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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
結 崩れ去る平穏
54/84

44.光明と陰(かげ)り

□ロービン野原

とどまるところを知らない勇者の快進撃を

食い止めようと、トロールとオーガの

集団は我先にと雄叫びを上げながら

勇者を目指して突っ走しる。


オーガ

「グゥオオオオオーーー!!!

ザバギィ!!サバギィ!!」


「「ザバギィ!!サバギィ!!」」


凶暴かつ残忍な性格のオーガは、

人間の数倍はある太い筋肉で包まれた肉体を

誇示し、己が強者であると信じて疑わない。

筋浮く腕に凶悪な鈍器を握り締め、

多くの同族がいれば尚更。


一方のトロールに至っては、

巨体の割に頭足らずで思考は単純。

自身の命を脅かす敵がいれば倒す。

命令されれば、その通りに動くだけ。


トロール

「「ヴォォォォーーー!!!」」


恐れを知らぬ魔族の群れと勇者との距離が

縮まっていく。



アクト

「(先に彼らを倒してしまえば、

かなり戦力は落ちるはずだ)

ウオォォォォ!!!!必!・殺!!」


武器を持った腕を掲げて進撃する

トロール・オーガ達の足が思わず止まる。

粗暴な彼らでさえ、

勇者の気合いの入った声には

ただならぬ覇気を感じたのだ。


それこそがアクトの狙いだった。


アクト

(これ見よがしに敵を威嚇する。

そして、怯んでる隙に技を放つ!)


教わった事、勇者として戦う術を思い出しながら、

足を肩幅に開いて両手で剣を構えて、

詠唱を叫ぶ。


アクト

「「授かりし加護をこの手に纏い!」」


握る手を締め、鍔の宝玉が光る。


「「光をもって闇を穿うがち、

揺るぎなき意志で奇跡を起こす!!」」


蒼天そうてんにかざされた刀身には

宝玉から剣先に向かって一筋の光が伸び、

剣先がまばゆきらめくと、


ブワッ!!


全ての影がさらに濃くなるほどの光が

野原を照らした。


兵士達

「「「オォォォォォ!?」」」


隊長

「ノアァッ!?」


リノア

「何も見えない・・・クゥ!」

穂波

「ま、眩しいぃーーー!!」


勇者のいる場所から太陽が現れ、

日の出を間近で浴びているかのような

あまりの眩さに魔族達も目閉じ、手で顔を覆う。



「「ギヤァ!?キャアァァァ!!」」


「ニギィィッ!!目ガヤケチマウ!!」


ミデュラ

「クソッ!忌々しいぃぃ!!

誰かアイツを止めなさい!!!」


いくら大声で怒り叫ぼうとも、

真っ白な世界に包まれたこの状況下で

まともに行動できる魔族などいなかった。


オーガもトロールも先の威勢は何処へやら、

背を向けて光の中で藻掻もがいているが、

そんな翻弄される敵の姿すら

街からではまぶたを透き通る程の光が邪魔して

確認出来ない。


かろうじて見えるのは、

煌めきの中で剣を突き上げる勇者の姿だけ。



アクト

「「味方を照らし、敵を滅するアルバとなれ!!!

セイクリットォォォォーー!!!!」」


剣を頭上から地面に鍔まで深く突き刺し

一気に剣を地中から引き抜くと、

大地の魔力を吸収した刀身は青白いオーラを漂わせ、

振り下ろされた。



「「センテュリオォォォォーー!!!」」


斬撃は青い波動となって走り、

背を向けるトロールやオーガ達に襲いかかると、


トロール・オーガ

「「ガガガガガアガァァァ!!?」」



《《ドゥオオォォォォーーーーン!!!!》》



大爆発を起こした。


爆風は野原からオラコールの街まで吹き荒ぶ。



□城内


住民

「ウワッ!!今のは!?」


住民

「遂に勇者様が奥義を放ったんだ!」


子供

「誰か肩貸してよぉ!観たいよー!!」



□正門上


騎士

「団長、あれは・・・」


野原には薄い灰色の煙が立ち込め、

魔王軍がいるであろう場所を覆い隠している。


しかし実際に目で確かめなくとも、

勇者の目覚ましい活躍と凄まじい一撃の後では、

誰もその勝利を疑いはしなかった。


団長

「ああ、勇者殿がやりおった!!

