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俺と君達のダンジョン戦争  作者: トマルン
第二章 序盤戦とか外交とか色々
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第三話 リンゴ飴と汚い花火

 深い、深い森の中。

 乱雑に切り倒された木々。

 その合間を縫うように、大地に突き刺さった粗雑な杭。


 何十本もの杭には、ゴブリン、ハーピー、ドラゴンなど、様々な魔物が生きたまま突き刺さっていた。

 彼らの腕程もある木の杭が、肛門から口腔まで貫通している彼らは、文字通りの生き地獄を味わってる。


『ギィィィィ……』


『ピィィィィ……』


 初めの頃は耳を塞いでも脳裏に突き刺さる、痛みと恥辱、恐怖と絶望が入り混じった絶叫を上げていた彼らも、時間と共にだんだんと衰弱していく。

 今ではろくに声も出せず、ただ涙を流している者までいる。

 本来、串刺しにされている魔物達は、敵と勇猛果敢に戦い、敵と刺し違えてでも勝利する覚悟を持った勇士であった。

 

 敵と戦い、そして無残にも敗北した。

 その結末が、誇り、仲間、自由、それら全てを奪われた挙句、無理やり生かされているこの光景だ。

 彼らの内心に渦巻く、後悔と悲しみは如何ほどのものか、想像するまでもないだろう。


『グゥォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』


 突如、森の中に凄まじい雄叫びが轟いた。

 魔物達の悲痛な叫び声はもちろん、内心の絶望まで一瞬のうちに吹き飛ばしてしまったその雄叫びは、彼らにとって、なじみ深いものだった。

 大きく、強く、気高く、偉大で、勇猛で、そして何より、部下想いの敬愛する我らが連隊長。


 絶望に包まれた彼らの心中、そこに芽生えた希望の芽。


『ガァァァァァァ』


『ブヒィィィィィ』


 連隊長の雄叫びに続き、戦友達の雄叫びが空気を震わせる。

 来た。

 仲間が来た。

 助けに来てくれた。


 希望の芽は、瞬く間に成長し、天を衝くばかりの大樹となる。


『ギィィィィィィィィ!』


『ピィィィィィィィィ!』


 魔物達は、残された力を振り絞って、戦友の声に応えた。

 即座に、先程以上の雄叫びが森を駆け抜けてゆく。

 すぐに助ける!

 もう少しの辛抱だ!!

 決して諦めるな!!!


 囚われの戦友を鼓舞するかのような雄叫びに、魔物達はあらん限りの雄叫びで応えた。

 彼らの雄叫びは共鳴し、森林地帯を包み込んだ。

 

 そして、遂に、彼らの連隊長、部下を助けるために自らの直轄部隊を動かした漢。

 鈍色の肌を持つ筋骨隆々の巨大なオーガが、森の中から姿を現した。

 そのオーガに続くように、様々な種族の魔物が現れる。


 俺達は助かった!

 戦友を助けられた!


 二つの想いが重なった時————


「感動の再会をおめでとう。

 心ばかりだが、祝福の花火を上げてやろうじゃあないか」


 視界を焼く強烈な閃光、そして大地を震わせる轟音。

 

「汚い花火はぐんまちゃんの十八番おはこですねー!

 とっても素敵です!!」


 初めてぐんまちゃんとダンジョンに行った時のことを思い出して、ドキドキしちゃいます! そう言って恥ずかしそうに頬を染める高嶺嬢。

 俺はそんな彼女が全く気にならないほどの、罪悪感に襲われていた。


 自分でやったことだけど、流石に人間としてどうよ?

 自分に自分でドン引きだよ!

 もしかしたら高峰嬢の狂気が感染してしまったのかもしれないな。


 まあ、今はそんなことは良いだろう。

 設置していたC4を、魔物集団の到着と同時に起爆したことにより、救援に駆け付けた魔物達は絶賛混乱中だ。

 ここで退却を許してしまえば、再度同じ手を使ったとしても誘き出すことはできない。


「高嶺嬢、混乱中の魔物達を殲滅してきてくれ。

 俺達は周辺で退却を図る敵を掃討する」


「分かりましたー。

 今度は私が良い所を見せちゃいますよー!」


 そう言うやいなや、高嶺嬢は刀を片手に駆け出して行った。

 俺達は爆破の衝撃を避けるために、囮の位置から200mほど後方の簡易塹壕に隠れていた。

 その程度の距離は、彼女の駿脚にとって目と鼻の先に過ぎない。


 魔物達が発する混乱の鳴き声が、襲撃者に対する怒号へと変化するのに時間はかからなかった。

 俺は8体の従者ロボから3体ずつ抽出して、2つの隊を編成し、それぞれ魔物集団の両横から掃討を命令する。


 残りの従者ロボ2体は、護衛として俺と共にこちらへ急行する人類同盟への足止めだ。

 串刺しにされた魔物達の絶叫、ダンジョン深部からの魔物集団の大移動、とどめに先程の大爆発。

 人類同盟はもちろん、他国の探索チームを呼び寄せる要因は山ほどある。


 無人機による哨戒網には、こちらへ真直ぐに向かっている人類同盟の先鋒が報告されていた。

 彼らが高嶺嬢のもとに到着すれば、共闘の名の下に魔石を一定数差し出さなければならなくなる。

 それを断るには、こちらの見掛け上の戦力はいささ心許こころもとな過ぎた。


 1000体超の魔物に挑む2人とロボ8体。

 誰がどう考えても、大量の魔石に目がくらんだ蛮勇でしかない。

 それに俺達日本は、既に3回も階層攻略を達成しており、他国から警戒されている可能性が十分ある。

 こんな状況になっても政治闘争は存在している以上、俺達の強化を阻もうとする動きは必ず出るはずだ。

 ならば、人類同盟が戦場に到着する前に彼らと話を着けるしかない。


 俺は2体のロボ、最初期から付き従っている美少女と美少年を伴って、ここからでも確認できる全高20mの人型機動兵器に向かって歩き始めた。

 もちろん、事前に迷彩を解いた無人機をあちらに遣わせるのも忘れない。

 流石に気づかれないまま踏み潰されるのはごめんだ。


わざわざ投入する戦力を減らしてまで、政治取引を行わなければならない人類。

とってもすてきね!

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― 新着の感想 ―
どうも3周目のパパイヤですよー うーん残酷!現実とか世界ってそんなもんだよね! 残酷な話されると可哀想って思うけど可哀想なのってこの人達だけかなとか、他にいないのかなとか考えるとやっぱ以外といるよね。…
[一言] 活かしたまま、串刺しなんか東側が既にやってそうなんだけどね。
[良い点] oh...4世界…… 悪魔族の住まう魔界になんて宣戦布告しちゃうから……
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