✒ 公爵夫人の異変 6 / 不思議な力
創生王:ニテンス
「 サリーよ。
夫を “ 隷属出来ぬ ” と言うならば、フォンオスコ公爵領地に明日は来ぬと思え 」
サブリエル
「 えっ?
それは…どういう事ですか、ニティ? 」
創生王:ニテンス
「 サリーは察しが悪いか?
言葉通りの意味だぞ。
午前0時を迎える前にリィグレーシェドを隷属せぬなら、フォンオスコ公爵領地を精霊に荒らさせる。
領地が荒れ果てれば、フォンオスコ公爵領民は路頭に迷う事になるぞ。
妖精に疫病でも流行らせても良い 」
サブリエル
「 な゛っ…………はぁっ!?
何ですか、それはぁ!!
領地と領民を人質に取るって事ですか!? 」
創生王:ニテンス
「 当然であろう。
隷属を得るとは、それだけ重大で重要な事なのだ。
領地と領民の明日を衛りたいなら、ボクの言う通り、素直にリィグレーシェドを隷属せよ 」
サブリエル
「 そんな……。
ニティ、こんな……領地と領民を巻き込むような脅迫は狡いです!! 」
創生王:ニテンス
「 狡くはない。
一寸隷属すれば良いだけだ。
ほんの数秒で済む契約だぞ。
簡単に出来るから安心せい 」
サブリエル
「 そんな事…言われても……。
私は………… 」
創生王:ニテンス
「 タイムリミット迄、時間は十分ある。
良く良く考えよ。
領民を飢えさせ餓死さても構わぬなら拒否すれば良い 」
ニテンス様は私に対して、とても残酷な事を言い出しました。
ニテンス様は私を困らせる為に、リィグレーシェド様を隷属させようとしている訳ではないと思いたいです。
公爵で領主であるリィグレーシェド様を隷属して本当に良いのでしょうか……。
創生王:ニテンス
「 そんな思い詰めんでも良かろう。
──サリーよ、〈 大陸神シピアンドダレ 〉を祀っておる祭壇を見たい。
案内せい 」
サブリエル
「 御宝殿の間へ行きたいのですか?
案内致しますね 」
リィグレーシェド様を隷属する件は、取り敢えず保留したいと思います。
1人では決められないので、リィグレーシェド様が御帰宅された際に相談したいと思います。
私は気持ちを切り替えて、ニテンス様を御宝殿の間へ案内する事にしました。
──*──*──*── 御宝殿の間
サブリエル
「 ──此処ですわ、ニティ。
屋敷の敷地内で暮らして働いてくれている使用人なら誰でも好きな時に此処を訪れる事が出来ます。
扉ではなく、リボンカーテンを取り付けて頂きました 」
創生王:ニテンス
「 ほう?
多様な色のリボンがはためいておるな 」
サブリエル
「 リボンカーテンの先が御宝殿になります 」
創生王:ニテンス
「 ほぅ?
祭壇ではなく御宝殿と呼んでいるのか? 」
サブリエル
「 は、はい。
壁に〈 大陸神シピアンドダレ 〉様の刺繍画を掛けさせて頂いてます。
埃を叩きは易くする為に紐を引いたら、刺繍画を下げれるようにしたんです。
上の1段目には〈 大陸神シピアンドダレ 〉様への御供えを置いています。
水,紅茶,パン,小麦…若しくは米,塩の5穀を御供えさせて頂いています。
2段目の右側にはフォンオスコ公爵家の御先祖様方の御位牌を置いて御祭りさせて頂いています。
左側にはフォンオスコ公爵邸で働いてくださっている使用人達の御先祖様方の御位牌を置いて御祭りさせて頂いています。
3段目には左右に御祭りさせて頂いている御位牌へ御供えしています。
水,紅茶,パンの3穀を御供えしています。
4段目には花瓶に生けた花を御供えさせて頂いています 」
創生王:ニテンス
「 ほぅ。
花が置かれておるな 」
サブリエル
「 献花ですわ。
本当なら蝋燭や線香を使いたいのですが、消し忘れがあると困りますから、〈 大陸神シピアンドダレ 〉様と御先祖様方へ献花を御供えして御祈りをさせて頂いております。
献花の花は〈 大陸神シピアンドダレ 〉様を表し、献花の葉は御先祖様方を表し、献花の茎は自分を表しております。
〈 大陸神シピアンドダレ 〉様に今日という日を無事息災に過ごさせて頂けるように、また御先祖様方を守って頂けるように毎朝、希望の祈りを捧げています 」
創生王:ニテンス
