表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
転 各々の思い
43/84

35.アイアン・サングレイダーズ

35.アイアン・サングレイダーズ


□城壁


兵士

「なんだよあれ・・・」


兵士

「嘘だろ」


外に面した城壁の上で

見張りや下で常駐していた騎士。

警鐘を聞きつけて集まった者など、

何百もの兵士達が呆然と立ち尽くしていた。


《パカラッパカラッ!》


そこに騎士隊長とセルネスが馬で駆け付け、

城壁の階段をかけ上がる。



隊長

「何事かぁ!!敵の数は!!」


普段から真面目な隊長が、より険しく

真剣な面持ちで兵士達に問い質す。


兵士

「あ、あの、野原が一面・・・」


衛兵

「い、いつの間にか!!」


大の大人が慌てふためく姿に

隊長は業を煮やす。


隊長

「もういい!直接私が観る!!どけ!」


兵士達を押し退けて城壁から外を見渡した瞬間、

彼は衛兵達が取り乱していた訳を理解した。




いつもの見慣れた広大な野原のど真ん中に、

鈍く光る漆黒の軍勢がいたのだ。


敵の正体を確かめようと、よく目を凝らす。

どうやら汚く黒ずんだ鋼の甲冑を

身に付けているようだ。




隊長

「南の国の蛮族どもか?

だが、何故わざわざこんな場所に・・・」


そのうち、オラコールの軍を指揮する

聖騎士団長も10名の精鋭騎士を従えて、

現着する。


聖騎士団長

「隊長!!セルネス!!状況を報告せよ!」


男らしい角張った顔に、

長めの髪と髭を生やした団長は

塀の外を見渡している隊長の元へ。


隊長

「国籍不明の軍勢およそ2000から3000騎!!

ロービン野原の中央に陣を敷いています!」


団長

「どれどれ・・・フンッ‼︎

何処の馬鹿者共かは知らんが、

さびれてもここは城塞!

我ら全兵力の半数でオラコールを落とそう

などとは、片腹いたいわ!!」


確かに小規模ではないが、

聖域と呼ばれるオラコールの

広大な野原と街を囲む城壁の前には、

その軍勢は頼りなく見えた。


団長の言葉に周りの人間もなんとか

冷静さを取り戻す。

そこに偵察兵が望遠鏡を覗いて叫ぶ。


偵察兵

「団長!敵の旗が上がりました!」


団長

「何処ぞの軍旗か分かるか!?」


偵察兵

「・・・真っ赤な旗に、

あれはぁ・・・ヘルム(兜)?

牙を生やしたヘルムが禍々しい口を開き

・・・武器で串刺しにされたハートから

流れる血を舌で舐めています!

こんな紋章は初めてです!!」


観察眼と伝達力・表現力に長けた偵察兵が、

敵の戦場旗の特徴を詳しく報告した。


団長は眉間にシワを寄せて自分の記憶を探る。

すると何かを思い出しようで、

偵察兵のいる見張り塔へと駆け上がる。


隊長

「団長!?」


《ダダダダダダ!!》


団長は見張り塔の屋上へ着くなり、

偵察兵から望遠鏡を受け取り、

己の目を凝らして敵を視認する。


団長の顔色は悪くなり、

乾いたシワの多い肌の上を汗が

ダラダラと滴る。


団長

「皆の者!!守りを固めよ!!

全ての兵を城壁に集め、倉庫から弓を運べぇ!!

セルネス!全騎士団を率いて、正門へ!!

隊長はこちらへ来い!!!」


兵士達は戸惑いながら、

慌ただしく行動を開始する。


セルネスも不安や疑問を押し殺して

馬にまたがり、命令を果たす為に走り出した。


隊長

「団長!!奴等は何者なのですか!?」


団長

「・・・お前は急ぎ聖堂へ向かい、

大司教様にお伝えせよ。〜〜〜〜」




ーーーーーーーーーーーーーーーー




同時刻、穂波とハチクは広場から

離れて走っている。

というのも、魔法使いフォロアが

何も言わずに走り出してしまったからだ。



穂波

「フォロアさーん!!ちょっと・・・

ま、待って下さーい!ハァハァ」


フォロア

「ハッ!ハッ!正門側になら、

何が起きてるか見渡せる所があるはず!」



□街の見晴台。


住宅地を走り抜けて端の団地から出ると、

切り立った場所に柵で囲われた見晴台があった。


フォロア

「ハァッ!やっと出た・・・!

って、アンタは!」


辿り着い見晴台の柵の前には、何故か

自家製の望遠鏡を覗き込むリノアの姿が。



リノア

「・・・ん?ゲッ!キ、キミは...」


昨日の喧嘩相手が背後から現れて

リノアは少し戸惑ったが、

そんな彼の事などお構い無しに、

フォロアは彼の望遠鏡を奪い取って覗く。


リノア

「ちょっ、何するんだ!」


フォロア

「・・・何よこれ!?全然見えないわよ!」


リノア

「筒を伸び縮みさせてピントを

合わせるんだよ!!

全くもって、君はホントに失礼な...

あぁ!ホナミさんハチクさん!

