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巫女姫と魔法の暗殺人形(仮)  作者: 榊 唯月
桜舞う季節
17/50

幕間:暗殺人形劇

クロウ・ファイユ

ファイユ家の三男。笑う道化師(ラフィン・クラウン)との二つ名で恐れられる超一流の幻術士。ブラコンの変態。

「や、やめてくれ……か、金ならいくらでもだす、出すからっ

 頼む、殺さないでくれ」


 赤、赤、赤。見渡す限り真っ赤な部屋。血の海、(しかばね)の山。そんな所に、肥えた中年男性と黒いフードを深くかぶった少年がいた。


「お、俺には小さい娘と、体の弱い嫁がいて…………」


 そんな彼に死神の鎌は容赦なく下ろされた。少年のナイフがあっさりと心臓に刺さり、えぐられる。中年男性は声もなく絶命した。


「すみません、命令でして」


 少年は言葉に反して表情をまったく変えずにさらりと言った後に、(ふところ)からカードを取り出した。


「終了致しました」


「お疲れさまっ、トールくん♡」


 印刷された魔法陣に通信の効果があるらしく、カードに向かって少年が話すと声が返ってきた。…ずっと無表情だった彼に、ほんの少しだけ不快感が浮かんだ気がした…。


「うーん、たぶんそろそろ戻らないと同室の……雨宮拓都だっけ?に(あや)しまれちゃうからお開きにするかな〜☆」


承知(しょうち)しました」


 少年は()()()転移魔術を行使した。



 中等部第一男子寮の一室。少年は自室に転移したのだ。


 中等部では第一がつく方の寮は男女共に部屋数が複数、第二だと1つだけとなっている。これは裕福な子らや名門の子らが文句を言うと面倒くさいためである。差別的かもしれないが、不満があるなら条件をクリアして、別の寮に移動すればいいのだ。それに、教員や寮母に(うった)えれば春休み中でも第一と第二の交換や移動は可能となっている。まあそんな面倒くさいことをやる人はいなかったが。


「そういえば〜、トールくん♡」


「何でしょう」


 まだ通信魔術はつながっていたらしい。少年は少しうんざりした声で応答した。


「学園生活はどう?」


「土御門瑞稀への接触は完了致しました。明日は寮の前で待ち、教室での席は自由席ということですので隣にする予定です。護衛である野澤沙織には嫌われておりますが、嫉妬(しっと)がその要因なので、挽回(ばんかい)は可能ですし(あや)しまれてはいないので想定の範囲内かと。雨宮拓都の方は怪しまれ、(さぐ)られております。ただ、トール・ブリューゲルの経歴は真っ白ですので問題なしかと思われます。土御門瑞稀は……読みにくい人物ですね。気弱ですが、護衛には気を許していると見えます。ですが……どことなく違和感を覚えます。基本的にはこちらと敵対の意思はなさそうですし、情報もこぼしてくださるので全体的には問題はないかと」


 土御門瑞稀。少年にとっては何故か気になる存在だった。狙撃手の存在にさえ気づけないレベル。なのに感じる違和感の正体はわからない。頭で、というよりは感覚から、魔術的には(たましい)から感じる違和感。解決はできなさそうなので少年は(あきら)めた。


 土御門瑞稀の暗殺未遂(みすい)についてはどうせこの(クロウ)なのでもう知っているでしょうね、と考えた少年は言う手間を(はぶ)いた。


「そっか〜☆ んー、あ、そういえば、お嬢さんが行った昼食会について知ってる?」


 少年はお嬢さんとは土御門瑞稀のことであろうと推定し、自らの兄がわざわざそんな言い方をしたことに驚きを感じつつ、(こた)えた。


「はい、本人がおっしゃっていましたが……」


 それがどうしたのでしょうか。少年は自分の兄の唐突(とうとつ)な話題転換についていけなかった。


「あれ、婚約者とだよ〜☆」


 だから野澤沙織は(いら)ついていたのですか、と少年は考えた。


 どうしてそんな関係のないことを、とは不思議と言えなかった。


「そうですか。それではそろそろ通信を切らせていただいてもよろしいでしょうか?」


「うーん、まあ面白かったしいっかー☆ それじゃあね、トー


 ブチっと通信を少年は途中で切った。


「自分らしくないですね……」


 感情を出すとは。少年は静かにそう思った。


六幕と七幕の間のお話です。ちなみにあの中年男性にはたくさんの愛人と隠し子ならいますね。

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