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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
変 揺さぶられる心
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62.不屈の心

一体なにがイケなかったのだろう...


何処で間違ったのだろうか?



分からない。劣勢を装い、相手もまた

疑いもなく調子に乗っていたはずだ。




それなのにーーーーー




リノア

「...ァッ...ハァッ...フゥゥ...ヴヴ!」



僕は何故こんな目にあっているんだ?





62.不屈の心


草の上で小刻みに震えながら、

散々嗚咽(おえつ)(うめ)きを吐き出したせいか、

手の痛みは少しマシになった。


というより慣れてしまった。今はただ、

酷くならないようにじっと動かずにいる。


何が起きたのかはまだわからない。

きっと手を刺されている事は確かだろう。

涙で視界はボヤけるが

それでも見なきゃ、向き合わなきゃと

顔を地面から上げようした時ーーー


グイッ!


リノア

「ヴヴ!?」


前髪を引っ張られ、無理矢理に顔を上げられた。


嫌々瞳を開けてみれば、


ミデュラ

「今の気分はァァァァ?

...まぁ良くはないわよネェー?」


すぐ側で片膝をついてしゃがみ、

リノアの髪を引っ張るのは

悪魔と呼ぶに相応しい憎き悪女ミデュラだった。

力なく伸びた右手へと視線を向けると、

長い爪型の指装具が1本グッサリと

自分の手の甲を地面に打ち付けていた。


リノア

「なんで…さっきの魔法で

跡形もなく燃え尽きたはずじゃあ...」


痛がりながら驚きを隠せない表情に

妖魔は更に喜ぶ。


ミデュラ

「2度も煮え湯を飲まされた相手を

警戒しないわけないでしょ?

こっちもアンタの実力を常に探ってたのよ。

結局ワタシの術を見抜けなかった時点で、

侮れなくとも恐れるほどの実力はないことが分かったわ♪」


リノア

「!・・・クソォ...バカにしやがってぇぇ...」


悔しさと身の毛もよだつ状況に声が震える。



ミデュラ

「フフフッ...1つだけ冥土の土産に教えてあげる。

上手く演技して企みを隠してたつもりでしょうけど、

妖魔の味覚を舐め過ぎたわね」


リノア

「ハァ?...何を言って...」



ミデュラ

「 『絶望』 よ。

それだけは感じなかった。

微かな希望か何かしらの勝算でもなければ、

心を気丈に保てる人間なんてそうはいないわ」



リノア

「(!?そこまで見透かされてしまうなんて...

もう終わりだ...)」


妖魔の恐ろしさを思い知るリノア。

もはや今の自分に出来る事は何もなかった。



ーーーーーーーーーーーーー

その頃魔王軍は、


□魔王軍本陣


ゴブリン

「ゲホッ…ゴボッ!!ミ、水ヲヨコセェェ!!」


オーク

「カァァーーペッ!ングッングッ!!」


リノアの刺激物爆弾を食らった魔族達が

樽に入った水に殺到して目鼻口を

濯いでいるのをよそに。




シュラム (じーーーーーーー)



指揮官アームド・シュラムはトロールの肩の上で

じーーーっと勇者達とトロールの戦いを

眺めていた。


早々に1体が倒され、もう1体も劣勢では

ないが

1人として勇者達を仕留められずにいる。



ヴォルフ

「ミデュラガ邪魔ナ魔術師ヲ片付ケタ

ヨウダガ....

勇者共ハ未ダニ暴レテイル!」


狼族の指揮官ギア・ヴォルフは

ゴブリンに囲われていた。

彼らは鋼鉄の鎧の歪みを叩き、

隙間に黄色い油を注いで鎧の手入れをしている。

ヴォルフは動けないもどかしさに、

ガチガチと左手の銀の義手を鳴らす。


この状況に、ずっと寡黙(かもく)(たたず)んで傍観していた

ジェネラムが口を開く。


将軍ジェネラム

「・・・ミデュラはお前達に統率を求めたが、

アヤツも同様にこの数年、己の欲望を抑えて

今日の日の為だけに尽くしてきた。

故に多少の楽しみも看過(かんか)する。



看過はするが・・・早いところ本来の目的にも

ケリをつけなくては...」


ヴォルフ

「!!・・・ガルゥゥゥ!!!」


ジェネラムの言葉にヴォルフは武者震いし、

周りの兵達も気を引き締める。


するとシュラムは主の意に応えるように、

鎧から飛び出してスライムの体を分裂させ、

粘膜の痛みに苦しむ部下達の頭へと降り注いだ。


《ベチャ!》《ベチャ!》《ボチャン!》



「ゴボボボポポッ!?」


「ゴボッギャァ?」「アババババ!!」


突然顔を覆われて溺れるように藻掻(もが)

