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episode 3 好奇心


ばぁちゃんが用意してくれた晩御飯を舌鼓しながら、4人で談笑を広げていた。

ここに来てから、食べ物食べてばっかりな気もする。


チラリと大きめな窓に目を向け、外を見る。

田舎の為か、街灯などほとんど見当たらず、辺りは静寂な闇に包まれているようだった。


「そんで、この子ら2人な高塔山(たかとうさん)の川に服着たまんま入ってびしょびしょで帰って来てなぁ」


「へぇ、虎は何となく分かるけど、海くんまで服のまま川に入るのは意外だなぁ。」


「小学校の頃地元の子と一緒に川に入って遊んでたんですよ!!」



「あぁ、それ確か、虎丸が川に突っ込んで行ったのは良いけど、思った以上に川が深くて溺れていたから俺が助けに入って濡れたやつか・・・」


昔話に花が咲く。虎之助は昔の恥ずかしい話を白咲さんにバラされたことにぷんぷんとか言いながら怒っていたが。



「あっそう言えば、ばぁちゃん。昔この家の床下部屋に書斎みたいなところなかったっけ?」


「あぁ。よー覚えとんしゃーね。あそこの本もどげんかせんといかんばいね。」


「あっ、じゃあ後で俺見て来てもいい?ちょっと興味あるし。」


昔、床下部屋の書斎を見たとき、古めかしい本がたくさんあったことを思い出す。

今なら読める本もあるたろうから、ここを去る前に最低でも1冊は読んでおきたい。


「よかよか。ばぁちゃんには必要なもんでもなかけ、海ちゃんが欲しいなら持っていき」


祖母の許可も貰ったし、後で書斎の方へ行こう。


「海くんは本を見に行くのか〜。白咲さん、僕達はどうします?」


「う〜ん、俺は少しこの辺りを散歩してみたいかな?」


「それなら、さっきも言った高塔山に行ってみんね。頂上付近に、新月の時のみ咲く綺麗な花があるんよ。今日は新月やし、いいもんが見られるばい。」


祖母の案に、ホスト2人組はかなり乗り気のようだ。特に虎之助。目で見てわかるように、テンションが上がっている。


「本当に!?せっかくだし、僕みてみたいっ!!行きましょうよ!白咲さん、海くん!」


「そうだな、俺もちょっと見てみたいから付き合うよ、虎。」


「俺はパス、あんまり興味ないし本読みたいし。」


海くんノリが悪いよ!と虎之助が不貞腐れたように頬を膨らませているが、白咲さんがいる為かすぐに顔を正す。

虎之助しかり、桜子ちゃんしかり、この兄妹は本当にそっくりだなぁ、なんてしみじみ思う。


「とーら、行かないって言ってる人を強制したらダメだろう?海くん、写真撮ってくるから俺たちのことは気にしないで、海くんはゆっくり本を読んでね。」


白咲さんの笑顔に少しだけ罪悪感が芽生えるが、正直花にはあまり興味ないし、本も読みたい。


「ふみさんが言うには高塔山はそんなに大きな山じゃないらしいし、少し見てすぐに帰ってくるね。」


「白咲さん!昔よく山で遊んでいたので、案内は僕に任せてください!!」


晩御飯も食べ終わり、2人はすぐに祖母の家を出て行く。どうやら車で高塔山の近くまで行くみたいだ。車に乗り込む2人を見送り、俺は床下部屋へと直行する。


最低でも、最低でも2冊は読みたい。1冊とか思っていた気もするがあれは嘘だ。

とにかく、時間が許す限り読もう。


昔虎之助と2人で見つけた床下部屋へ進む。

この部屋の扉は隠されるようにしてあった為、秘密基地だ!と子供ながらに探究心を刺激された記憶があった。


少しカビ臭く、埃っぽい様子から随分とこの床下部屋に人の出入りは無かった事が伺える。

窓が無い為、一寸の光も差さないこの部屋に持ってきていた懐中電灯を照らす。

事前にばぁちゃんから電気が通っていない事を聞いておいて良かった。


取り敢えず、本のタイトルを読んで興味が惹かれた物を持って部屋に戻ろう。出来たらこの土地特有の物がいいな。

言い伝えや、古くから残る風習とかを記された本とか。


本を指で差しながら、真剣に吟味する。

そうだ、この本ばぁちゃんが要らないなら全部引き取って榎並先生に預けてもいいなぁ。そしたら俺も気軽に読みに行けるし・・・


そんな事を考えていた時、1冊の本に目が止まる。


「『髙塔 五十六助伝記』?」





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