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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
結 崩れ去る平穏
50/84

41.従者の登場

迫り来るトロール部隊より先行して、

遂にオラコール場内に侵入して来た強敵

と魔法使いフォロアは対峙していた。


ヴォルフ

「グルゥゥゥゥゥゥ・・・」


前後に両足を開けて、腰を低く落とす

鋼鉄の狼戦士ギア・ヴォルフ。

左右に大きく広げて後ろ側に反らした両腕が、

フォロアの目を引く。


例えるなら、前足で地面を蹴る闘牛の角のようだ。

両腕の爪に殺意と力を溜め込み、

敵を切り裂き貫くその時を待ち侘びている。


対する女魔法使いフォロアは

水属性・氷属性専用のクリスタルを

備えた鉄の杖を構えていた。

木の杖からそれに持ち替えた理由は、

炎魔法や風魔法による味方の巻き添えを避ける為だ。


今の彼女の実力をもってすれば、

目下の広大な土地に生える草を全て焼き尽くし、

更にはその一面焼け野原を風圧で吹き消すこと

さえ造作もない。

そんな強力過ぎる力であるからこそ、

人混みの中では使えないのだ。



団長

「クゥッ!相手はたった1匹だというのに!」


共に戦っているはずなのに、

あまりにも遠くかけ離れている従者を、

戦士達は周りで固唾を飲んで見守るしかない。

そしてーーーー



ギア・ヴォルフ

「裂ケロォォォ!!」


遂にヴォルフは両腕を届かぬ敵へと

伸ばして前方に飛び込む。

狼らしく、四足の走りで間合いを

詰めるつもりだ。


フォロア

「(頑丈なだけじゃなくスピードもある。

間合いに入られたら終わりよ!)

