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巫女姫と魔法の暗殺人形(仮)  作者: 榊 唯月
桜舞う季節
16/50

幕間:土御門家の一日

義妹

土御門瑞稀の義妹。戸籍上は義父、義母、義妹はすべて肉親となっているが、土御門本家としての正式な子は瑞稀のみである。

 土御門家……彼らの内、本家は京都にある豪邸(ごうてい)に住んでいて、本家に近い分家の面々もその近くや別邸に住んでいる。ちなみに屋敷は日本家屋(かおく)オンリー。そんな土御門本家の長女の一日。


 土御門瑞稀の朝は大抵殺気から始まる。


 7時12分 起床(きしょう)


「土御門瑞稀、覚悟!」


 天井から黒ずくめの男がナイフを持って布団(ふとん)で寝ている瑞稀の首をめがけて飛びかかってきた。


「何でこういう奴ら(二流以下)はいちいち決めゼリフだのを言ってから攻撃するんだ?」


 瑞稀はあっさりとナイフを素手ではじいた後に、そう(つぶや)いた。そして、どこからか短刀を取り出し、心臓に一刺し。(ひね)って空気を入れる。暗殺者であったろう男は声もなく倒れた。周りに血が飛び散ることのない、迅速な対応だった。


 7時13分 処分


「あー、コレ始末(しまつ)すんの面倒くさいなあ」


 瑞稀はだるそうに布団から出て立ち上がって()びをした。そしてブルっと寒さに(ふる)えた。


「うー、さむっ。こたつに入りたい。えーと、札、お札さんはどこだっけ……」


 着ていた浴衣(寝間着)の上に発見した札をぺたっと()り、瑞稀はほかほかと温まった。このカイロの様な使い方に、世の陰陽術達が見たら間違いなくもったいないと口を(そろ)えて言うことであろう。というか、はじめからカイロを使えよ。


「というか、(ひと)(ごと)を言ってる(さび)しい人みたいだから反応していいよ」


「了解ッス。じゃ、自分、その短剣欲しいッス」


 あの暗殺者であろう男が出てきたのと同じ天井裏から若い、少年と思われる声が聞こえてきた。つまり、あの男は同じ空間に少しは居ただろうに、少年にまったく気づかなかったのだ。


「ああ、いいだろ、この短剣。斬れ味も良くて……いや、違うだろう。まあいいや。コレ、片しといてくれ」


 瑞稀は見事なノリ突っ込みを披露(ひろう)した後に死体を指して言った。


「ノリ突っ込み上手いッスね。あー、了解ッス。でも生かしといた方が博士も喜んだと思うッスよ」


 声の後に、死体は消えた。前置きもなしに。


「お前らが処分しとくかと思ったのにやってくれなかったからだよ。私の眠りを(さまた)げ、楽園(布団)から出した罪は重いんだ。それに、この程度じゃヴィーの実験対象(モルモット)にならないだろ」


 瑞稀はいきなり死体が音も立てずに消えたことには(おどろ)かずに布団を片しつつ(こた)えた。


 何故、曲がりなりにも土御門本家の長女のお嬢様である瑞稀が自分で布団を片付けているのかといえば、単純に瑞稀専用の使用人なんて一人もいないからだ。現当主である瑞稀の祖父には冷遇(れいぐう)され、義理の両親である現在土御門家で一番権力を持ってる人々に(うと)まれている。加えて本人は体外的に力を持っていないとされ、いつもぼそぼそと話している引っ込み思案(な設定)。比べて義理の妹は歴代当主と比べても遜色(そんしょく)ない霊力の持ち主、その権力者達の実の娘であり溺愛(できあい)されている。その上明るくて誰にでも優しくて(おご)らない(とされている)。どちらについた方がいいなんて単純かつ明白だろう。


 お(なさ)け程度に2人だけ護衛はついているものの、本来なら暗殺者がここまでのハイペースで来ては瑞稀はとっくに死んでいただろう。まあ、実際は義理の両親から刺客(しかく)が放たれていようと、義理の両親に取り入ろうとする親戚(しんせき)等々から命やその身を(ねら)われようと、義理の妹から暗殺者を差し向けられようと、義理の妹の信奉者(しんぽうしゃ)から殺意を向けられ行動されようと、土御門本家の長女という肩書きから数多(あまた)の金銭目的の誘拐(ゆうかい)や家への(うら)みからの暗殺などがあろうと、図太く生きてきたのだが。……よく死ななかったな。