ゴブリンやオーク達。


スライムは次々と彼らの目鼻口に侵入し、

有害な物質を全て除去していく。



ーーーーーーーーーーーーーーー


ジェネラム

「(ミデュラよ)」


ミデュラ

「(ハッ!ジェネラム様!」


頭へと直に響く念話の声に、

ミデュラは掴んでいたリノアの頭を

乱暴に突き放して立ち上がる。


ジェネラム

「(久々の食事を楽しんでいるところ悪いが、

これ以上勇者を生かしてはおけぬ...

その人間を捕らえて勇者共の前に晒すのだ。

たかが1人の為に抵抗を止めるはずはあるまいが、

見せしめに殺せば勇者や人間どもに

精神的揺さぶりを掛けられるであろう」


ミデュラ

「流石はジェネラム様!!

素晴らしいお考えで!

ではもう1人の女魔法を始末したら、

早速勇者の前に連れて行きましょう!」


興奮を隠すこともなく、

これからの展開を目に浮かべて1人で悦に入る

ミデュラに、リノアは恐怖していた。


リノア

「・・・ゥゥ.....クッ」



もうどうしようもない。

本当に自分は無力でちっぽけで、

正真正銘の役立たずになってしまった。



それどころか、

このままではアクト達の足を引っ張る事になる。


勇者としてアクトは屈しないだろうが、

もし自分が殺されたら・・・・・


彼らの心に一生消えない十字架を背負わせる

事になるだろう。




************


バーグ

「ここまで命張ってくれる奴の

覚悟なら・・・信頼してもいいんじゃないのか!!


************


アクト

「2人の『魔法使い』がいるんだから大丈夫さ」


************


フォロア

「信じていいのね?ーーー

無理そうになったら、思いっきりビンタして

でも叩き起しなさい。頼むわよ」


************



リノア

「(彼らの期待に...応えられなかった...

僕の力が足りないばかりに....

今までの人生は一体...)」


悔しさと後悔に打ちひしがれ、

昔の記憶がフラッシュバックする。


************


思い出したくもなかった、

周りの環境に馴染めなかったアカデミー時代。



人々から1目置かれている魔法使い達は

世俗から離れがちで、性格に難があったり

世間一般の常識を良くも悪くも逸脱した

言動や風貌の生徒も多かった。


自分自身と向き合う鍛錬と言われながら、

現実は周りとの競り合い、

他人との優劣に一喜一憂する日々。


教師達の教えにただひたすら従い、

体現しようとひたすら魔法を唱え続ける毎日。


呪文をがむしゃらに暗記し、

詠唱や魔法陣を決められた手順に沿って

速く出来るように何度も何度も


真面目さだけが取り柄だった自分なのに、


苦しくて切なくて、嫌気が差してくる。

嫉妬と惨めさ、向上心と落胆の繰り返し。

募る不安と言い訳だらけの不満。



とても自分には続けていける生活ではなかった。


負け犬と言われても仕方がない。


才能も、努力も足りなかった事は

言い訳の仕様のない事実だ。




ーーーーーーそれでも、


日々恥を忍んで生きながら、

魔法への執着は・・・・・・・


捨てれられなかった。



*************



リノア

「(・・・ちゃんと正道を進んで、

堅実に諦めずに頑張ってきたフォロアに比べて、

僕は...僕はぁ...)」



リノアの右頬から、

生暖かい雫がポタポタと垂れ流れて

土を濡らす。


惚けた顔で敵の足元をぼぉーーと眺め続けると、

段々(まぶた)が下がってくる。



リノア

「(・・・このまま・・・死んでしまえたら

・・・どれだけ楽か...)」




全てがどうでもよくなってきた。


ゆっくりと眠るように現実から瞳を閉じ、

自暴自棄になって心の中で死を願った時ーーー












*************

穂波

「死なない程度に頑張ってきて下さい!!

