episode 2 掴めない情報
昼過ぎに、近くのカフェで中原さんと落ち合う約束をした。虎之助から
「ごっめん海くん☆僕これから同伴があるんだ!またなんかあったらすぐに連絡してね〜」とのお言葉をいただき桜子ちゃんの見ていないところで、軽く小突きました。
虎之助の方について行くかな?と思っていた桜子ちゃんは意外にもすんなりこっちの方へ同行する。
「最近のGPS機能って、性能が良いですよね。」
と、同意を求められたが俺は何も言えなかった。桜子ちゃんと2人で待ち合わせのカフェへ入店すると、すでに中原さんが座って待っていた。
「遅いですよ。僕を呼び出したんですから、普通は先に来ているものでしょう。」
「すみません、お待たせして。」
中原 光太郎さん。小柄で幼い顔立ちだが、今年で27歳らしいから驚きだ。外見だけだと、高校生ぐらいにしか見えない。
儚げな印象を持つが、本人の性格はかなり高圧的だ。頼り甲斐はあるが、俺は少し苦手。
「僕も暇ではないので、今日までの経緯を簡潔に話してください。ストーカー女については聞きましたので、その後のことだけで結構です。」
中原さんからの質問に答えつつ、出来るだけ正確に女の特徴、様子などを伝える。
虎之助の時とは違い、桜子ちゃんが斬った事も隠す必要がないので話す。
「成る程。ストーカー女の話は前々からネットでも話題になっていましたし、被害も何件か報告されていたので、こちらでも多少は調べていました。」
ストーカー女が出没する条件は、21時〜22時の間に男女2人組で南十字路を通る事。
そして、その後ストーカー女を見た男は不可解な現象に襲われる。
謎のメール、家中で鳴り響くノック音、金縛り等。
「そして、ノック音がした時に窓、あるいは、扉を開けてしまうと包丁を持ったストーカー女が入ってくるらしい。実害が出たのは、錯乱した男が窓から飛び降りた、って事ですが。」
今もその人は病院で震えてるそうですよ、と中原さんは、一息つきながら頼んだコーヒーを飲む。
「家の方まで来る、という話を聞くまでは単なる地縛霊かと思っていたのですが、自由に動けるとなると話は別。これ以上被害は増やしたくありませんからね。」
「あの、俺達はもう大丈夫何でしょうか・・・」
「確実に大丈夫だ、とは言えないでしょうね。そのストーカー女のターゲットは今上条くんでしょうし。事の真相が明確になるまで、山田家のお世話にでもなっていてください。」
だからこの件に関わるなと言ったとに、と深くため息をつかれた。それをもっと早くに、准教授へ言っていただきたかった。
そうすれば、俺もこんな厄介なことに巻き込まれないで済んだのに・・・
「山田妹さんも、貴女なら大丈夫そうですが、自衛には徹してください。」
「はい、本気で自衛に徹します。」
「では、何か分かり次第連絡してあげましょう、それでは。」
正直、大した情報を持っていなかった中原さんは僕たちに一言告げ、カフェから出て行く。
まぁ、少なくともノック音がした時に窓を開けなければ何とかなるのか、な?
「海さん、明るいうちに南十字路を見て見ませんか?」
「えっ?」
「もしかしたら、ストーカー女に繋がる手がかりが落ちているかも知れませんよ。昨日は通っただけでしたし。」
成る程、一理ある。このままずっと虎之助の家にいるなんて、ストレスが溜まる一方だ。
俺の勉学にも影響が出るかも知れない。
急いでストーカー女をどうにかしなければ。
「兄様の家で2人きりなんて、許せない。早く、早く海さんを家に帰さないと・・・ただでさえ、白咲が邪魔なのに・・・」
桜子ちゃんが、怖い。
ストーカー女、勉強、桜子ちゃん。普通に、平和に暮らしていたいだけなのに、どうしてこんな事になったんだろうか・・・
ていうか中原さん、自分が飲んだコーヒー代俺に押し付けて帰った。俺金あんまり持ってないのに!!




