9.従者(じゅうしゃ)達との出会い
勇者アクトに頼まれ、
穂波とハチクは鍛冶屋から
武器を預かり、宿屋へ持ち帰ってきた。
チャリーン♪♪
□宿屋
宿に到着する二人。
すると、広間でアクトと見知らぬ
『3人の人物』が会話していた。
普通の人なら少し遠慮する思うが、
穂波は早く届けてあげた方がいいと
思い、話しかける。
穂波
「ただいま戻りましたー」
アクト
「あ、噂をすれば...お帰りなさい!
本当にありがとうございました!」
アクトは深々とお辞儀をする。
その後ろで『大きなとんがり帽子』を
被った女性が、穂波達を見るなり
ムッとした表情になる。
「お!それが俺らの武器かい?
ありがとうな!!」
高身長で男らしい体格の青年が、
穂波から武器の入った籠を受け取った。
イノス
「初めまして。
アクトから話は聞きました。
我々が遅れてしまったせいで、
ご迷惑をおかけしました。
自分は『イノス・エル・ギルフォン』
みんなからは、イノスと呼ばれてます。
どうぞお見知り置きを」
アクト以上に堅苦しい挨拶をしたのは、
オレンジ色と金色の混じった髪の
誠実そうな青年だった。
紺色に綺麗な金の刺繍の入った制服を着ている。
ハチク
(品のいい青年だな。腰の立派な剣も
見るに・・・騎士ってところか)
穂波
「あ、どうも。私は・・・」
バーグ
「相変わらず堅苦しい挨拶だなぁ。
まったく、これだから騎士様は…
俺はアインバーグ。
バーグって呼んでくれ!」
そう言って荷物を受け取ったのが
20代半ばぐらいだと思う青年だ。
オレンジ色の短髪で、服の上からでも
わかるほど大きくも引き締まった筋肉が
目立つ。
上には赤いベストと肌にフィットした
黒い肌着。
下はカーキ色のズボンを履いている。
ハチク
(こいつは見ての通りの脳筋戦士
だろうな)
穂波
「イノスさんとバーグさんですね。
私は穂波と言いまして、
こっちはハチクって言います」
先程から我関せずと
端から人物観察に精を出していたハチクは、
自身の名前が呼ばれたことで自身もこの会話の
輪の中にいたことを思い出す。
ハチクは集まった視線に応えるため
小さくお辞儀をした。
一呼吸、二呼吸と
この輪に空白の時間が生まれていく。
穂波
「……あのー、そちらの方は?」
最後の一人が一向に挨拶をする気配
がないのだ。
穂波の表情が明らかに困っている。
それを察したバーグは、
肘でフォロアの方を小突く。
フォロア
「ハァ・・・私はフォロア・ピュアートよ。
どうもね」
バーグとイノスはいつものことなのか、
若干呆れ気味だ。
素っ気ない感じで自己紹介をした
金髪のクールな女性。
肩が出た紫色のローブを羽織り、
スカートの下に黒いフリルの着いた
茶色のワンピース。
ウエストを強調する為か、
腰周りにバラのように赤いコルセットを
付けている。
その他にも特に、
『カラフルな液体入りの小瓶』が覗く
ウエストポーチや、茶色の布地に赤い帯の
大きいとんがり帽子。
それと背中の二本の杖が、
穂波の目を釘付けにする。
ハチク
(昨日の老人の言ってた女魔法使いか・・・
にしても肩といい、胸といい、太腿といい、
なんて露出の多い・・・
その上目つきも悪いときた )
ハチクはフォロアの外見から、
穂波に気をつけるように促そうと
思ったのだが、
穂波「・・・」
興味が湧いたのだろうか。
穂波の視線はフォロアを捉えて離さない。
これには、気の強そうなフォロアも
少し引いている。
フォロア
「・・・な、何よ...」
穂波
「その格好は・・・・・・もしかして
魔法使いでしょうかぁ!?」
穂波は目を輝かせて、
フォロアに歩み寄る。
穂波
「帽子に杖!そして可愛らしい服装!
すごい!すごいですっ!!
私初めて見ました!
聞いた話だと、優秀な魔法使いさん
らしいですねー!!」
そんな穂波の眩しい羨望の眼差しに、
面倒くさそうだったフォロアも
満更でもない感じになる。
フォロア
「ま、まぁ、私ほどの魔法使いは滅多に
いないから、そりゃあ驚くのも無理は
ないわね。
ウヌファスト魔法アカデミーでも唯一、
5属性の魔法を使いこなせるのは、
このフォロア・ピュアートぐらいよ♪」
穂波
「おおー(゜ロ゜*)」
その後も無垢な子どものように褒め
称えたり、質問責めにする穂波に、
フォロアは自慢げに答えていた。
ハチクは、分け隔てなく人と接する事が出来る
穂波の性格をとても眩しく感じる。
バーグ
「・・・おい。マジかよイノス」
イノス
「・・・フォロアが見知らぬ女性と
ちゃんと会話してるところ初めて
見ましたよ・・・」
従者の2人も仲間の意外な様子に
呆気にとられ、
アクトも珍しそうに眺めながら、
貰った武器を整理していた。
そこにハチクが近づく。
ハチク
「おい、勇者。ちょっといいか」
アクト
「あ、ハチクさん…な、何でしょうか?」
ハチク
「お前に一つ提案がある....」
何かを話すハチクとアクト。
バーグ
「おい、あっちも見てみろ。
アクトが、他の女と話してるぞ」
イノス
「いつもフォロアさんが付き纏って、
他の女性を寄せ付けませんからねー。
ハハハッ」
先ほどまでの堅苦しい表情とは
一変して、イノスは無邪気に笑う。
バーグ
「・・・ッフ。
ようやくお前らしい顔を見たぜ。
お堅い騎士団にどっぷり染まっちまったかと
思ってたぞ。ここでは気を抜けって♪
今のお前の方が断然イイぜ!」
イノス
「うん、ありがとう・・・
ちょっと不安だったけど、
今の彼らを見てたら・・・
なんだか大丈夫な気がしてきたよ♪」
それぞれが言葉や思いを交わす中、
朝の爽やかな風が窓から流れる。
外には青空が広がり、
街にはいつもと変わらぬ時が流れ、
人々の変わらぬ営みの音が聞こえる。
そんな平穏な街の、平凡な宿屋から、
勇者一行にとっての『最初の冒険』が
始まるのだった。




