舞台袖:とある下っ端Aの事情(演者・・・NO NAMEもしくはちっこいの)
オレ(ここでの語り手)
裏路地に住む。変なおじさんにはちっこいのと呼ばれている。凄惨な過去がある模様。
燃え盛る炎。むせ返るような血の匂い。それはどこまでも紅く、紅くて。
「ーーー、あなただけでも……生きて。逃げるのよっ! 行きなさい」
世界は、残酷だ。
「はやくっ ………………行きなさいっ!!!!!」
「でも、マリアが……」
世界は、理不尽だ。
「後から行くわ。だから先に逃げて。お願いよ………」
世界は…………………
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ガバリ、と跳ね起きる。嫌な汗をかいた。
「また、あの時の夢を見た……」
薄暗い、路地裏。蠢く悪意。弱肉強食。強い者は弱い者を喰らう、そんな場所だ。
「よー、ちっこいの。体調悪そうだな。大丈夫か?」
「オマエには、関係ない」
だから……いちいち構ってくるコイツにも、何かしらの悪意があるのだろう。それか、ただの馬鹿だ。
この路地裏で、人のことを気にかける奴なんてよっぽどのお人好しか、利用しようと考えている奴、それか……余裕のある奴くらいしかいない。
コイツには強者特有のオーラとでも呼ぶべきモノはない。むしろ、オレよりも弱そうでさえある。見た目は、ただのどこにでもいそうなオッサン。何がおかしいのかいつもヘラヘラしてる。
オレが興味あるのは、強者だけだ。オレは強くならなきゃいけない。強く、強く強く強く………何かを、守れるくらい。
「はは、ひどいな。年上にはもっと敬意を払って接するものだぜ?」
ケイイ……敬意、か。
『ーーー、院長先生には敬意を払うのよ』『マリア……ケイイってなに?』『うーん、尊敬する気持ちかな……まあ、院長先生はすごい!って思っとけばいいのよ』『うん、わかった』
…………あの夢のせいか、思い出してしまった。……もうあの日には戻れないのに。あの、日々には。アノ、シアワセな日常には。
「オレが敬意を払うとしたら、それは圧倒的な強者だけだ」
「ガビーン、なんか言外にお前弱いって言われた気がする。おじさん、悲しくなっちゃう……」
うるさい。騒がしい。もう、関わらないでくれ。お前なんて何時でも殺せるんだ。何時でもここの住民に殺されるんだ。…………人の温かさを、あの日々を、思い出させないでくれ。
「そんなちっこいのにはこんな言葉を贈ろう。When it is dark enough,you can see the stars.」
「夜に星が見えるのは当然だろ? むしろ暗い方が見えやすいだろーが」
意味がわからない。この路地裏で普通に人と接するコイツの神経も、言った言葉も。わからない、わからない。理解、できない。
「うーん、ちびっ子思考だなあ。ま、もっとおっきくなったらわかるよ」
コイツはオレが成長するまでずっといると?
「オレが成長するまでにオマエなんて死んでるに決まってる」
「そうだったら、いいんだけどねー。まあ、生きるって約束しちゃったんだよな〜」
結局コイツは死にたいんだか生きたいんだか。というか、約束って誰とだよ。ここの住民?いや、まさか。ここに来る前か。そういえば、コイツ、結婚しててもおかしくない歳に見えるな。
…………オレは、コイツの名前も年齢も、ここに来る前に何をしていたかも、オレと会ってない間に何をしてるかも知らない。毎日会うわけでもない。だから……
ただの他人、だ。
「まー、じゃあな、ちっこいの」
「さっさとオレの視界から消えろ」
他人、なんだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
路地裏では暴行なんて当たり前だ。それを止める奴なんてほぼいない。
仕事斡旋人。路地裏の店内にソイツはいる。路地裏の住民に内職(例、造花作り)から殺しまで様々な仕事を斡旋する奴らである。何人かいるので、馴染みのとこに行こうとしていたのだが……嗅ぎなれた血の匂い。
細身の優男2人が、ガッチリした男を、か。珍しいな。
「お前さー、前からムカついてたんだよね~」
「ホントホント、ジャマでさぁ」
「や、やめてくれぇ……」
「やめてください、だろ? ま、やめる気なんてねーけど」
止める気はもちろん、関わる気さえない。さっさと巻き込まれないようにこの場を離れよう、としていた。
だが立ち止まってしまった。リンチされてる方に見覚えがあったからだ。まさか、アイツ……ここらの路地裏を支配していた奴か!?
路地裏には支配者がいる。区切れ方はバラバラで、ソイツの力量によって支配地は決まる。他の路地裏は知らないが、ここら一帯の路地裏はジョンと呼ばれてる奴が支配していた。結構な範囲、他の奴の支配地に行くにはバスか電車でも使わないと行けないレベルには…………を武力で支配している腕っぷしが強い奴だった。オレも何度か命令を受けたことがある。
配下の奴も結構いたはずなのに、なぜ、という疑問はすぐに消えた。………あの濃厚な血の匂いはコイツらからか。建物の影にあってよく見えなかったが、よく見るとジョンの配下と思われる奴らの死体がゴロゴロ転がっていた。
危険度が跳ね上がった。頭の中で警鐘が鳴り響く。
「ホント、感謝だぜ。魔法なんてもんを教えてくれたあいつらにはよぉ。さてと、炎の矢」
一目散に逃げようとしていたオレは、ソレを見て停止した。宙に浮かぶ、炎の、矢。圧倒的な紅。怖い、恐いコワイコワイコワイ
あれだ、アレガミンナヲコロシタアカダ
見つかって殺されるリスクなんてどうでもよかった。ただただタダタダアレを見ていた。恐怖した。そして…………
「あれぇ、ネズミが1匹迷い込んでるぞぉ」
ガツンという頭への衝撃。二人組じゃ、なかったのかよ……
目の前が真っ暗になる
オレは、死ぬのか………ごめん、マリア、院長先生、みんな
アイツ、嘘つきやがったな……星なんか見えねーよ
やべっ、い、し、き、が……………
◇◆(演者、退場)
「星が見えないなら見える位置につくればいい。さて、彼はその領域までたどり着けるか? 早めにたどり着いて欲しいがな。ではないと、めんどくさい」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
When it is dark enough,you can see the stars.
どんなに暗くても、星は輝いている。
エマーソン(米国の思想家、哲学者、作家、詩人/1803〜1882)
続きます。ただ、本編?を書いてからになりそうな気がします。