ハイドロ・シュプラッシュ!!」


青いオーラを放つ鉄の杖が左右に振られる度に

水飛沫が噴き出す。



《ビシャッ!バシャ!》



ヴォルフ

「ヌッ!? グワァゥッ!!」


急接近するヴォルフの体に、

水は余計に強く鞭のように打ちつけられる。

鎧の上からでは痛くも痒くもないが、

水はヘルムの隙間に入り込み目を侵す。



「「フザケタ真似ヲォ!!」」



本能的に顔が濡れることを嫌う

ヴォルフにとっては不愉快極まりなく、


ヴォルフ

「シネェィィイッ!!」


怒りに任せて突っ込み、

間合いに入った所で右腕を振り上げた。

ヴォルフお気に入りの銀の鉤爪は、

小賢しい魔法使いの小娘の身体を

握り潰そうと爪を開く。


兵士

「「ナッ!?」」


兵士ディアド

「マズいぞ!!」



1人の女性の凄惨せいさんな死に様が、

傍観している者達の頭を()ぎった。


しかしフォロアは

臆する事なく呪文を唱える。

彼女には勝算があるのだ。


フォロア

「フリーズ・フロォォーズン!!」


数秒、数センチの差が生死を左右するその瞬間。


フォロアはレンガの地面に杖の石突いしづき

叩き付け、冷却魔法で水浸しのヴォルフの

動きを一瞬で凍らせようとーーーーーー




《ブンッブンッブンブンブン!!》




ーーーするはずだった。



騎士

「ん?」



頭上を激しく動く影が通り過ぎ、

大きく力強い声に人間もヴォルフも振り向く。


バーグ

「インパクトゥ・ブレイクゥゥ!!」



手に汗握る1人と1匹の戦いに、

突如赤いオーラを纏ったバーグが

回転しながら割り込み、重いハンマーの一撃を

横からヴォルフの胴体に打ち込んだ。


ヴォルフ

「ンンングゥッ!!」


力んで踏ん張るヴォルフだが、

腹部をとらえたハンマーを振り戻し、

バーグは地に足を付け腰の入った

フルスイングをお見舞いする。


バーグ

「脇がガラ空きなんだよぉぉ!!」



《バコォォォォォンン!!!》


鐘でも鳴らしたような音が響く。


ギア・ヴォルフ

「グオォッハァァァァァ!!」


完全に不意を突かれたギア・ヴォルフは

城壁の外へと放り落とされる。



兵士・騎士達

「「「オオオォォォ!!」」



アームド・シュラム

「!?」


トロール

「ウオォッ?」



先陣を切った頼れる同胞の意外な姿に、

トロール達も思わず歩みを止めた。


ヴォルフ

「エェイッ!!」


落下しながらクルッと体制を立て直し、

トロール達の前に着地するヴォルフ。

胴体を守った鋼鉄の鎧は微かに表面が

削れただけだった。


ギア・ヴォルフ

「グルル・・・ヨウヤク来タカ...!?」


見上げると、上からバーグがハンマーを

振りかぶって飛び降りてくる。


バーグ

「ジィッ!エンド・スタンプ!!!」


ヴォルフは素早く後ろに宙返りして避け

たが、

バーグの振り下ろした一撃は地面を割り、

大地を揺らした。



《《ズゥゥゥーーーン!!》》


~《ドドドドドドドドドドドッ!!》~


城壁が大きく縦に突き上げられ、

体が少し浮いたような感覚に襲われる。

そしてゆっくりグラグラと横に揺さぶられ、

高所の兵士や騎士達は両腕でバランスを

とらないと立っていられない。


兵士

「ウオォォ!?地震かぁ?」


団長

「まさか、彼の一撃で!?」



トロール

「「ウォォォオ!?」」


城壁と同じく、その巨体にもろに振動を

受けて手足をバタつかせる。

だが抵抗虚しく、トロール達は前へ後ろへ傾き、


トロール

「オオッオォッ!ノォォォォーーーーーー!!」


《《《ドォスーーーン!!!》》》



バランスを崩して倒れたり尻餅をついた。

その衝撃で再び振動が伝わっていく。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


□南西の城壁、見張り塔の内部


螺旋階段を登っていた穂波達も、

突然の揺れに襲われていた。


《ドドドドドドドドドド!!》


壁にもたれかかる3人。

外側の壁に寄りかかるリノアは、

ちょうど頭の高さに空いていた窓から

外の光景を見にすると、

メガネを拭いて掛け直し、声を上げる。


リノア

「一体何が...エエエエェェーーー!?」


穂波とハチクも気になって覗いた光景に

度肝を抜かれる。

遠く下に見えるバーグは

足元の蟻ようなスケールだが、

周りの大きなトロール達の動きから

彼が何をしているのかはわかった。


穂波

「おぉ?・・・おおおおぉ!!

えええぇぇ!!」


素っ頓狂とんきょな声を上げる

穂波。

いつもなら冷めた目を向けるハチクも、

今は納得できた。


ハチク

「・・・まさにファンタジーだな」



なぜならば、

トロール3体の繰り出す

パンチを、ハンマーで次々と弾き返していたのだから。


ーーーーーーーーーーーー


□ロービン野原



トロール

「「グオオォー!!」」


「「ガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」」


10mは超える高さから振り下ろされる

トロールの拳が、ハンマーで相殺される。



バーグ

「オラオラどしたぁ!!

力だけでノロ過ぎすんだよ!!」


回転させたハンマーを背中に回し、

代わりに大剣を引き抜くと、


トロール

「グラアアァァァ!!」


巨大な拳が振り下ろされる前に


バーグ

「セェーイッ!!!」


トロールの腹に、大剣を叩き込んだ。


《ガァァァァァァァンン!!》



分厚く硬くトロールの皮膚を切り裂く

ことは出来ないが、衝撃はトロールの背中から

抜け、数歩後ずさって倒れる。


トロール

「グノオオオオッ!!!」


土煙が派手に舞う。


ーーーーーーーーーーーー



□見張り塔


リノア

「トロールが倒れてるぅーー!!

戦士のバーグ・・・あれ程の力があったとは...」


穂波

「これはスゴイですよぉ!

もっと皆さんの戦いをよく見ないとぉ!!」


危なっかしく狭い窓から身を乗り出すので、

ハチクは焦って後ろから胴体を抱き止める。


ハチク

「ちょっ、コラ穂波!

まだ揺れてるのに、危ないだろうがっ!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ヴォルフ

「何ヲシテイル!?サッサト踏ミツブセェェ!!」


1体のトロールが足を上げてバーグの

頭上へと降ろすも、寸前でかわし、

脛を大剣で切りつける。

血は出てないが、硬い骨にぶち当たった。



トロール

「オオオォォォーーー」


苦悶の叫びをあげて膝をつくと、

城壁へと倒れかかった。


《ズゥゥゥーーーン!!》


□城壁が

再び揺らされ、皆が地面にしたり、

塀にしがみつく。

その中の1人に、いつの間にかイノスも加わっていた。


イノス

「バァァーグーー!!

威力は高さに比例するんですから、

もう少し手加減してくださいよぉ!!

それと周りに気を付けて下さい!

