episode 3 田舎へGO!!
数日前、実家の母から祖母の家に行って、引越しの手伝いをしてほしい、と頼まれた。
この前祖父が亡くなり、祖母1人にするのは心配だと言う事で、実家の方で来月から同居をする事になった。
その事を虎之助に世間話の一環として話をしたら
「じゃあ、僕も手伝いに行くよ!!ふみばぁちゃんには昔お世話になったし!」
と祖母の家について来る事となった。虎之助も、昔祖母の家へ遊びに行った事があるし、引越しの手伝いが増えるのは助かる。
そして、手伝いに行く当日。
「やぁ、海くん。おはよう、今日もいい天気だね。」
何故か俺の目の前には、キラキラとした恐ろしい程のイケメンが8人乗りのファミリーカーを背に立っていた。
ファミリーカーですら、この人の恍惚なオーラの前では高級車のようにも見えるから不思議だ。
眼前の、上品な金髪にスーツ姿の男。ホワイト・キャッスルNo.1ホストである白咲 新さんは優雅な足取りで俺に近づく。
「話は虎から聞いてるよ。俺も君やふみさんの力になれたらな、と思って。海くんにはいつも弟分がお世話になっているしね。あっ、ごめんね、連絡もしないで急に押しかけたりしてしまって。」
申し訳なさそうに詫びるイケメンに、こちらが物凄く萎縮してしまう。
「い、いえ!むしろ助かります」
イケメンを引越しの手伝いになんか使っても良いのだろうか?バチでも当たりそうで怖い。でも、白咲さんにここまで言わせておいて、断ると・・・
ホワイト・キャッスル所属のホスト総出で闇討ちに来そうで怖い。心底怖い。
「あの、白咲さん。この車は・・・」
「あぁ、俺の愛車だよ。」
車内は広いから、荷物とか好きに置いてね。と爽やかな笑みを浮かべる。虎之助を介して何度か白咲さんと会ったが、いい人すぎて若干苦手だ。
虎之助が毎度毎度、狂信的に白咲さんの話をする事も原因の1つだろうが。
「白咲さんっ!!今日は1日よろしくお願いします!!」
気配もなく、何処からともなく現れた虎之助は、白咲さんの前で綺麗な礼をしていた。
本当に、こいつはいつのまに来たのだろうか?
「むしろこっちがよろしくな?何かあったら、いつでも俺を頼ってくれ。こう見えても、力はあるから」
「白咲さんっ、僕も、僕もいつでも頼ってください!!」
2人のやり取りに、若干引いた視線を送りながら、俺は白咲さんのファミリーカーに自分の荷物を詰め込むのだった。
祖母の家がある場所までは、ここから車で2時間。
結構な長旅になりそうだから酔い止めを飲んでおかないとな。
あれから3人で白咲さんの車に乗り込み、高速道路を走らせる。あと1時間もしないうちに祖母の住む町に着くだろう。
「海くん、次の場所で高速を降りたらいいかな?」
「あっ、はい。次で大丈夫です。」
「白咲さん、相変わらず運転が上手いですね!!」
「それにしても、意外ですね。白咲さんなら高級車とか乗ってそうなイメージだったんですが・・・」
「ん、確かに外車とか見るとかっこいいなって思ったりもするけど・・・こっちの方が弟分達をたくさん乗せて遊びに行けるだろ?」
「白咲さんっ、僕、僕感激です!!」
助手席に座る虎之助は、これでもかと言わんばかり声を張り上げ白咲さんを褒め称える。
今日1日、こいつのこんなテンションを見続けなければいけないのかと思うと、それだけで憂鬱になりそうだ。
しかも、こんな顔面偏差値レベルが飛び抜けて高い2人と一緒に歩くなんて、田舎でなければ遠慮しているところだった。
「はぁ・・・」
小さく、この2人には聞こえないようにため息をつき、車のシートへ深く座り直した。
到着まで心も体もしっかり休めておこう。そう、思いながら白咲さんたちを祖母の家まで案内するのだった。
道はこっちで・・・あってるはずだよね?
EP3が始まりました!ついに例のあの人、白咲さん登場です。




