表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メルティ✕ギルティ〜その少女はやがて暗夜をも統べる〜  作者: びば!
2章。学園編〜それは、蝕まれた憧れ・上
63/80

60。メルティと反撃

開戦。

 災害時の討伐。


 これは最高難易度の依頼と言っても良い。


 まず、環境が極悪だ。

 そして何よりも、周囲の混乱が足を引っ張るーーー。



「……これはまずい」

 メルティは高所からあたりを見渡していた。


 草むら、砂地、湖畔。

 どこを眺めても、広がるのは行き倒れた生徒ら。

 気絶した訳ではない。悪夢にうなされているのである。



 ……いったいこの短時間で何があったのか?



 事の発端は数時間前。

 とあるエリアで大騒乱が起きたーーーと、そんな一報が連絡係の耳に届いた。

 しかし情報が本部に伝わる間もなく、恐慌は更なる恐慌を呼んだ。


 生徒は突発的なことに慣れていない。


 ポイントとなる核を回収しに戻る者。

 その際大喧嘩を始める者。

 無駄に武器やら拳やらを交し合う者。

 座りこんで泣き出す者。


 ーーー阿鼻叫喚。


 そして逃げ遅れて「謎の霧」を吸い込んだ生徒から順に、幻覚を見ることになった。


「たしかに、あれは……キツイとおもう」


 メルティは眉を寄せた。

 彼女もその霧を被っているので、当然例の幻は見ている。

 その感想を思い浮かべつつ、地平線まで広がる濃霧を眺めた。


 ーーーアレは、「産まれ損じた幼体」の怨嗟。


 おぎゃあ、おぎゃあと、鼓膜を磨り潰すような赤子の泣き声。

 ケタケタと、身の毛もよだつ掠れた(わら)い声。

 正体不明の足音。

 記憶にない自分の発言。

 水面に広がる波紋ーーー。


 それらが混ざり合い、増幅し、脳髄に侵食していく。



 ーーーしかし、そうとは言うものの、所詮は有限数の()()


 日頃から無意識に、無数の悪意から精神的圧迫を受けてきたメルティにとっては、もとより無いに等しいのである。


 ……とは言え、気分が良いものではないことに変わりはない。


 昨夜、シャオワンから受け取った核たち。

 蓋を開けてみれば、どれも生き物を踏み(にじ)った産物。


 かつてのメルティであれば、気にかけなかったかもしれない。


 しかし、今は違う。


 彼女の渦巻く瞳は、すでにその核たちの裏に隠された無数の「()()()」が見えていた。


 どれほどの赤子が、この「核」のために生まれたのか?

 そのうち、どれほどが猫人族なのか?

 どれほどがゴブリン族なのか?


 なぜこんな核が、ばら撒かれているのか?

 話によれば、ワームや狼の核が用意されていたという。

 なのに、なぜ違うものがばら撒かれているのか?

 用意を間違えた?

 学園が?

 一国を代表する、王立学園が?


 それとも誰かが、入れかえたのか?

 いつ?

 どこで?

 どうやって?

 もし入れ替えたのなら、ワームや狼の核はどこへ?


 先ほど、異形に成ってしまった狼の群れを見た。

 まるでゾンビみたいだった。

 そして気付けば融合し、肉質な蜘蛛に化けていた。

 誰かが、この「合成獣」のようなもののために、回収したのか?


 もしかして、混乱を招きたかった?

 本当に?

 それだけ?


「エリア内の全ての核を集める」。

「代わりの核を返してあげる」。


 これが、メルティが昨日【烏】たちに指示したこと。

【烏】たちは、「悪意」に強く反応する。

 いくら袋に隠そうが、土に埋めようが、【烏】が探し当てられないところはない。

 そして集まった核を、鑑定、鑑定、鑑定……。


 判定ーーー「悪意、有リ」。


 何が目的で、どこが禍根なのか。

 わからない。

 しかし、彼女の眼には一つの事実がくっきりと映じていた。


 ーーーこの実習には、尋常ならぬ悪意が潜んでいる。


 先日、ツェドリカ生徒総括に仕掛けられたことを思い出す。

 確か何かの飲料に、ご丁寧に虫を添えられた。


 しかし思い返せば、かなり奇妙な事である。

 ツェドリカは生徒の中では「えらい」部類である。

 そう言ってもいい。

 そんな彼女ならば、()()()()()()()()簡単に出来てしまうのかもしれない。


 しかしだ、しかし。

 ではなぜ、あんな虫を仕込んでおいて「見つからない」と思えるのか?

 メルティが気にせず飲むと思ったから?

 本当にそれだけだろうか?

 そんな「カモシレナイ」に縋って仕込むタイプだろうか?


 もっとこうーーー()()()のではなかろうか??


