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俺と君達のダンジョン戦争  作者: トマルン
第一章 導入や基本的な諸々
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第二十一話 鬼畜なノルマと大天使

『ミッション 【今日も元気に魔石狩り!】

 資源チップを納品しましょう

 鉄鉱石:150枚 食糧:100枚 エネルギー:200枚 希少鉱石:100枚

 非鉄鉱石:150枚 飼料:100枚 植物資源:150枚 貴金属鉱石:100枚

 汎用資源:50枚

報酬 LJ-203大型旅客機 2機

依頼主:第113代内閣総理大臣 高嶺重徳

コメント;よっ、日本の救世主!』


 一週間も経たない内に、ついに1000体斬りをコンスタントに要求してきた日本政府。

 今まで納入してきた資源は、鉄鉱石やエネルギーだと1000万t近くになる。

 明らかに日本の需要を満たしているはずだ。

 野郎、この機に散々蓄えるつもりだな……


 ゆるす!

 だって祖国だもん!!


「よーし、今日のノルマは達成ですー!」


 ちょうど高嶺嬢が1000体斬りを達成したようだ。

 初日に比べて大分見晴らしの良くなった元神殿群を見渡せば、一面に天使達が転がっている。

 せっせと魔石を回収しているロボット達を横目に、高嶺嬢は休憩を、俺はロボット一体と無人機を連れて残敵掃討を行う。


「ひゃぁ、疲れちゃいましたー」


 そう言いながらも俺について来る高嶺嬢。

 その辺の瓦礫に座っていればいいものを。


「瓦礫の下、敵2体が潜伏」


 索敵マップと捜索、聞き耳を駆使して、息を潜めて奇襲のチャンスを狙っている敵を、順番に潰していく。

 ここまで一方的に殲滅されると、魔物達なら逃げて行ったのだが、天使達は最後の瞬間まで死に物狂いで襲い掛かってくる。

 まさに高嶺嬢が最初言った通り死兵だ。

 

『悪魔め、地獄に落ちよ!』


 天使達の怨言が直接脳裏に突き刺さる。

 奴らの会話手段はテレパシーの様に、意思を相手の脳に直接伝えるやり方のようだ。

 この手法の厄介な所が、言葉と同時に強い感情も伝わる所だ。


 その際の伝達量は、ステータスの知能と精神に依存するらしい。

 知能が高いほど強く伝わり、精神が強いほど相手からの感情が抑制される。

 俺の場合、精神が17で、16の知能よりも高いので、一つ一つはそうでも無いが、量で来られるとキツイ。


 1000を超える天使達を蹂躙しつくした高嶺嬢だと、常人では容易く発狂してしまうほどの怨念を浴びせられているはずだ。

 しかし幸いなことに、彼女は24の精神に比べて知能が僅か2と、極めて少ない。

 要は、鈍感な馬鹿に何を言っても無駄ということだろう。


 俺達は神殿群を掃討しながら、無人機が発見した神殿の一つに向かっている。

 その神殿の構造は、像が設置された広間に簡素な生活空間が付属している他の神殿とは、異なる構造をしていた。

 

「――― ここだな」


「2度目のボス戦!

 腕が鳴りますよー!」


 ようやく辿り着いた神殿。

 外見からは、他の神殿と目立った違いは見られない。

 しかし中に入ると、一目で違いが分かった。


「この階段を下りればいいんですね!」


 入り口から直接繋がる広間の中央には、像ではなく地下へと続く階段が設けられていた。

 明かりは無く、階段の先は闇に包まれている。

 ここにC4爆弾を1tくらい突っ込めば、階層制覇できるんじゃないか?


 どれほど下まで続いているのか窺い知れない地下への階段。

 それを見ながら邪道ともいえる攻略法を検討していた俺は、真上からの降ってくる凶刃に反応できるはずもなかった。




「――― させない!!」


ギィィン


 甲高い金属音と共に、俺の頭上で朱い刀と白銀の槍が火花を散らす。

 

『―――ッ』


 それに一瞬遅れ、火線が空中を彩った。


「わ、わ、わ」


 突然のことに思考が停止。

 そんな俺の襟首を掴み、強引に後ろへ引っ張られる。

 目の前に映る大型のバックパック。

 気づけば、俺の四方はロボット達に固められていた。


「ァァアッ!」


 宙を見上げれば、3対の翼を広げる天使と、朱い外套をはためかす高嶺嬢が、熾烈な空中戦を繰り広げていた。

 天使が3対の翼を別々に羽ばたかせ、高速の鋭角機動を。

 高嶺嬢は広間にある柱、天井、床を足場に、縦横無尽の空間機動を。

 空中で槍の刺突を刀がいなせば、柱ごと叩き斬ろうとする斬撃が紙一重で躱される。

 

 初めて見る、一見して高嶺嬢と互角に戦う敵の姿。

 腰まである金糸の髪は、色褪せながらも美しさを保っている。

 荒れが目立つ純白の肌は、所々朱い線が走っていた。


 このまま戦っても不利と悟った天使は、3対の翼を全て使って大きく後退。

 そのままの勢いで、天使の周囲から30を超える火球と氷槍が生まれ、高嶺嬢を空間ごと葬り去ろうと殺到した。

 途中、横合いからのロボットによる迎撃で何割かは爆散したが、未だ20ほどの数で高嶺嬢に迫る。


「――― はっ!」


 気合いの声、いや、違う。

 児戯を見た強者の様に、彼女は嘲笑あざわらった。


 振り抜かれる朱線。

 火球と氷槍の幕が横一文字に大きく裂かれ、その間を高嶺嬢が飛び抜く。


『愚かなりっ!!』


 彼女を出迎えたのは、先端が光り輝く槍を今にも投合せんとする大天使。

 無防備なその姿を、4線の銃火が貫く。

 しかし、すでに槍は手元から離れていた。


 あの槍がどうなろうと、余波で建物ごと吹き飛ぶんだろうなー。

 

 真っ二つに両断された槍を見ながら、俺は諦観と共にそんなことを考えた。


 高嶺嬢?

 もちろん無傷で、大天使の顔面を刀で刺し貫いていた。

 ぱねぇっす。


 その感想と同時に、俺の視界は光で包まれた。


肝心な時に役に立たない主人公のスキルたち。

探索特化のくせして、暗殺者にあっさり殺されそうな主人公。

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