全軍に通達!残党刈りの準備をしろとな!」


騎士

「それは、我々も出陣すると?」


団長

「あれほどの威力だ。

魔王軍の精鋭とて、ひとたまりもあるまい!

まだ強敵が残っていれば勇者と従者方が

なんとかしてくれる。

我々は残りの雑兵共を、全軍をもって

軽く一網打尽にしてくれるわ!」


兵士

「ヨッシャ!!俺たちの勝ちだぁ!!」



《ウオオオオオォォォォォ!!!!》



戦士達は勝利の歓声を上げ、

街の人々も安堵していた。




《勇者!勇者!》

《アクトッ!アクトッ!アクトッ!》


人々のアクトを讃える声が数多に重なり轟音と

なって野原に響き渡っている。




野原は未だ煙りに包まれたまま。




ーーーーーーーーーーーー




従者達も戦っていた魔族達の相手を忘れ、

モクモクと登る煙りに目を奪われていた。



バーグ

「・・・これはヤベェな。

いつもの数倍はデカい爆発だったぞ!!」


イノス

「これ程とは、正直僕も驚きましたよ!」


フォロア

「アクトなら当然よぉ!

これでアンタらの兵隊も壊滅状態でしょう♪

さぁ、観念なさい!!」



杖を差し向けた先の女参謀ミデュラは、


ミデュラ

「・・・調子に乗るのも大概になさい」


低く冷たい言葉を放つ。


フォロア

「はぁ?アンタまだ自分達が置かれてる

状況が理解出来てないみたいね!」



フォロアが調子に乗るのも当然の光景だった。


アクトが放った斬撃の軌跡は地面の草を

吹き飛ばし、土を抉って溝になっていた。

その行く末は、辺り一帯を覆う程の巨大な爆煙。


にも関わらず、ミデュラ達はーーーー



ミデュラ

「・・・フフッ・・・ウフフフッ!

アハハッ!アハハハハハハハッ!!」


ヴォルフ

「グァッハハハハハァー!!」


シュラム

《カタカタカタカタカタ!》



巨大な歓声の中で、不気味に、異質に聞こえる。


不敵な満面の笑みで嘲り笑っていた


これには従者達も不穏な空気を

感じずにはいられない。



ミデュラ

「やっぱり、未熟な卵ちゃんねぇ!!

音で分からなかったノォ?それとも、

帽子が邪魔で聞こえなかったのかしら!!」


随分と意味ありげな言い回しのミデュラに

イラつきながらも、彼女の言った事が

理解出来ず、バーグやイノスも顔を見合わせる。

フォロアは弱腰にはなれないと思い、

見当がつかないながらも、虚勢だけは張ろうとする。


フォロア

「・・・悪足掻きなら、無駄よ。

時間を稼いだところで...」


ミデュラ

「分かんねぇならそこの『勇者様』に

聞いてみたらぁ!?

技を放った本人なら分かるでしょう!?」




アクトに注目すると、従者達はハッとする。




どうして気が付かなかったのだろうか。

背中を向けたままの彼は、

未だに剣を構え続けている事に。


フォロア

「?・・・アクト、一体何が...」


唯一、真正面で自身の技の行く末を

目撃していたアクトが重たい口を開く。


アクト

「・・・断末魔の叫び声が一切聞こえなかったんだ。

それに・・・爆発するのも早すぎた気がする」



ずっと、手応えに違和感を覚えていた

アクトの頬に汗が滴る。


自分の攻撃の成果が気になって仕方なく、

ただただ灰色の濁りを凝視している



・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・




すると、




《ガション!》



アクト

「!?」



《ガション!》


《ガシャン!》




その音は遠く、しかしあっという間に近づいて来た。



聞き慣れない物音と共に、

何かが重くのしかかるような振動が数回伝わる。


そして最も大きくハッキリ聞こえた直後、

モヤにうっすら薄い影が浮かび上がった。



アクト

(来る!)



