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メルティ✕ギルティ〜その少女はやがて暗夜をも統べる〜  作者: びば!
2章。学園編〜それは、蝕まれた憧れ・上
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51。メルティと実習

実は持ち込みのために、1話から全部書き直したのですよ。


で、ちょっとずつ直して読みやすくしようと思いましてね。


しばしお待ちを。

「実習」。


 それは実践の場。

 それは、自分への把握―――。



「ついに来たのか!腕試しの時が!!」

「ふむふむ、今回はそうきたかぁ。楽しみだなぁ」

「えぇ……運動はちょっともういいですわ……」


 何やら、騒がしい廊下。

 目立つところに立て架けられた看板に、一枚のチラシがデカデカと貼られていた。


 夏期休暇に入る前の最後の大型プログラムが、発表されたのである。

 その名も、「課外実習」。


 内容はみんな大好き「宝探し」。


 ・期間は明日の正午からまる一日。

 ・ランダムで組まれた五、六人組で、ポイントを競い合う。

 ・決められたフィールドの中で探索をし、散りばめられた「核」を集める。

 ・核の市場価格がそのままポイントとなる。

 ・事前に一部の核の場所が記された地図が配られるが、それが正しいとは限らない。

 ・奪い合いは可だが、度の過ぎた行動は控える(殺す、買収するなど)。

 ・道具使用可だが、先生に事前チェックをもらうこと。


 云々。


 ちなみにグループメンバーはランダムとは言え、ある程度ルールは決められており、なるべく同じクラスが集まらないようになっている。


 つまり。


「……キツネ重い。……たかが一日」

「だ、だってぇ〜っ」


 そう、キツネとメルティが同じグループになれる確率は、極めて低いのだ。


 実習の途中でばったり会う可能性はあるだろうが、その時は「敵どうし」である。

 さすがのキツネも、私情で仲間を巻きぞいにするは気が引けるらしい。


 今は昼休み中。

 そしてお約束どおり、キツネはメルティにべったりである。


 キツネの家もまあまあ名が通っているというのもあり、全体重を他人にかけてあーんと口を開けている様子は、だいぶ見るに耐えない。

 ―――のはずだが、ここにいるメンツはすでに見慣れているらしく、多くて「あぁ、またか」くらいである。


「あ、そういえば。メルティちゃん……なんか、ほら【悪―――」

「だめ」

「うっ、な、なんで、わわわたしまだ何も言ってませんけど??」

「だいたい察した。だから、ダメ。不正はダメ。学園からポイされたくない」

「めぇるぅてぃちゃぁあん……」


「キツネ……恥ずかしい。マジで」

「げはっ……」


 そうしてメルティの何気ない一言により、キツネは致命傷を受けるのであった。


 そんな時だった。


「―――へぇ、君が噂のメルティ・イノセント嬢?」

「「??」」


 落ち着いた声が、頭上からした。

 見上げれば、そこに一人のブロンドヘアをまとめた、尖った耳の男子生徒が一人立っていた。

 そして後からぞろぞろと四人ほど生徒がやってきて、同じようにメルティたちの前に足を止めた。


 ―――喧嘩勃発か、と思ってしまいそうな囲み方。


 しかし我らがメルティはあまり興味が湧かないらしく、ただひたすらに、シューアイスを口に詰めている。

 相変わらずである。


 一方でキツネは口に放り込まれる冷凍フルーツを楽しみながら、四人を順番に観察していた。


(この耳はエルフ族でしょうかねぇ? やっぱり美形です。要注意です)

(後ろにいらっしゃるのは……こっちもスレンダーですね。メルティと同じ黒髪です。何度見ても綺麗ですよね、黒髪)

(その横にいるのは……猫耳がピコピコしているので猫人族でしょうか。可愛らしいです……もふってみたいです)

(で、最後に―――…………ん?)


「げげっ!?!?」


 大きく飛び上がるキツネ。

 危うく果汁を吹くところで口を押さえ、申し訳なさそうに座り直した。


「キツネ?」

「あ、メルティちゃん、お気になさらず……」

「?そう」


 キツネが落ちついたところで、先頭のエルフ族らしき男子生徒が口を開く。


「お二人は本当に仲睦まじいみたいだね。……だからこそ、その、キツネ・フッサ嬢には申し訳無いが、一度メルティ・イノセント嬢を借りてもいいかな?」

「……というと?」

「というと―――明日の課外実習のグループが決まったんだ。先ほどね。だから一度顔合せくらいはしておきたくてね。いいかな」


 メルティが頷く。縋り付くようなキツネの目線に気づくこともなく、わかった、とだけ言って立ち上がる。


「え、あ、つまり私はやっぱり―――」


 メルティをチラ見。

 それからメンバーをチラ見。

 メルティを再度チラ見。

 そしてメンバーを再度チラ見―――。


「あー、その……そう……だね。とても気持ちは分かるが、……別のー……グループになってしまったようだ。その点に関しては申し訳なく思うよ。うん。……あ、でも、確かフッサ嬢の方には豪腕の剣士見習いが―――あれ? フッサ嬢? フッサ嬢!?」