 わからない。

 わからない。

 光が当たらない限り、深淵など覗けるはずがない。


 ーーー否。深淵など、知る必要はない。


 メルティはまぶたを閉じた。


『あたしはーーー何を信じればいいニャ?』


 シャオワンが昨夜、メルティに収納袋を託したときに残した台詞(せりふ)


 シャオワンは猫人族。

 ここらでは、珍しい種族。

 きっと、不安と期待を胸いっぱいに抱えて、ココにやってきたのだろう。

 自分達が、圧迫を受けないような場所を求めて。


 しかしタイミング悪く、彼女は「見てしまった」。

「知ってしまった」。


 そんな彼女は今ーーーどんな気持ちなのだろう。


 今回のことはたぶん、学園が仕込んだものではない。

 そんなふうに説明をして、果たして彼女に届くのだろうか。


 どうやったら、伝わるのだろうか。


 メルティは今まで、独りで戦ってきた。


 やがてキツネと出会い、二人で戦うことを覚えた。


 そして今回、初めての集団での活動。

 ……諸々のハプニングを除いて、メルティは思った。


 ーーー意外と、楽しい。


 一人で化け物の退治をしていた時ほど、自由行動はできない。

 下手に危ない魔法も使えない。


 けれど一緒に作戦を考えたり、報告をし合ったり。

 マッピングをしたり、たまにすれ違ったり。


 ーーーそんな時間が、もっともっと続けばいいな。

 ーーー次は、キツネも一緒がいいな。


 そんな風に思えるようになった。


 どうか。


 どうか、シャオワンに同じような気持ちが伝わるといいな。


 また一緒にお話ができるといいな。


 ずっと。


 ずっとーーー。


 だから……。


「……()()()を許すわけには、いかないよ」



 とぐろを巻く霧。

 晴れずとも、姿は既に捉えている。



「ぁあぁ……出逢ってしまった。出逢ってしまった……」


 隠しきれないほどの、巨大な痩躯(そうく)

 骨ばった身体。

 歪んだ顔。

 腐肉臭。

 鼻をつく酒気。

 体じゅうに這いずり回る「赤子のようなナニカ」。

 手に握る、幼体を縫い合わせた酒樽。


 そして、強烈な「幻覚」の毒気(どっき)


 名付けるならばーーー「嫌悪の権化(インカーネーション)」。




 メルティは、静かだった。

 慌てることも、嘆くこともしない。

 まるで鑑賞物でも眺めるが如く、その双眸(そうぼう)は巨人を射抜いていた。



「……【リョナたん】」


 呼びかけてしばらく経つと、脳内に返事が反響する。


『……なによ。アタシにも参加しろってこと?』


 この子とはまだあまりお話が出来ていない。

 棘が、いっぱいだ。


「んーん。ちがう。今度、お話したいなって」

『なんでよ』

「今回の実習で、面白いこといっぱいあった」

『はぁ??面白い?こんな惨状なのに?』

「うん。嫌なこといっぱい。でも、楽しいこと、もっといっぱい」

『そう』

「だから、見ててよ」

『何を?』

「わたしの、……勇姿を」

『うわ、自分で言うのマジないわ』

「とにかく……今のわたしは、いっぱいお話がしたい」

『……』


「帰って、キツネと、ルイザとおしゃべりしたい。……学園で、シャオワンたちとおしゃべりしたい。……そっちに行って、涼南(すずな)とおしゃべりしたい」


『……』



「だから……見てて。今のわたしはきっとーーーーーー強いから」




 軽やかに、舞い上がった。

 ターゲット、オン。


 ーーーああ、なんてちっぽけな巨人なのだろう。


 指揮を取るように、タクトを振るように。

 メルティは両腕を広げた。


 ばさっ。

 ばさばさばさっ。


 (おびただ)しい量の黒羽と共に、当たり一面は黒い嵐に呑まれた。


 ソレは、無数の【烏】。

 ソレは、無数の【悪意】……。



 さあーーーーーー返してもらおうか。

次回更新は10/13(日)。お楽しみに。


【ご報告】

このたび、10/12に……私、なんと誕生日を迎えます‼

いえーいぱちぱち。

しかも!!皆さんのおかげでなんとPVは3200も!

と言うわけでですね、一生懸命読んでくださっている読者の方々には、もう誕生日プレゼントをお渡ししなければと思いましてですね。


\\どどん!//


● 誕生日おめでとう記念!!「pixiv」さんにてメルティちゃんたちのイラスト、デザイン画を読者様宛に逐次更新予定!!


⇒ https://www.pixiv.net/users/104898677 びば! #pixiv


● PV3000達成おめでとう記念!!真新しい世界観の短編、「冒険は闇鍋なもの、ナビなもの!」がついに完成!!読者様のリアクション次第で次章も予定中⁉


⇒https://ncode.syosetu.com/n1443jo/


投稿はすでに完了済。リンクは明日朝に掲載予定です。


これからも応援のほど、よろしくお願いします!


びば!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