城壁まで崩れたらどうするんですかぁぁ!!」



バーグ

「ワリィワリィ!」


イノスの注意に対して笑って余裕をみせるバーグ。


いつもの聞き慣れたやりとりも、

今まで味方が頼りなく心細かったフォロアは

内心ホッとする。

そして、直ぐにいつもの調子に戻る。


フォロア

「フゥー!アンタら遅いわよ!!アクトは?」


イノス

「今頃は洗礼の儀の真っ最中ですよ。

だから彼が来るまでは、僕達で何とかしますよ!」


フォロア

「えぇ勿論よ!行くわよ!!」


2人は共に城壁から飛び降りる。



フォロア

「エア・スロォー!!」


魔法の効果でゆっくりと着地する2人を

目で追う兵士達。


騎士

「あっ!・・・我々はいかがしますか?」


団長

「・・・彼らに託そう。この街を命運を」




トロール

「ノォォォォ」「ヌオオオォォォ!」


シュラム

「・・・」


1人でも手に負えない従者が2人も増えたことで、

トロール達は背中を向け、本陣へと逃げ帰っていた。



オーク指揮官デスピア

「バカガァッ!弓ヲ放テェェ!!」


野原に散開していたゴブリン達は

トロールの後を追うバーグに弓矢を

引こうとするが、


イノス

「させませんよ!」


フォロア

「退きなさい雑魚ども!!」


イノスは弓矢を、フォロアは

炎魔法を素早く的確に敵に撃ち込む。


「ギヤァ!」

「ヤベェ!」


攻撃を躊躇うゴブリン達。


オーガ

「ヌググッ」


オーガ達でさえ、ヘルムの下で汗を滲ませる。

そんな前線の魔族達が尻込みしていたのを、

大将ジェネラムとミデュラは見逃さなかった。


ミデュラ

「まだ勇者も来てないってのに・・・

まったく!」


ジェネラム

「無理もあるまい。ほとんどが初陣なのだ」


そう言うと、ジェネラムはオークの指揮官

デスピアに命令を下す。


ジェネラム

「兵を後退させよ!

冷静に、敵に背中を見せずにだ。

そして、ヴォルフとシュラム。

ミデュラの新しい『手駒』に従者の相手をさせよ」


ミデュラは意外そうな顔をする。


ミデュラ

「私の玩具ならまだしも、

あの2人は勇者が出てくるまで温存させて、

他の兵達を動かしては?」


デスピア

「ゲェッ!」

デスピアが一瞬嫌な顔をする。


ジェネラム

「・・・兵士は数が揃ってこそ価値がある。

ここで無駄に消耗させるわけにはいかぬのだ」


デスピア・オーク・マンティスリーパー「フゥ・・・」


ホッとする兵士達を見て、ミデュラは

呆れながらも了承した。



《ドンッ!!ドンッ!ブゥブゥブオーン!!》


太鼓と角笛の音が野原にこだまする。


ゴブリン

「!?」


オーク

「コノ音・・・グゲルガゴルギョル!!」


ゴブリン

「グゲルガゴルギュル!!ギソギィ!」


魔族の言葉が飛び交い、

兵士達はゆっくりと後退を始める。

その後ろでトロールやオークが従者達を足止めする。


バーグ

「オリャ!!」


オーガ

「フンッグ!!」


キーン!

巨大な2つの刃が衝突し、

甲高い金属音が響く。


オーガは巨大な刃と荒い鉱石が付いた

斧を乱暴に振り回して立ち向かうが

人間よりも一回り大きい体格も、

バーグの前では大した差ではない。


フォロア

「バーグ!!あんまり先走らないで!!

凍える水と風の子よ!!

アイス・ロック・フリーズ!!」


結晶の杖をスイングすると、

前にいるトロール3体の身体が凍りつく。


イノス

「ここは城壁の守りに徹する方が・・・」


バーグ

「あいつら逃げてんだぜ!!

アクトが勇者になって初めての戦いなんだから、

来る前に邪魔な雑魚は出来るだけ減らしてやらねぇと!」


バーグはゴブリン達を追いかける。

イノスとフォロアも、仲間思いな彼の

意見には共感できた。


イノス

「まぁ、気持ちはわかりますが、

ただもう少し下がっ...」


イノスのいる場所に影が落ちる。

だが、空には雲一つない。



シュバッ!!


ヴォルフがイノスの頭上に飛んで来たのだ。


ヴォルフ

「ヌガガガァァァ!!」


イノス

「クッ!!」


イノスは弓矢をヴォルフ目掛けて投げ付け、

後ろにバク転する。


《カランッカラン!》


ザクッ!!


弓矢の残骸と共にヴォルフが落ち、

イノスの立っていた場所に刃を突き立てて着地する。


イノス

「ハァ!危ない危ない!」


ヴォルフ

「流石ハ従者ト言ッタトコロカ。

人間ニシテハ素早イ」


イノス

「どうも」


イノスとヴォルフが相対する。

その横で、今度はシュラムがトロールの

肩から飛び降り、フォロアの前にズッシリと

降り立つ。


バーグはそんな後方の様子に気づくと歩みを止めた。


バーグ

「・・・こりゃあ仕方ねえな。戻ってやるか...」


バーグが振り返って2人の元へ戻ろうとした...


ビュンッ!!


バーグ

「アァ!?ウグッア!!」


何か太くて長いモノがバーグの元へ飛んできた。

大剣で受け止めるが、勢いよく体ごと

弾かれてイノス達の近くまで吹き飛ばされる。



ズザザザザッ!!



イノス

「バーグ!?どうしたんだ...!?」


整ったイノスの顔には明らかな嫌悪感が。


バーグ

「クゥ・・・何だ、あのヤロウは...」


バーグを吹き飛ばしたのは、

紫とピンクの色をした太い触手だった。

その触手の先には、不恰好な鎧の中からブヨブヨの

肉塊を覗かせる得体のしれないクリーチャーがいた。


「ォォ・・・ヌォォ」


ノッシリノッシリと、

バーグの元へと歩みを進める。


団長

「遂に敵の手駒も出揃ったか」


唸るヴォルフと剣を抜くイノス。


微動にしないシュラムとそれを睨むフォロアー 。


気持ち悪い触手をのたうち回らせる

クリーチャーと気持ち悪そうな目を向けるバーグ。


ロービン野原の真ん中で、

従者達3人と魔族3体が対峙する。

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