「 言いたい事は山程あるが……、サリーの〈 大陸神シピアンドダレ 〉を慕う心掛けに免じて大目に見てやろう。
サリーよ、御主は転生者であろう 」
サブリエル
「 えっ…………ニティ…分かるんですか? 」
創生王:ニテンス
「 うむ。
300年前にも見たからな。
そうか……サリーも “ 日本人 ” とやらか 」
サブリエル
「 日本人…………ニティは日本人の転生者に会った事があるんですか? 」
創生王:ニテンス
「 1000年も≪ シピアンドダレ大陸 ≫を見とれば会うわ。
記憶を持ったまま生まれ変わる転生者は珍しいがな。
何れも陸な事をせん輩ばかりだったがな 」
サブリエル
「 そうなんですか~~? 」
創生王:ニテンス
「 前世の記憶を持っておる事を打ち明けた相手はおるのか? 」
サブリエル
「 いえ、未だ誰にも……。
ニティが初めてです 」
創生王:ニテンス
「 賢明だったな。
サリーよ、今後も前世の記憶を持っている事は伏せよ。
ボク以外に打ち明けてはならんぞ 」
サブリエル
「 ……それはリィグレーシェド様にもでしょうか? 」
創生王:ニテンス
「 当然だ。
生きとし生ける全ての生物は皆、誰しもが転生者である。
然しだ、前世の記憶とは本来、魂の奥底で眠っているものだ。
“ 覚えている ” はイレギュラーな事態なのだ。
この世界では前世の記憶を持つ者は “ 異端者 ” として扱われる。
サリーよ、何故か分かるか? 」
サブリエル
「 えぇと…………色々とやらかしちゃったから……ですか? 」
創生王:ニテンス
「 うむ、そんな所だな。
≪ シピアンドダレ大陸 ≫で前世の記憶持ちが1番してはいけない事をしたが故、他の前世の記憶持ちがとばっちりを受ける事になったのだ 」
サブリエル
「 一体何をしたんですか? 」
創生王:ニテンス
「 布教活動だな 」
サブリエル
「 布教活動ですか?
〈 大陸神シピアンドダレ 〉様の──では無さそうですね~~ 」
創生王:ニテンス
「 うむ……〈 大陸神シピアンドダレ 〉の布教活動ならば何等問題もなかった。
だが、前世の記憶持ちが熱心に布教したのは、前世に自分が信仰していた宗教が崇め奉っていた神だ。
中には神は神でも人間を神格化させ奉っていた神も居てな、余計問題となった 」
サブリエル
「 …………何か分かります…。
私は佛教の知識が無いですから詳しくは知らないんですけど……、亡くなった偉人や貴人の霊を神様化して御祭りして信仰している神社仏閣とか沢山ありました 」
創生王:ニテンス
「 前世の記憶持ちは何も日本人だけではない。
様々な外国人の転生者も多くてな、日本人の転生者よりも外国人の転生者の方が布教活動に熱心だったぞ。
特にキルスト教を≪ シピアンドダレ大陸 ≫に弘めようと躍起なって布教しとった転生者は凄かった。
〈 大陸神シピアンドダレ 〉を悪と決め付け、『 キルスト教こそが世界を救う善である 』とか流布しておったから、宗教戦争勃発手前まで行きおった 」
サブリエル
「 あぁ…………何か分かります…。
キルスト教は前世の世界でも、邪魔になる宗教に対しては、そんな感じで他宗教の神様を勝手に悪魔に変えたりして潰してましたね…。
異世界人に生まれ変わっても〈 大陸神シピアンドダレ 〉様を受け入れられなかったんですね… 」
創生王:ニテンス
「 そんな事が起こったが故、前世の記憶持ちは未だに危険視されておる。
例え、王族生まれであっても前世の記憶持ちである事が知られれば、身分を剥奪され “ 異端者 ” の烙印を身体に押される。
異端者収容所へ連行され、犯罪者ではないものの囚人と変わらん扱いを受けながら監視されて生きる事になるのだ。
他者には打ち明けるでないぞ 」
サブリエル
「 わ、分かりました。
ニティ以外には打ち明けませんわ 」
ひぇ~~~~です!
“ 前世の記憶を持っている ” ってだけで、とんでもない目に遭うんですね。
全く知りませんでした…。
私……フォンオスコ公爵家に嫁いで来てから、かなりやらかしてる気がするんですけど、大丈夫なのでしょうか??
不安になって来ましたぁ~~~~。