私達も出来る事をしますので!」

*************



ここに来る前の記憶が、

穂波の言葉が頭を()ぎった。



リノア

「(・・・ホナミさん...)」



*************

ハチク

「・・・お前はそそっかしい所があるからな。

肝心な時こそ、落ち着けよ」

*************




そうだ。




*************

穂波

「リノアさんなら大丈夫ですよ。

こんなに努力が出来る貴方なら、

報われなきゃおかしいですって。

だから、自信を取り戻して下さい!」

*************



そうさ。


僕は本当に...飽きれるくらい弱い男だ。


何度も何度も同じ事を悩んでどうする!


どうしようもないことを後悔したって

仕方がないじゃないか!



情けない、だらしない、

足りないものばかりの自分が憎らしい、


それでも....



*************

隊長

「お前に死なれては、

張り合いのある奴がいなくなるからな。

・・・・・健闘を祈る」

*************



(自分を信じてくれる人の為なら、


疲れだって痛みだってどうだっていい。


こんな無様な死にざまだけは、

ホナミさん達に見せられない。


少しでもいい格好を見せたい


・・・理想のなりたい自分に!!!)




リノアは目を見開く。



(今はだだ...自分が出来る事を...)


状況を確認しようと頭を動かすと、

ミデュラの他に別の魔族達の姿が見えた。

慌ててまた地べたに顔をすり付ける。


ヘルオーガ

「タダイマ馳セ参ジマシタ。

オークトゴブリンノ第1陣ハ、

シュラム様ニヨッテ

間モ無ク戦線復帰可能トナリマス。

ソレマデハ我々ニ命令ヲ」



リノアは耳に意識を集中する。


先程垣間見た一体だけ明らかに

他とは違う装いのオーガの親玉が

30人の部下を引き連れて来たようだ。


ミデュラ

「あらそう。なら、サッサと女魔法使いを

探して殺してきなさい。

勇者共は仲間を信じきってトロールの相手に

夢中だから、無抵抗な女1人狩る簡単な仕事...」


ヘルオーガ

「今度ハ真ニ安全ナノデ?」


ミデュラ

「・・・アア゛?」


声色がガラッと低く下がる。

それでもオーガの親玉は言葉を続ける。


ヘルオーガ

「既ニ3回モ敵ノ策ニハマッテオリマスレバ、

我ガ一族モ気ヲ抜クツモリハ毛頭アリマセヌ」


オーガの物言いは(かん)に障るが、

事実である以上は開き直って怒るわけにもいかない。



ミデュラ

「・・・殊勝(しゅしょう)なことね。

それじゃあ抜かりなく頼むわよ」


ヘルオーガ

「ススメェェエエ!!」


30体のオーガ達が野原の草を掻き分け

足元や遠くを覗き探し始める。


せいぜい膝ぐらいの高さの草に埋れている

フォロアが見つかるのは時間の問題だ。


リノア

「(・・・彼女程の魔法使いを

ここで死なせる訳にはいかない!

・・・クソッ!立ち上がれよリノア!

お前がやるべき事は決まったぞ。

まだ手の平を刺されたぐらいじゃないかぁ!!)」


痛みに(おび)えて動かさずにいた手の平を見据え、

左手を黒い爪の指装具へと伸ばす。


リノア

「フゥ.....ハァァァァアッ!」



!!グチュ!!



肉が引っ張られる感触に吐き気をもよおす。

傷口に当たる外気が冷たい。

リノアは徐々に指を動かしてみる。


リノア

「ッッッ!?...チィッッッ...ンン!」


未体験の痛みと違和感に顔を顰めながら、

歯を食いしばって何とか膝で立つ。


すると、目の前にはオーガを見送る

ミデュラの無防備な足があった。




ミデュラ

「さぁて・・・アタシらも行くわよ、

この出来損ないの...」



=======ガッ!!



ミデュラ

「クソガッ..キィィィィイ?!?!」」



人質を連れて行こうと逸らしていた目を

戻そうとした途端、視界がぐるりと天を(あお)ぎ...