敵が現れることを想像し、身構えるアクトの眼前で、



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ブワッ!! ============

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



長い影が漂う灰煙を薙ぎ払う。



しかし、

実際にその目に映ったのは

ゴブリンやオークでもなければ、

巨体のオーガでもトロールでもなかった。



想像の遥か斜め上をいく強敵、














挿絵(By みてみん)

ジェネラム

「「ウオオオオオォォォォ!!!!」」



煙りの中から現れたのは、

角を含めて2mを超える堂々たる長身の

敵将

『ジェネラム』だった!



アクト

「!?」



目の前の異様な存在に驚き、思考が一瞬混乱するもが、

戦技を使うのには充分な距離があった。


アクトはとりあえず対人用の技を繰り出そうと、

詠唱を唱えようとした。


ところが、ジェネラムは両脚で前に着地した瞬間、


《ガションンッ!!》


驚異的な跳躍力でアクトの元へと飛び跳ね、

足先からすねの高さまである鋭利なブレードで

空を斬り、勢いを片脚に乗せてーーーーー


《ビュン!ビュン!ブオォォンッ!!!》


凄まじい回し蹴りをアクトの剣に叩き込んだ。


《ギキィィィィーーーーーン!!》


咄嗟とっさに防いだ剣の刃は小刻みに震えしなり、

指が痺れ、腕がこわばる。


アクト

「ぐぅあぁっ!!」


歯を食いしばってなんとか受け止めるも、

勇者アクトはあまりの衝撃に突き飛ばされてしまう。

草を踏み散らしながら、踵を土にめり込ませて

ようやく動きは止まる。


フォロア・イノス・バーグ

「!?」


従者達の間にも衝撃が走る。



突如現れ、そびえ立った謎の魔物。



この世界の人々にとって、

その姿形は名状し難いものだった。


ツルツル・凸凹と複雑な形状で、

見慣れない甲冑か外殻に覆われた長身。

両肩には複眼のような2つの光る半球と2対の

羽根の様な長い防護装甲。

右腕は巨大なカマキリのような鎌に、

2本の針を備えた左腕。


人間で言うところの、脚の脹脛ふくらはぎの位置に

バネの様な器具の付いた、趾行しこう性にも見える脚。

その足先には鋭いブレードと鉄の爪がギラリと光る。



イノス

「・・・《ゴクッ!》」


珍しい物には目がないイノスが唾を飲むが、

単なる好奇心とは違う。

『得体の知れないモノ』への恐れを抱いていた。



バーグ

「おい、フォロア。ありゃなんだ?」


フォロア

「知らないわよ・・・虫族だとは思うけど」



見た事も聞いた事もなかった未知のビジュアルに

勇者も従者達も、街から眺める者達も皆、

唖然とする他なかった。


しかし間髪入れずに、

人々は驚愕と失望感を同時に味わうことになる。



兵士

「おい!?あれを!!」


ジェネラムによって振り払われた爆煙が

切り開かれて散り散りになり、

後ろの景色が明らかになる。



団長

「・・・有り得ん・・・

あれほどの攻撃を食らったいうのに!?」



奥義が直撃したはずのオーガやトロールも含め、

魔族達は平然と突っ立ていたのだ。

舞い上がっていた兵士達の気がドッと下がる。

魔族達も何が起こったのかわからずに挙動不審では

あったが、この場の誰よりも驚いているのは

アクトだった。


アクト

「・・・まさかそんな・・・あの距離で外すなんて...」



予測不能。見当もつかない事態に、

顔に似合わないしかめ面をするアクト。

そんな勇者に、現れた魔物は答える。

耳に直接入り込こんでくるような不思議な声で。


ジェネラム

「いいや。的確に当ててきた。

本来ならば、我が軍は壊滅的であっただろう。

だから・・・我が防いだ」


バーグ

「ハァ!?」


イノス

「そんな馬鹿なっ!」


フォロア

「いえ、さっきの豊富な魔力の気配が消えてるわ。

・・・どうやら、嘘じゃないみたい。

アンタは一体何者?この面倒な連中の親玉かしら?」


ジェネラムは街にまで届く声で、

フォロアの問いに対してだけではなく、

オラコールにいる全ての人間に聞こえるように

名乗りを上げた。



ジェネラム

「聞け人間達よ!!

我が名は!魔王軍最高幹部が一人!

斬裂ざんれつ将軍ジェネラム!!

この地を魔王様への供物にするべく頂きに来た!!」



再び、街に暗い陰が広がっていく。

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