✒ 公爵夫人の異変 3 / 不思議な力
──*──*──*── 洗濯室
洗濯室へ着いた私は、正に今から洗濯に取り掛かろうとしている侍女達に声を掛けて1ヶ所に集まってもらいました。
侍女達へ汚れている洗濯物を1ヶ所に集めてもらうようにお願いをすると、不思議そうな顔をしたり、首を傾げながらも汚れた洗濯物を集めてくれました。
侍女の1人から「 奥様、何をされるおつもりですか? 」って聞かれたから、「 試してみたい事があるの 」とだけ伝えました。
侍女達は私が汚れた洗濯物を前にして、今から何をしようとしているのかハラハラしながら見ています。
水で洗わないと綺麗にならないと野菜でも出来たのなら、洗濯物でも出来る筈ですよね?
絨毯に染み込んだ紅茶の染みも綺麗に消えてましたし、絨毯も新品同様に綺麗になりました。
洗濯物にも同じ効果を得られる筈です!!
私は汚れた洗濯物を掴みます。
すると、掴んだ部分から洗濯物の汚れがみるみると綺麗に消えて行き、まるで新品のように洗濯物は綺麗になりました。
この一部始終を見て、侍女達は声を上げるのも忘れて驚いています。
私は次々に汚れている洗濯物を掴んで、汚れを消して綺麗にして行きました。
サブリエル
「 凄い!
やっぱり、これは “ お掃除魔法 ” ね!!
この魔法が有れば貴重な水を節水する事が出来るわ!! 」
洗濯物が新品のように綺麗になって行くのが楽しくて、ついつい無邪気にはしゃいで喜んじゃいました。
侍女達は私の魔法によって新品に生まれ変わって行く洗濯物を見て驚いています。
大量の水を使わずに大量の洗濯物を綺麗にする事が出来て、侍女達から物凄く喜ばれました。
洗濯物をしないで済んだ分、他の仕事に時間が回せると感謝をされて御礼も言われました。
侍女達に見送られながら、新米メイドと一緒に洗濯室を出た私は、リィグレーシェド様が屋敷を留守にしている間、屋敷の管理を全て任せている執事長の元へ行く事にしました。
執事長はリィグレーシェド様の御父様が産まれた頃から執事長補佐を任命されていたそうで、フォンオスコ公爵邸の為に生涯を捧げている筋金入りのリグ様教信者でもあります。
私が執事長へ伝える事は『 突然、魔法が使えるようになった事 』と『 汚れた物を綺麗に出来る魔法である事 』と『 貴重な水を節水する事が出来る “ お掃除魔法 ” である事 』を伝えるつもりです。
私が魔法を使えるようになった事を執事長に信じて頂けるように、汚れている野菜を1つと洗濯物を1枚、新米メイドに持っていてもらっています。
執事長室の扉をノックした私は、中から聞こえる執事長の声を聞いてから新米メイドと一緒に執事長室の中へ入りました。
──*──*──*── 執事長室
執事長室へ入室した私は、仕事中の手を止めて私を迎え入れてくれた執事長に御礼を言ってから、『 突然、魔法が使えるようになった事 』と『 汚れた物を綺麗に出来る魔法である事 』と『 貴重な水を節水する事が出来る “ お掃除魔法 ” である事 』を伝えさせて頂きました。
執事長は私に魔法を使える素質が無い事も魔法力が無い事も知っています。
私は素質持ちの〈 エナ 〉ではなくて素質無し〈 ノマ 〉なのです。
〈 ノマ 〉である以上、魔法を扱う事は出来ません。
それは≪ シピアンドダレ大陸 ≫では常識で陸民ならば、誰でも知っている基本中の基本です。
ですから、執事長が私の言葉を聞いて怪訝な顔をされたとして当然の反応なのです。
キチガイ扱いされて地下牢へ閉じ込められて「 暫く頭を冷やすように 」と心配されても仕方無い事なのです。
流石に執事長の権限を持ってしても公爵夫人を地下牢に閉じ込めるなんて芸当は出来ないと思いますから、自室にて数日間の外出禁止を言い渡されるのが精一杯だとは思いたいです。
そんな訳で、実際に見てもらわないと信じてもらえないだろうと考えて、私は前以て新人メイドに汚れている野菜と洗濯物を持っていてもらっている訳です。
私は新米メイドに土で汚れている野菜と洗濯物を執事長の前に出してもらいました。
私は執事長へ「 見ていてください。手品みたいなんですよ 」と笑顔で言ってから、新米メイドに持たせている汚れた野菜に触れて見せました。
すると土で汚れていた野菜が瞬時に綺麗になります。
「 見ました? 不思議でしょう? 」と言いながら汚れている洗濯物にも軽く触れてみます。
みるみる内に新品同様に綺麗になっていく洗濯物の様子も見てもらいました。
この不思議な現象を刮目してくれた執事長に対して、「 汚れが落ちずに困っている物は有りませんか? 」と聞いてみると、執事長は長年使い続けている懐中時計を出されました。
使い古されている懐中時計は所々が汚れています。
落としたくても落とせない汚れなのでしょうね。
私は執事長が半信半疑に出された懐中時計に触れてみました。
野菜や洗濯物と同様に私が触れた場所から魔法に掛かったように汚れが消えて綺麗になっていきます。
執事長の懐中時計は新品同様に生まれ変わりました。
使い古されているみたいなので、性能面まで新品同様に戻るとは思いませんけど?
この一連の一部始終を目の当たりにした執事長から、直ぐに当主であるリィグレーシェド様へ緊急用の手紙を出す事を伝えられました。
“ 緊急用の手紙を出す ” という事は、緊急性のある事だという事ですね?
そんなに急を要する事なのでしょうか??
素質無しの〈 ノマ 〉である私が魔法を使えるようになった原因は不明ですけど、私が魔法を使えるようになった事に関しての一切をリィグレーシェド様に一任した方が良いと執事長は判断されたみたいです。
執事長から「 フォンオスコ公爵邸で働いている使用人達を緊急召集して、奥様の事を話させて頂きます 」と言われました。
どうやら執事長は〈 ノマ 〉の私が “ 魔法を使えるようになった事 ” を他言無用として、外部に一切漏らさせないように使用人達へ釘を指す──先手を打つ気のようです。
私は執事長から「 旦那様が御帰宅なされる迄は、人前で魔法を使わないでくださいませ 」と止められてしまいました。
戸惑っている様子の執事長を困らせる気はないので「 分かりました 」と返事をした私は、大人しく自室へ戻る事にしました。
何故かは分からないけれど、授かった便利な “ お掃除魔法( 仮 ) ” を活用して、どんな節水が出来るようになるかを考える事にしようと思います。
節水が出来る = 浮いた水を領民へ回せる。
素晴らしいですよね!!