ミデュラは後頭部から地面に着地する。


《ゴギィッ!!》


ミデュラ

「ガア゛ア゛ア゛ッ?!」


体の傾きと体重も相まってミデュラの首は

危険な音を出して曲がり、動かなくなった。



リノア

「さっきのお返しだ!!」



左手で掴んだミデュラの片足首を投げ捨て、

代わりに腰から瓶と木の杖を取り出す。


瓶の中身は喉に流し込み、杖で呪文を唱える。



リノア

「我が声に宿れマンドラゴラ。

願いし相手に想いを届け、奇声をもって

盗み聞く不届き者達の耳をつんざけ!!


フゥ、スゥーーー...」



危険を覚悟の上で、リノアはめいいっぱい

腹に空気を吸い込み、叫んだ。




《フォロアァーーーーーーーー!!!


起きろぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーー!!!》」



オーガ達

「「「ガァァァァッ!?」」」


音速を超える速さで半径20m程の

範囲の隅々まで即座に響き伝わる声ーーー

もいうよりも、鼓膜を弾く騒音だった。


一斉にオーガ達の視線が後ろのリノアへと集まるが、

構わず叫び続ける。


リノア

《フォロアァーーーーーー!!

敵が来てるぞぉーーーーー!!!

起きなきゃ死ぬぞぉぉぉぉぉ

ーーーーーーーーーーーーー!!!》



オーガ

「チィッ!参謀ハドウシタ!?」


「参謀、倒レテル、ヤラレタ!!」


ヘルオーガ

「ヤハリ妖魔ナド頼リニナラヌ。

消シ粒ノゴトキ人間ニ手間ヲカケルナ。

3体デ半殺シニシテ来イ。

我々ハスグニデモ魔法使イノ雌ヲ探シテ

食イ殺セェェェ!!!」」



「「ザバギィ!!サバギィ!!」」



耳を押さえて怯んだのは最初だけだった。

屈強な肉体と残虐な性格を合わせもつ

オーガは屈するどころか、

苦痛をも怒りの力に変えてしまう。


3体のオーガが筋肉の隆起した腕と脚を

振ってリノアへ迫り来る。


リノア

《うっ...邪魔するなぁぁーーー!!

吹き散らせ炎!!

ブロア・バーニング・ブレス!!》


甲高く鳴り響く声量で魔法を唱えると、

敵に差し向けた左手の杖の先から

炎が放出された。



ブオオオオオオオオォォォォォ!!!



ホースから出る水のように炎の線が

先頭のオーガへと一気に伸びていくが、


オーガ

「フン!スゥーーー...

《ブゥシューーーーーーーーー!!!》」


オーガはなんと口から突風並の息を吹き出した。

波打つ炎と見えない風が衝突して拮抗する。


リノア

「(そんなのありかよ!?

タダでさえこの杖じゃ長くモタないのに!)」


杖の先端は溶けるロウソクのように

ゆっくりと徐々に燃え減っていく。


リノア

「(こんなんじゃダメだぁ!...もっと

もっと強いのを...」


リノアは血の滴る右手に杖を持ち替え、

左手で腰元からもう1本取り出す。


リノア

「行き交え精霊...擦れ違い拮抗(きっこう)する力...」


その呪文はついさっき初めて成功した強力な魔法。



オーガ

「スゥーーーーー!

《ブゥフォォーーーーーー!!!》」


追い付いたもう1体のオーガが隣で

更に息吹を加える。


炎の勢いは2体の息吹に押し返され、

火柱と杖の長さが同時に短くなっていく。


リノア

「我が手中は暗雲の如く!

滴る雫、凍てつく氷!衝突と摩擦...

天の理を体現しィッ!!」


オーガ

「オレデ終ワリダァ!!

スゥゥゥウーーーーーーーーー!!!!



《ブシュュューーーーーーー!!!》」



杖は持ち手ギリギリまで短くなり、

うねり(なび)く炎が跳ね返されて

桃色に火照る顔。

息苦しさと肌のヒリヒリとした痛みに

堪えてーーー



リノア

「吾が手中に集わせ解き放ち駆け廻れェェェエエ!!