「それはそうッスけど……最近博士、弱い奴を改造したらどんくらい強くなるかやる(実験する)のにハマってるッスよ〜」


「あーそういえばそうだったな。どうでもよくて忘れてた。じゃあ、蘇生(そせい)するならしていいよ、ソレ」


 シュルシュルと帯をといて浴衣(ゆかた)を脱ぎ始めた。瑞稀はどうやら天井裏に少年がいることなんて気にしないようだ。地味な着物を適当に見繕(みつくろ)って着ていく。


「えーめんどいッス。とりあえず、博士のとこ行ってくるッスよ。……(いん)の奴が」


 少年も瑞稀が着替えているのを見慣れてるようで、気にせず会話を続ける。


「押し付けるのか。まあ、勝手にしてくれ。私は朝の戦い(食事)に行ってくる」


「はーい、いってらっしゃいッス」

「いってらっしゃいませ。そして(やつがれ)に押し付けるな。(やつがれ)はやらんからな」

「「お早めのお帰りを待っております」」

「いってらー。フラッシュだよ」

()ってこい。フルハウスだ」

「寄り道はせんといてやー。スリーペアや」


「んー」


 声が、天井裏から聞こえる。複数人の。部屋には、2人だけではなかったのだ。話していなかっただけで。おそらく、話に加わらなかったのは天井裏で()けポーカーをやっていたからと思われる。ちなみに賭けていたのは自分の恥ずかしい話である。いいのか、天井裏でそんなことをやって。


 そして一人、不吉なことを言ってやがる。いいのか、それで。




 7時20分 朝食


「おはよう、ございます」


 瑞稀は優雅(ゆうが)一礼(いちれい)と共に一応家族である人達がいる場へと入った。この家では朝食だけは家族全員で食べなくてはいけない、という先祖代々(せんぞだいだい)の決まりがあるのだ。そうでなければこの人達は私と顔をあわせるのも嫌だろうな、と瑞稀は思った。


「おはよう! お姉ちゃん」


 義理の妹からの元気で、可愛らしいあいさつ。ああ、気持ち悪いなと瑞稀は思う。


「「おはよう、瑞稀」」


 義理の両親からのにこやかな挨拶(あいさつ)。当主がいるからだろう。冷遇しているとはいえ、実の孫。当主と敵対はしたくないのだ。そうでなければ、ごく当然の様に無視するのに、と瑞稀は嘲笑(ちょうしょう)するのを(こら)えた。


「来たか」


 一応の祖父からの返答は挨拶ではなかったが、まあ声が返ってきたらいいのだから食べよう、と瑞稀は全く気にせずに考えていた。


 食べている時に「小学校生活はどう?」や「もうすぐ卒業だね」など仲いい家族を演じるために話しかけられたが適当に返答したので瑞稀は覚えていなかった。



 7時56分 馬鹿にされる


「ねえ、アレ(・・)が……?」


「そうそう、落ちこぼれの出来損(できそこ)ないよ」


「血を受け継がなかったのかしらね」


不倫(ふりん)でできた子、って(うわさ)よ」


「両親殺し、でしょう? 小さい時にお二人が死んだのはあの子のせいだって」


「やだ、聞こえちゃうわよ」


 普通に本人にも聞こえる声量での言葉。使用人、という立場でも馬鹿にしていい。それが瑞稀の立場だ。実質、使用人より下の立場。それすらもどうでもいいと思うのが瑞稀なのだが。


「もう! みんな、お姉ちゃんのこと、悪く言っちゃダメっ!だよ」


 甘ったるい声と共に義理の妹が現れた。点数稼ぎご苦労さま、と瑞稀は思った。


「「「「す、すみません……」」」」


「わかってくれればいいんだよ。おしごとのじゃましちゃてごめんね」


「「「「はい。し、失礼します」」」」


 瑞稀は目の前のやり取りをどうでもよさそうに見ていた。いや、実際どうでもよかった。学校への忘れ物はないかを脳内で確認していたくらいだ。


「ねえ、どういう気持ち? お・ね・え・ちゃ・ん♡ 新人の使用人にまで馬鹿にされるって。はっ。まあ、どうせ知られることだけど。まったく、あんたみたいな出来損ないが何で土御門本家で現当主以外のの唯一の血族なのよ。しかも、私と同い年。あんたなんて役たたず、ここにいられるだけでありがたいと思いなさいよ。ふんっ。………あら、遅刻しちゃう時間じゃない。それじゃあね、お姉ちゃん。二度と顔をあわせないことを(いの)ってるよ」