探しましたよー!聖堂に行っても

外に誰もいなかったので、てっきり

中に入れてたのかと...」


穂波

「い、いえ。そのぉ色々ありまして...」


ハチク

「そんなことより、これはなんの騒ぎだ?」


ハチクが2人の会話に割って入る。


リノア

「敵の襲撃・・・みたいです。

外にそれなりの規模の軍隊がいるみたい

なんですが、理由も正体もよく分からなくて。

でもこの街は城塞ですから、

なんとか大丈夫・・・かと思いますが...」


リノアも丁度状況を確認していたところ

だったらしく、曖昧な表現をすることしか

出来ないようだった。

ところが、



フォロア

「ウソォ!!あれって、

トロールじゃないの!?」


リノアは一瞬自分の耳を疑って

柵から身を乗り出すと、

周りの豆粒程の軍勢の中から

遠くからでも分かるほど突き出た巨体が

現れていた。



□城壁の上


兵士達

「「ウアアアアア!!!」」



黒い軍勢の至る所から10体の巨人が現れ、

皆が恐れおののく。


団長

「トロールだとっ!

ひざまづいて隠れておったのか」



騎士

「団長・・・奴らはもしや魔王軍なのでしょうか?」


若い騎士が情けない表情と声で尋ねる。


団長

「見ての通りだ。

しかも、ただの魔物ではない・・・

奴らは我々のように鎧や武器を造り身につけ、

作戦を立てる。

更に、力や知能を持つ指揮官によって

統率される精鋭・・・」



□見晴台

フォロア

「あの旗・・・・最悪じゃない!!

何で今頃アイツらが!?」


リノア

「・・・再編されたということでしょう」


明らかに大事らしく、緊張した空気が

流れるが、穂波達はついてこれてなかった。


穂波

「あのぉ・・・あそこにいるのは一体何なんです?」


リノアとフォロアは穂波の察しの悪さに

若干戸惑う。


ハチク

「・・・恐らく噂の魔王軍とやらだろう」


穂波

「ええぇぇぇ!!」


リノア

「それもただの魔王軍ではありません。

初代勇者の時代に暴虐非道の限りを尽くした

悪魔の軍団として、文献に記録されています。

ですがここ数百年もの間、

姿どころか、名前すら聞かれならかった」


フォロア

「それがよりにも寄って・・・こんな時にぃ!」


フォロアは柵の手すりを強く握り締める。


リノア

「その精鋭部隊の名は・・・」


ーーーーーーーーーーーーーーーー



□聖堂内 集会堂の巨大樹の前にて


聖堂にも外の騒ぎは聞こえていたが、

何が起きているのかまでは伝わっていなかった。

大司教やアクト達も洗礼の儀を行うかどうかを

決めあぐねていた。


大司教

「まだ分からんのか!?」


神父

「外に何者かが現れたようなのですが・・・

それ以上の情報はまだ何も・・・」



バーグ

「こんな時に何なんだよぉ・・・」


ずっとウロウロと行ったり来たりして

じっとしていられないバーグ。


バーグ

「あーーーもう!俺が見て来る!

ホナミちゃんやフォロア達の事もあるからな」


辛抱堪らず、バーグは外へ行こうとするが、

冷静に柱に寄り掛かっていたイノスが

それを制する。


イノス

「待って下さい。

今勝手に出て行ったりすれば、

それこそミイラ取りになるだけですよ!

今はとりあえず一緒にいるべきです」


バーグ

「そうは言ってもよぉ!

この調子じゃあアクトの晴れ舞台が・・・」


言い争う2人を他所に、

聖堂の長椅子に座るアクトは緊張と不安を

押し殺して、沈黙を決めていた。


すると、




《パカラッパカラッパカラッ!!》


全員の視線が正門の方へと向けられる。


隊長

「大司教様ーーーー!!!」


騎士隊長の声と樋爪の音が近づいてくる。


大司教

「やっと来おったか!」


大司教は杖をカッカッと付きながら、

隊長を出迎えようと集会堂の扉を押し開けた。

その時、


《バカァァーーン!!》



一同「!?」


開いた扉の向こうの大きな正面扉が

馬によって蹴破られた。


《ヒヒィィーーン!!》


馬が振り上げた前脚を地面に着地させると、

その勢いで上に乗っていた騎士隊長が

前のめりに飛び上がった。


隊長「ノワアアアーーー!!」


隊長は腕を回しながら落下し、

大司教の足元に倒れた。

大司教はその光景に唖然とするが、

直ぐに血相を変えて隊長の襟を掴み

起こして怒鳴る。


大司教

「またお主はぁーーー!

いくつの扉をダメにするつもりじゃああ!!

まずは落ち着かんか...」


隊長

「し、司教様!!侵略です!!

魔王軍による侵略でございます!!」



「!!!!」


アクトと従者2人に衝撃が走る。

まだずっと先の事だと思っていた試練が、

急に目の前に訪れたのだ。

当然、動揺せずにはいられなかった。


大司教

「なんと!!こんな辺境の地に何故!!」


隊長

「団長によれば・・・ハァッ!ハァッ、

敵の軍団の名は・・・」


切れた息を整え、隊長はその名を口にする。



「「アイアン・サングレイダーズ!!」」



挿絵(By みてみん)


血のように鮮やかな。

例えるならば、サングリアのように

真っ赤な旗が、雲ひとつない青空の下で

不気味に揺れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