裁きの雷撃!!シャイニング

サンダァァァバァァーーストォ!!!


左手の杖から渾身の一撃を撃ち放つ。


ビカッ!


《ンガッアァァ?!?!》



雷光が瞬いた後ーーーー


3体のオークの姿は黒い団子となって

転がっていた。



安堵と共に疲れがドッと出てくるが、

一々(いちいち)喜んでいる暇はない。


リノア

「ハァ...ハァァ.......

《フォロアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーー!!!

ゴホッ!!...スゥ.....

いつまで寝てんだァァァァァァ!!》」


懸命に叫び続ける。

オーガ達の魔の手はかなり近くまで

伸びていた。

少しでも声を届けようと、

いざとなったら身を呈して守ろうと

とにかく前へ前へと足を進めるリノア。


オーガ

「イツマデ ヤカマシイ声ヲ放ッテオク!」


苛立ちを漏らす同族の声に、

ヘルオーガは野原の一点を見つめたまま答える。


ヘルオーガ

「・・・ソノ理由ヲ奪エバ済ムコトダ。

魔法使イヲ見ツケタゾォォ!!」



《!!! ーーーヌオオオオオオ!!!》



リノア

「ナッ!?...コンノォォーーー!!!」


野原に上がる雄叫びに青ざめながらも、

生身では到底適うはずもないオーガの

群れへと、

リノアは考えなしに突っ込んで行く。


遠く先では、オーガ達が既に何体か

集まって輪を作っていた。


一体のオーガが倒れている魔法使い

フォロアの頭へと太い腕を伸ばす。


オーガ

「マズハオレダァ!!

食ウカ犯スカ!ドチラモ楽シ...」


《バチィッン!!》


一瞬、フォロアを囲む魔法陣が浮かび上がり、

汚れた指をソーセージのように短く切り落とした。



オーガ

「...ミィァガァァァーーーーー!?」


血の吹き出す手を握り締める同族を

心配するそぶりも見せず、

ヘルオーガはフォロアの前に立つ。


ヘルオーガ

「バカガ....四肢の2、3本落トシテ...」


ギラッ


ヘルオーガ

「確実ニ抵抗出来ナクナルマデハ、

僅カナ油断モ慈悲モ持ツナッ!!」


ヘルオーガは巨大な斧と

ゴツゴツとした鉱石のハンマーを備えた

凶器を乱暴に叩きつける。


キィィィンッ!キンッ!!


ガン!ガンガン!ガン!!



絶え間ない殴打から主人を守るバリアは、

衝撃を受ける度に発光する。


ヘルオーガ

「ギィッ!フンッ!ガァァァ!!」


軋む刃、砕け飛び散る鉱石。


フガフガと息を荒らげるオーガ達。



殴打音が鳴り響く度に、

リノアの肝もドンドンと叩きのめされる。



リノア

「・・・フォロアの事だ。

きっと何か仕掛けてるに違いない!

・・・そうでなきゃ、そうでなきゃ

聞こえるのは奴らの雄叫びや歓声のはずだろう!!」


何が起きているのか見えないリノアは、

ただ推測しながら祈るしかなかった。


諦めずに、ただ前へーーーー




《ザシュッ!!》



全身が背中から前に突き押されるーーーー



リノア

「!!??

ァァ...この感覚・・・・・・


またかよぉぉ...もぉぉぉぉお!!!」




冷たさと熱さを左肩の付け根に感じて、

しゃがむ。

左胸の端から突き出る1本の赤い棘が

チラッと見えた。


頭から血の気が引くが、

なんとか正気を保って立ち上がるーーー




「「クタバレェェェェェ!!


クソッザルガァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!ァ!!」」



リノア

「イィッ!?...ブア゛ッ!」


振り返ったと同時に青と黒の色彩が流れ、

瞳いっぱいにくすんだ灰色が飛び込んできた。



=========ガッ!!!!


顔面から後頭部まで突き抜ける衝撃。



《バキィィィ!!!》


メガネはひび割れーーーー


メキィッ!!!


