド様と共に毎晩共に使う事になる寝室です。
私は寝室別にしてほしい派なので、ちゃんと伝えないといけないと固く心に誓っています。
だって、巨漢なカ◯ビゴンの隣で寝たいと思いますか?!
夫の寝返り被害に遭って窒息死なんて、私はしたくありませんよ!!
恐ろしい初夜が刻々と迫って来ます。
私の寿命も刻々と削られていきます。
あぁ……死にたくない!!
新婚初夜でデブタな夫の恐怖ののしかかり攻撃で昇天したくない!!
そんなわけで、夫婦の寝室のドアがノックされて、ドアが開いた瞬間に私の意識はプツリと途切れました。
私は自分の身に何が起きたのか分かりません。
ただ言える事は、妙に身体がフワフワしていたような気がするぐらいでしょうか??
目を覚ました私の身体は寝室のベッドの中にありました。
私の着ている寝間着は乱れていません。
昨夜の新婚初夜は、私は何もされなかったのでしょうか??
意識を失ってしまった妻を無理矢理強姦して孕ますような節操無しのゲス野郎ではなかった──という事でしょうか??
何はともあれ、私は新婚初夜から生還して命拾い出来たわけですね!!
恐怖ののしかかり攻撃の被害に遭わなかった──。
良かったぁ!!
生きている──って、なんて素晴らしいんでしょう!!
あり〜が・と・ご~ざ・いーーーーまっす!!!!