「キツネ……ごしゅうしょうさま」


 みんなで声をかけるも反応は無し。

 ただただメルティの太ももに顔をうずめて、撃沈するキツネであった。


 わかっていたはず。

 ……わかっていたはずだけれど、いざ現実を叩きつけられると、人とは落ち込む生き物なのだ。




 ―――・―――・―――




「改めて自己紹介をしようか。こういう場は何度あっても素晴らしい」


 学園裏の、森のフィールドにて。

 口上を述べるのは高身長のエルフ。

 サヤに仕舞った長剣を立て掛け、優雅かつ堂々たる起立を見せた。


「私から行こう。剣術科四年、マージン・レーヴェンという。西方エルフ族だ。長剣と、精霊系統の魔法が得意だ」


 次に、黙々とみんなの前に出るのは一人の黒髪の女子生徒。

 こちらも、マージンほどではないが高身長だ。

 彼女は胸元から何やら札を取り出すと、筆を走らせて掲げた。

 代表してそれを読み上げるマージン。


 ―――『剣術科三年/ スキマ・ハリコ/ 長剣、"不動"』―――



 気になることはさておき、次はもう一人の少女。

「次はあたしニャぁ!」と飛び回りつつ、ようやく元気よく着地した。

 大きく腕を振って一礼し、毛深いの耳を動かした。


「剣術科ぁ二年! (ラン小旺(シャオワンニャ!!好きに呼ぶニャ。ただシャオちゃんって呼ぶとお姉ちゃんとかぶるからぁ、それはダメニャ。得意なことはぁ索敵ニャ。戦闘はあまり得意ではないけどぉ、仲良しのスライムちゃんが代わりに頑張ってくれるニャ。どちらかといえば長剣ができるニャ。重い荷物でもねぇ、藍はへっちゃらニャ! あ、ちなみにスライムの名前はぁ『シャオワン』ニャ。たまたまあたしと同じ名前ニャ。お姉ちゃんが付けたニャ。あ、そういえばぁ昨日美味しい根菜類を発見してニャ、もしよかったら後でぇ一緒に食べるニャ? あ、話すぎたニャ。……あ、話すぎたといえばぁ、一昨日の夜か今日の夜にぃ―――」


「話が長ぇよ!!」


 得意げに鼻を鳴らしながら語るシャオワン。その洪水のようなマシンガントークを止めたのはもう一人の男子。


 キレッキレのツッコミに、さすがの彼女も一旦口を紡いだ。


 その人物にようやく注意を向けたメルティは―――珍しく声を上げて目を丸くした。


「……マルコー??」

「……はぁ? 今更かよ」


 ―――そう、マージンの他にいたもう一人の男子生徒が、なんとあのマルコーだったのだ。

 ―――あの、先日、メルティに「騎士道」を訴えてコテンパンにやられた。


「どうしてマルコー? 偵察?」

「……ランダムなんだからしょうがねぇだろ。っつーかこんな堂々と偵察する奴いねぇよ」

「いや有り得る。わたしなら」

「俺はお前じゃねぇよ」


 勝手に始まる微妙な距離感のトーク。


 目尻を細めて、マージンが二人の間に挟まる。

「おや、仲いいね二人」

「「仲良くない(ねぇよ)」」


「ほら、喧嘩するほど―――」

「「仲良くない(ねぇ)」」


「その―――」

「「仲良くない(ねぇ)」」


「……そ、そっかぁ」

 さすがにもう一押しする勇気はないらしく、マージンは大人しく観客席に後退していった。


 そして一応は自己紹介をするマルコー。

「聖騎士科四年、マルコー・シロガネル。聖魔法なら使える」


「意外とまとも」

「俺をなんだと思ってんだよ」

「……キツネをおこらせた、妙に速い人」

「このっ……」


 顔を赤くするが、事実は事実である。

 入りたての一年が四年を伏せたというのもあり、基本誰でも知っている噂になってしまっていたのだ。

 笑いをこらえる面々。

 怒るに怒れないマルコー。

 結局はあらゆる気持ちを飲み込んで、深呼吸をした。


「で、お前の自己紹介もしとけよ」

「……ん、たしかに」


 というわけでようやくメルティの番。

 彼女は壇上(に見せかけた切り株)に立つと、キツネに習ったようにぺこりと頭を下げた。


 何を考えているかもわからない、渦巻く瞳。

 しかしその声は透き通っていた。



「……メルティ・イノセント。好きなものは……―――シール。ぷにぷにの」



「「「「…………」」」」


 違うそうじゃない―――とも言い出せず、四人はメルティの方を向いたまま、固まってしまうのであった。

ちなみに同時刻、キツネも自分のグループの生徒に呼び出されています。


来月誕生日なんですよ。

皆さんにサプライズを用意いたしましたので、お楽しみに。

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