鼻が歪む。


リノア

「ーーーーーッッッガァッ!!」



内側にめり込む顔面。眼輪にめりこむ眼鏡の縁。

ツーーーンと鼻の奥まで響く鈍痛に

上半身が後ろに仰け反る。


突然の衝撃で無意識に呼吸が止まり、

一息吸おうとすれば

生暖かい液体が鼻腔を満たしていた。


リノア

「ンッ!!...ハァーーーッ!!!

(倒れたら終わりダッ!)」


口で息を吸い、倒れないように

足と腰を踏ん張って堪えて体を戻した途端ーーー



ミデュラの鋭利な膝当てが

獲物に食らいつく蛇のような速さで

眼前に飛び上がり、考える暇もなくーーーーー


ミデュラ

「「潰レロガァァェェェェ!!!」」



顔面にくい込む。



《パキィィィン!!》

眼鏡のレンズは完全に砕け割れ、

押し付けられて瞼を切り付る。

瞬時に折られた鼻骨から猛烈な圧痛が

押し寄せる。



///////ドガァッ!!!


リノア

「ブッッッ!!!!!!」


真上をむく頭。宙に浮く体。

赤い雫が青空に飛び散るの見えたが、

すぐに視界はボヤけると、


同時に頭の中で鳴っていた鈴が、

脳そのものだと自覚した。


リノア

「ッッ!!!!........ア゛ア゛ア゛....」



熱い鼻血と一緒に意識が流れ出ていく。

朦朧としながらも、パクパクと呟き続ける。


リノア

「「フォ.....ロア...」」



力なく下がる瞼と輝きを失う瞳。



《バキャァーーーーーンッ!!》



オーガ

「「グルオォォォォーーーー!!」」



遠くで聞こえるバリアの割れた音と、

オーガ達の雄叫び。




あぁ、唯一の目的。

自分だけの使命。人々の希望が....



命を掛けられる拠り所すら奪われた。



リノア

「(すまない...何も出来なかった...)」



足は地面から離れ、体は斜めに倒れていく。




僅かに開いたうす暗い視界の中で、

憎悪を練り込んだような赤黒い炎で

燃える妖魔の手だけが光る。





最後は余りにも呆気ない....



それでも、昔のように諦めたわけじゃない。


誰のせいでもない...言い訳もない...

全然足りなかった...


けれども、命は使い切った。




感謝を伝えたい人々への後悔や無念はあるけど、


振るい立たせた強がりも

痛め付けられて晒した醜態も


全て出し切ってダメなら…



もう胸を張って...


ミデュラ

「ズルゥズルニ引キ裂カレテシネェェェェ!!!」







死ね...る






《ミデュラァァアアア!!!!!》




何かが聞こえた。




ヘルオーガ

「「魔法使ハァァァ!...」」




オーガが何かを言いかけたーーーー

次の瞬間



※✼.*・゜ .゜・*.✽✲※.*・゜ .゜・*.✼*✻✲




震える程の寒さを感じた。




ぁぁ・・・何が起きたのか知ることもなく

肉体はこと切れてしまったのだと、

リノアの心はそう感じた。


しかし、


ミデュラ

「ア゛...ア゛ア゛...ア゛ア゛アアア



貴様アアアァァァ!!!!!」



それは違った。




「・・・まったく。」



リノア

「!!!!」



敵の叫びと覚えのある声に、



漂っていたリノアの意識は掴み戻される。



ーーーーーーフワッと香る優しい香り。


体を支える力強い腕、けれども細い指。


頭に当たる柔らかな感触。



死の安らぎにしては具体的過ぎる五感の感覚に、


リノアは確かめるように瞳を広げた。



リノア

「・・・ぇ」



リノアは心臓が止まるかと思った。

襲われた時は分からなかった。

あの時首がへし折れていたのか、

ミデュラは頭を直角に曲げ、

目鼻口から赤茶色の液体を垂れ流していた。


ミデュラ

「バカアナァァ...倒れてイタハズダァァ!?」



そんな姿になってもなお、

自分を殺そうと襲っいかかってきた怨敵が、

今は青い剣のようなものに身体を貫かれていた。



ミデュラを仕留めた本人は口を開く。



「どいつもこいつも....

うるさくて寝てられないわよ。

ここで永眠するのは....


挿絵(By みてみん)


アンタ達だけよ」












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