 今日の給食は何だったかな。あ、話終わったか。……瑞稀はどこまでも話を聞いていなく、()つどうでもよかった。





 8時06分 部屋に帰る


「ただいま。アレのせいでタイムロスした。着物のままで行きたい。面倒くさい」


「おかえりなさいッス。そしてお疲れ様ッス。普通に洋服は着ろッスよ」


 瑞稀が急いでいることを察したのか、ただ単に言うのが面倒くさかったのか返事は一人分だった。ちなみにポーカーでは恥ずかしい話は六回語られた。


 瑞稀はさっさと高級そうな黒いワンピースに着替えて、ランドセル(水色)を背負うと、札を取り出した。


「転移符毎日使うのってもったいなくないッスか?」


「今さらだよ。どうせ凰璃行ったら出来なくなるんだ。いいだろ。逝ってきます」


 凰璃学園に行ったら瑞稀は護衛とかなりの時間を共にしなくてはいけない。転移符なんて持っているのを目撃されては、何でそんな貴重な物を持っているのかと面倒くさいことになるのだ。使うだなんてもってのほかだ。


 転移符とは高等な術である転移術を霊力を流し、座標を思い浮かべるだけで使えるとても便利な物であるため、人気であり()つ作るのが難しいのでかなり高い。少なくとも土御門家とはいえ毎日使っていれば破滅(はめつ)するレベルには。六年間毎日使っていた瑞稀がおかしいのだ。


「逝ってらっしゃいッス」

「逝ってらっしゃいませ」

「逝ってらー」


「自分ら、字が不吉やで!」


「逝ってこい」


「無視かいな!!」




 8時09分 登校


 転移の位置は人のいない、学校にほど近い路地。そこから学校へ歩いていく。


「瑞稀様、おはようございます」

「瑞稀、おはよう」


「ん、おはよう。沙織、拓都」


 護衛2人と会う。クラスは六年連続同じ。確実に土御門家の圧力だろう。


 ちなみに義理の妹の方はここ京都の陰陽師用の名門の小学校に通っている。比べてこっちは私立の名門ではあるが一般の小学校である。毎度のごとく、瑞稀にとってはどうでもいいのだが。



 8時40分~ 朝の会、その後から授業


 面倒くさい……それが瑞稀の(まぎ)れもない本音であった。


 寝たかったが護衛の前で眠れなかった…




 15時10分 下校


「さようなら、瑞稀様」

「じゃあね、瑞稀」


「また、明日」


 2人は護衛なのに何故一緒に帰らないのか。それは、土御門家から瑞稀の登下校は気にしなくていい、と言われているのだ。沙織はそれを土御門家が送り迎えするからだと思っている。実際、義理の妹の方は送り迎えがあるからそう思うのも仕方がないだろう。拓都は知っているのかはわからないが、瑞稀にはもちろん送迎なんてない。ただ本人は転移符使えていいな〜くらいにしか思っていない。


 空き教室に行き、周りに人がいないことを確認の上、瑞稀は転移符を使った。ちなみに靴にも転移符を使用して入れ替えた。上靴と外ばきを入れ替えてさっさと帰るために転移符を使うのは、広い世界の中でも瑞稀だけだと思われる。




 15時14分 帰宅


只今(ただいま)(かえ)ってきた」


「お還りなさいッス」


「そのネタまだ続いてたん!? 還ったって土からかっちゅーに」


 そこそこ鋭いツッコミが入った。いかにも似非(えせ)っぽい関西弁である。


「晩御飯は魔界で食べてくる。ついでに()まってくるから、誰か来たら幻影(まと)って対応しといて」


「スルーかいな! てか、宿題あるなら持ってっときーや」


 魔界で小学校の宿題ができるのか。難問だ。



 15時15分 魔界へ


「ということで逝ってきます」


「逝ってらっしゃいッス」


「今回は行き先が魔界やからつっこむにつっこめへん。ええわ、気を付けて逝ってきーや」




 15時15分~ 魔界でゴロゴロする




 魔界への持ち物(瑞稀の場合)


 ・普通の黒いワンピース(着ています)


 ・通行証(魔界のパスポートのようなもの)


 ・短剣(朝の)


 ・符


 ・浴衣(寝間着)


 ・ハンカチとティッシュ(ポケットに)


 ・スマートフォン(小学校持ち込み可なので)


 ・財布(諭吉さんがぎっしり)


 ・お菓子(おやつ用と賄賂(わいろ)用)


 ・宿題(算数ドリル)


 ・筆記用具(宿題用)


 ※これは瑞稀だからです。魔界に行く時はせめて防御効果付きの(よろい)などを着て、もっと武器を持って行かないと死にます。というより、普通の人は通行証を持っていないので、入った時点で侵入者として命を狙われます。お気を付けください。絶対に真似(まね)はしないでください。


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